気まずい時間
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※作者注 ここに書かれていた内容が性的過ぎたために、一時的措置として省略します。
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「死にたい」
たっぷりと時間を置いて戻ったおれに、開口一番カイリスはそう言った。
おれは黙って聞き流した。
だって、他になんて言葉を返せばいい?
『おれのも今度、見るか?』か!?
頭がいかれすぎてて、変態過ぎるだろ! あり得ない!!!!
おれの部屋の布団はすでに片づけられていた。
いつもの午後の光景だ。
二人を包むこの空気感以外は。
「おれは死んで欲しくない」
「…………でも、死にたい」
「ちょっと、いいか、マスター……」
「なんだ!!なんでもいいぞ!!!!」
「こんな頼み、他の幹部達が聞いたら、私が即座に殺されちゃいそうだけど、マスター、マスターに記憶の部分消去の術が、効くかどうか試していい?」
「そ、それだ!!カイ子それが一番いい!!!!今すぐ、速攻で消せるのか!?」
「……まず、確実に効く、遅効性のを試して、それがダメなら、抵抗力があったら効かない即効性のを試してみたい」
おれは目を閉じて寝ていてくれればいいというので、自分の部屋で横に、カイリスが寝ていた辺りで横になろうとしたが、カイリスがおれをバシバシと強く叩きながら、強烈に嫌がったので、カイリスの部屋で横になった。
部屋はカイリスと杏子のいい香りがする。
香りにどぎまぎしながら、中央で横になって目を閉じる。
暗闇の中、カイリスが呪文のようなものを物凄い早口で唱えたり、おれのおでこに手をあて、そこから何かが、あきらかに流れ込んできたのを感じたりして、ただただジッと、時間が過ぎるのを待った。
一時間後、カイリスから起きていいと言われ、二人で居間へと戻る。
「ど、どうだった!?
「…………すごく悲しいことと、すごく嬉しいことがある」
「すごく悲しいことはマスターの術に対する抵抗力は強い、だから今の出来事だけを消すのは無理だった。徐々に効く方が普通は効きやすいから、すぐ効くのは試してみるだけ無駄って事」
「すごく嬉しいことは、マスターの術に対する抵抗力が、極めて強力だから、シドラで知る限りの全員の敵の精神攻撃は受け付けない。味方では私が一番だから味方も無理」
「そ、そうか」
「…………うん、死にたい」
「……死なないでくれ、一緒に生きよう」
「………………………、うん」
「なんで、おれの部屋で……」
「マスター、察してくれ。答えないとイケない義務があるとはいえ、そんな質問は今の私にはコツだ!!!!」
「すまん!!!!!」
と言いながら、酷な!ごめん!!と心で必死にあやまる。
わざわざ、おれの部屋でって事は…………そう言うことだよな。っと嬉しくなってしまうおれがいるのは仕方がない事だ。
「いつか、その、私達の間に肉体関係が発生したら、その時にはマスターにも同じ事をしてもらって、恥ずかしい思いをしてもらうからな!私はこの事を忘れないからな!!」
あり得ないと思ったのが正解だった。
沈黙が怖いので、これまでの経緯を洗いざらい、細かい事まで喋りまくった。
「ド、ドミニオンと、パワーも発動させていたんだ」
「そのせいで、ガイドが複合的に混ざり合ったんだ。こっちも厳重な術式で、探知の術も機能していたけど、だから貫一の気配も、ドミニオンの気配も感じられなかった」
「リオン様の術だと思う、けどわざわざ言うような術じゃないから術名は知らない」
「そのせいで、おれはカイ子に気づかれる事なく……」
「あんなの、見られるなんて………………………死にたい」
気まずい思いを二人でしながら、話は術の話となった。
当たり前だ、それ以外の話なんか絶対にできない。
カイリスはずっと視線を合わせてくれないし、おれもうつむいて畳を見ながらの会話だ。時々目をあげると、そう言うときに限ってカイリスと視線が合った。
カイリスはずっと真っ赤な顔をしている。
「そ、そうか、じゅ、術名はなんて言うのかなーって思ったんだ」
「私が付けてあげる。『ピーピング』」
「…………マジ?」
「マジ。それ以外は私が許さないからな!『ピーピング』を 使う度に、マスターは罪悪感にさいななななまれれればいいんだ!!」
な。と、れ。の数っとツッコミを入れたかったが、今の状況では、無理だ。
「私は今からマスターの部屋を徹底的に掃除する。いいよね?」
それでカイリスの気が晴れるのならと、おれの部屋の掃除を命じた。