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虹の背中  作者: シュウ
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第27話

<虹の背中27>



すると、妙の事情聴取をした府警刑事が立ち上がった。

「ガイシャの婚約者・小田切妙は、婚約後直ぐからガイシャと肉体関係があったて言うてましたよ。何度もガイシャ宅に泊まっとりますね。SEXはノーマルやったという事で、SMの趣味なんか考えられへんて事でした。」

「天野由紀の言う1年後は今年の夏ですわ。ガイシャと小田切妙の婚約はいつですか?」

西村刑事が質問した。

「え~、9月3日の大安ですね」

「という事は、1年が経過した後に婚約者と肉体関係を持ったということや・・・」

塚口刑事が、知らず知らずのうちに呟いていた。


「婚約したから・・・という風にも思えませんか?ひょっとしたらガイシャは、SEXに対して封建的な考えを持った男やったんかも?」

「そんな男が、家に風俗嬢呼ばんでしょ」

「それはそうやなぁ・・・」

言い合う刑事達の間に、菅課長が入っていさめた。

「まぁまぁ。この結論は、風俗嬢の事情聴取が済んでからにしょう。塚さん、代理、捜査会議の後行って来てな」

「はい!」

今までつまらなさそうに会議に参加していた小川刑事が、嬉しそうに大きな返事をした。


「それで、小田切妙の犯行時刻のアリバイはどうなった?」

菅課長の言葉に、さっきの府警刑事が報告する。

「妙は犯行当日の午後、新幹線で大阪に来とります。その後は、一人でUSJへ行き、梅田でウインドショッピングをしていたそうです。ガイシャが午後10時まで仕事やった為、仕方なく一人になったという事ですが確認がとれとりません。午後10時頃ガイシャに電話したけど出なかったんで、仕方なく本町のホテル『ホリデイ・イン大阪』に泊まったと言うてます。ホテルのチェックインは22:32です。ですから、午後2時頃から午後10時半迄のアリバイは不明のままです。ただし、17:05と22:03と22:20にガイシャの携帯に妙から電話があったのは、携帯の受信記録から解っています」

「そうか。しかし、三角関係でもないと殺す動機があらへんからなぁ、そういう情報あるか?」

「二人はなかなか仲が良かったようですよ」

「ということなら、アリバイはないが小田切妙の心証はシロやな」

菅課長は、ホワイトボードの小田切妙の名前を見ながら言った。


「そうなると、あと容疑者は落合淳也だけになってしまうけど、これももひとつ弱いなぁ。他に聞き込みで出てきてないか?」

30人余の刑事達は、静まりかえってしまった。

いくら聞き込みをやっても、目撃者・容疑者が浮かんでこないのだった。

塚口刑事が刑事達の代表として申し開きをする。

「課長、場所柄もありますし、天候は最悪でしたし、目撃者を捜すのは難しいでしょう。それに、ガイシャの人柄が良すぎると言いますか、恨んでる人間がおらんのですよ」

「そうなんか・・・」

菅課長は、考え込んで清水管理官の方を見た。


ここで、清水管理官が話を始めた。

「私は先ほどの、前の恋人の話と風俗嬢の名刺があった事に興味があります。もし、目撃者・容疑者が出てこないのなら、被害者の人となりを詳しく調べてみる必要があるように思いました。そこに必ず、恨みを買う出来事が潜んでいるのではないかと考えます。そうでないと、あんな事件にはならないでしょう。西多摩署への協力依頼、西多摩への出張も考えていきますので、もうひと頑張りしてください」


「もう暫くは聞き込みを続けてくれ。頑張ってくれよ」

刑事達は、年末の人混みの中に埋もれていった。




東亜電機大阪事業所では、木下が殺されたニュースが報じられてから、その噂話で持ち切りになっていた。

ワイドショーでは、殺された部屋・殺され方が特殊であった事など事細かくレポートされ、『エリート社員の危険なSM趣味』として、毎日のように面白おかしく放送されていたのである。


多美子が、前の席の女子社員に話しかけている。

「木下さんがSMやったなんて、思いもせんかったわ。あの人、大人しい人やったからMやったんやろなぁ。女王様に縛られたり叩かれたりして喜んでたやなんて・・・。想像しただけで気色悪いわ」

多美子は、嫌悪感を露わにしていた。

女子社員は、不思議そうな顔で反論した。

「けど、木下さんの恋人やった天野さんに聞いたんですけど、そんな風には見えんかったて言うてましたよ。それに、木下さん婚約してはったやないですか。婚約者の人はそんな趣味なかったやろし、何かおかしいと思てるんです」

「隠してたんやて。木下さんの婚約者は、お父さんが都議会議員をやってるお嬢さまらしいわ。趣味より家柄をとって結婚を決めたんちゃう?結婚しても奥さんに隠れて、SMを続けるつもりやったんやわ。そんで、それを知った女王様にお仕置きされて・・・ちゅう事やないやろか」

「SMて、ナイフで刺すような酷い事まではせんのちゃいます?」

多美子と女子社員は、仕事時間中にも関わらず噂話を続けている。


鳴海はというと、西多摩プロジェクトの後任についてと、美奈子の事を心配していた。


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