表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/15

    (6)/3

 黒竜の頭上で、大気の温度は2000度に跳ねあがった。黄金の両角に灼熱(しゃくねつ)地獄への道標があらわれる。気体が燃焼しているのではない。妖気の一部が登頂の極所で圧縮され、金色に発光しているのである。中心部はほとんど色が飛び、妖気の供給がさらにすすむと巨大な天体の爆弾が造形された。


 ――バカが、人界をふっとばす気か!


 暴走する圧倒的な自殺願望を、白竜は愕然と見あげた。相殺する攻撃をもってのぞむのも可能だが、戦場は蜘蛛の糸のようにはかない世界である。迎撃するもしないも、このさい超新星爆発には変わりない。


 故郷の戸籍をいっさい抹消し、義務も責務もすべてに背をむけて、世界の秩序から身ひとつで逃亡した男が、最終的には損な性格にさいなまれ、みずからみじめな道を選択しようとしているのかもしれなかった。


 いきなり、白竜は黒竜にからみついた。己を喪失した紅眼の死神は大気をゆるがす咆哮(ほうこう)をあげ、肉体戦を回避しようと激しく重量感ある身体を転じている。白竜は断固としてゆずらず、その場にしがみついている。黒い火花が白銀の絹肌を焼きこがして、悲痛な音が散った。


 その時、天空に巨大な碧いオーロラが出現した。


 光の幕は一対の神々を覆い、壮麗なるラピスラズリのシャワーが全天にふりまかれた。

 鮮血に染まった下界の石像は、心拍をひどく乱して神聖なエンドロールにはりつけられている。

 そうして互いにもつれあいつつ、狂乱の怒号を鳴り響かせ、二頭の天竜は膨張しきった殺戮兵器とともに、この世界から途方もなく遠い場所へと消えていた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ