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一家

荒野で泣くのなるべく多くの更新を目指しています。

第二話も、お楽しみください。


「ゴラァァァアアア!?出てコイヤアアアア?????」


 その乱入者の怒り狂った罵声と共に、ガタンゴトンバタンと激しい物音が響き渡る

 せめてもの救いは、そこに破壊音が加わっていない事だけだった。

 聞こえる罵声は一人分。だが足音は多数。

 つまりは騒ぐことなく捕まっってしまった者が複数いる。


 その怒声はこの隠れ場所から遠くなったり近くなったりと、辺りをうろついているようで、とにかく油断ならない。

 この場に、応援や支援は今のところ届かない。

 万が一にも、声を出さないように口を固く結び、その上からさらに両手で口を押さえる。


「うわぁあああああああ!」

 男の叫びが聞こえた。

 そいつは仲間を売る発言を繰り返し、そして静かになった。


 怒りがわいて出た。


 そして、再び怒声は繰り返される。

 声はこの場から遠ざかっていく。足音はその声についていったが先ほど幾人分か少なく聞こえる。

 まだこの場に留まっているものがいるらしい。

 

 留まっている者達は歩き回るでもなく、ジッと息を潜めている様子だ。


 五分以上の長い間息を潜め、早く向こうに行けと願う。



 その時、突然、バリン、ドカカカカ!っという破壊音が遠くから聞こえた。



 隠れ場所から青ざめ、飛び出そうとすると、 留まっていた者達の一人が声をあげた。

 「私が行って来ます、兄さんはここへ!」

 そして一人がこの場から駆け出して行った。


 扉がバタンとしまる音がし、そして室内をコツコツと歩く音。

 まだ一人室内に残っていたようだ。


 扉の向こうの遠くの方で、複数人が話し声が聞こえるが、遠すぎて内容は聞こえない。


 そしてその声はだんだんと静かになり、また怒声が響いた。


 暗闇の中、手にもつ目覚まし時計に目を落とす。捜索が開始され、まだ15分しか経ってない。


「ゴラァアアアアアアアアアア!!!!!貫一君、いい加減、出てこいやぁああああああ」

 時計を見るために、両手から片手になったためか、ブフォ!っという笑い声が漏れてしまう。


 いやいやいやいやいや、かくれんぼって、こんなんじゃないから!! 怒声とか罵声とか、ましてや先に見つかった柳が裏切って、鬼の手先になるとか!!! アレコレ重いもんどかしたりとか、高い所を見るとか、鬼に見つかった亡者はサポーターじゃないねぇから!!!!!!

 鬼に見つかったんだから、せいぜい、喰われて、成仏しろ!!!!!


「おい! そこにいるの誰だ!?」

 おれは声を押し殺しながらスイカする。

「トキです」

 時子が即答した。おれの隠れ場所はわかっているようだ。

「出てけ! 香ちゃんに、居場所がバレるだろう」

「…………………………………、…………………………はい。ご迷惑をおかけ――」

 なんか、落ち込んでいる声音だ。

「――あぁあああ! 違うから!? これ、かくれんぼだから、トキがここに残ってたら不自然って事だから!!」

「あぁ!!! そうですね!!!!! そこまで気が回りませんでした!!! 貫一さん!!!!!」

「回してくれよ!? シドラにかくれんぼって無かったのか!?」


「情報規制がかかりますのでお答えできません」


「かくれんぼ程度の有無の確認で規制!!??」

「じゃぁいいや!! とにかく早く出てってくれ!! そもそもなんで残ったの!?」

「それは、杏子さんがこの場に残ろうとソワソワしていたので、私も負けずにと」

「ソワソワ?」

「……察するに杏子さんは食堂での貫一さんと私のようにこの場で、一気に私の貫一さんに対する性的優位性に追いつこうとする気が満々でしたので、私も負けていられないと思いまして……、貫一さん、このままこっそりと抜け出して、あの時のその先に……」


 おれはびっくりしてガンっと頭をしこたまぶつけた。

 隠れ場所がせまく低い事を忘れて立ち上がってしまう。


「大丈夫ですか?」

「大丈夫!!」

「では、失礼いたします」

 そして、コツコツと足音を残して、扉を開け――

「ゴォォォォラぁ――、あれ?時子ちゃん、そこにずっといたの? 何してたの?」

「あら、ゆっちゃん。実は、私暗がりが大好きで……ちょっと横になろうかなって」


 はい!! ダメ!!!! なにその嘘!!! 捕まったぁ!!!!

逃げ切ったらおれのロリコン疑惑を晴らせる弁明のチャンスがもらえたはずなのにぃぃぃ!!!!!


 鬼が入室した。

 ゾロゾロと他の足音もする。

「おい、貫一く~~~ん、出て来い。今ならまだ間に合う」

 何が?

「私が割ったのが何か気になるだろう? 寛一君が必死で直してくれた植木鉢かな~~?それとも、今修理中の屋根瓦かなぁ~~~~?」

 なんという炙り出し方だ!!

「香が割ったのは、捨てるつもりだった茶碗だ」

 ちょ!! カイ子ちゃん!!!!! どっちの味方なんだよぉ!! っと声を上げた。

 鬼と亡者に味方関係の構築なんて可能なの? 割れたのがたいした物じゃなくって胸を撫で下ろす。

 

「おい、貫一くん。もう飽きた、他の遊びしようぜぇ~~~」

 って事は、弁明チャンスが永遠に失われる!?

 時計に目を落とす。

 あと三分で、おれの一人勝ちだ!!!!!!!

「おい、ラッカン。出て来いよ。おれも飽きたから、ゲームしようぜ。人数分のコントローラーとモニター持ってきたからよ」

「貫一、出よう。すぐ出よう。私は柳くんの持ってきたっていうゲームに非常に興味ある。今すぐやってみたい」

 さっきは助けてくれたカイ子も簡単に裏切ったぁ!!!! このゲームっ子め!!!!!

  四面楚歌ぁぁぁぁぁあああああ!!


 暇だったから、じゃぁかくれんぼするかって言い出したのはおれで、香ちゃんは小五にもなって、今さらそんなガキっぽい遊びなんてできるか、同級生に見られたらどうしてくれるって、ゴネてたけど最後にはやる気になってたじゃんか!!!!! 

 あと三分待ってくれよ!!!


 おれは再び、万が一にも、笑い出さないように注意して口を一文字に結んで、その上から片手で口を押さえてから、残り時間耐える決意を新たにした。

 おれが勝者になる時をジッと待ちかまえる。


「ゴォォォォオオオオラァアアアアアアア!!!?」

 ああああ!!! バレてる。隠れ場所の目の前からだと思われる場所から怒声が響いた。


 ダメだ、向こうはゲラゲラ笑いながら怒声を上げ続けている。

 まずい、柳や時子や杏子が笑ってるから、香ちゃんも調子に乗ってきた。

 つられてメッチャ笑いたい。


 「貫一君の物真似、やりま~~~~~す」


 「俺は~~~、シタラカンイチ~~~~。シタラケのぉ~~~~チョーナン、なんだぞぉぉ~~~


 香ちゃんの見事な作戦だ。かくれんぼには、こんな攻略法があったとは!!!!

 なんか知らんが暗闇だとテンションがおかしくなる。

 あんなのでも、一緒にゲラゲラ笑いたい。

「ダメよ、ゆっちゃん!!!、貫一さんの物真似似すぎ!!!降参、降参!」

 ああ、遠くで、カイリスや時子も、笑って、鬼の亡者の葬列に加わってしまった。

 いやいや、あんまり似てねぇから!! なんでシャクれた感じの声の出し方!? 香ちゃんが顎をシャクらせて、やってるんだろうなぁって暗闇で想像できる怒鳴り方してるから、おもしろいだけで……!!!

 ブフフフフ!、おれの笑い声がとうとう漏れだしてきた!!!


「あっ!!聞こえた。『おい、カイ子!杏子!!!トキ!!柳ぃぃぃん!! 漬物漬けるの手伝ってくれぇぇぇぇ』」

 亡者たちはヤンヤヤンヤと囃し立てる。

時子と柳に褒められたからか、調子に乗って、まだ物真似を続ける。


「『オオヤさん~~~~! あざ~~~~っっす!!カンイチぃぃぃぃっっっっす!!』」

 所詮は小学生の物真似だが…………いつもならば! 微笑ましい目で見守るだけだが!!!! 言わねぇから!!! そんなこと言った事ないから!!!

 やばい、やっぱりテンションがおかしい。

 きっと今日、今だけだと思うけど、目茶苦茶おもしろい!!



 おれは自分が補修した信楽焼きのタヌキの中で爆笑した。




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