休息⋯ ?
かなり歩いたが、まだつかない。アリスも疲れているようだった。疲れ過ぎて猫耳まで出ている。休憩した方がいいかな⋯
「なぁアリス、休憩するか?」
辺りはもうかなり明るくなってきていた。アリスは最初こそ不機嫌だったが、今はその気力もないようで、
「そうですね⋯そうしましょう⋯」
と歩む足を止めた。
「それに⋯猫耳も出てるぞ?」
わざわざ付け加えなくてもいいことを付け加えてしまった。気になっていたからしょうがない。するとアリスはバッと猫耳を手で押し込んでいた。顔が赤くなっている。
「こっこれは⋯疲れたりとかすると勝手に出てきてしまうんです⋯押し込めば引っ込みますから、お気になさらず⋯!」
かなりグイグイやっている。
「お、おい、大丈夫か?かなり無理矢理やってるし、顔も赤くなってるぞ⋯?」
アリスは俺の言ってることも無視し、ついに耳はすっと引っ込んだ。
大変そうだな⋯隠せるものがあればいいんだが⋯あ、ないなら作ればいいか⋯
「な、何やってるんですか?澪くん」
アリスはゴソゴソと鞄の中身を漁っていた俺を不思議そうに見る。
アリスに言ったら遠慮しそうだな⋯んー⋯
「少し探し物⋯あ、休めるような場所探してきてくれないか⋯?教えてくれれば先に休んでていいから」
アリスは、はいっと言って近くの森に入っていった。皮を取り出した俺は牙を削った細い針で蜘蛛が落とした綺麗な糸を使って縫い始める。かなり時間がかかる作業だが俺には謎の『裁縫上手』というようなスキルが付いているので早く終わった。森を見るとそこから閃光弾が放たれた。一瞬目がチカチカしたが、出来上がった帽子をしまって閃光弾が上がった場所に向かって歩き始めた。
あ、そうだ、薪とかも持っていこうかな?
それから薪を集めながら歩いていると洞窟を見つけた。多分ここだろう。見にくいが地面に矢印が書いてある。俺は少しくらい洞窟の中に入った。
そこは奥には浅く、地面は低くなっていた。奥の方を見るとアリスが熟睡していた。
早いな⋯なんだよあれ、子供か?
その場に薪を置き先程から気配を発していたものがいる方をむく。
「さっきからなんだよ⋯」
そこには小さな少女がいた。小学生ぐらいの子だろうか。目測背丈は145cmぐらいだった。その少女は無言のままこっちをジーッと見ている。なにそれ怖い
少女の腰には銃が見えた。
あの銃は確か⋯ベレッタM92だった。あんな子供で銃なんて扱うのか⋯さらに怖いな⋯今の子供は大丈夫か?
マジマジと見ながら考えていると子供の手が動いた。銃を持ち俺に向ける。
あの動き⋯慣れてるな⋯さて、どうするかな?
俺はナイフを持ち直し、相手の様子を伺う。少女はベレッタの銃口を上に向けると一回発砲した。次は無いと言うようにベレッタの銃口をこちらに向ける。
はぁ⋯何で最近の小さい子は銃まで撃ち慣れてるの?家で習ってきたのかよ⋯
俺は姿勢を低くし、銃口を見つめた。引き金に手をかけた時、
⋯弾切れになればいいかな⋯
引き金を引いたが、カチッと音がしただけで銃弾が飛び出すことは無い。だが、少女は動じず、ポケットから素早く取り出し、目にも止まらぬ速さで詰める。
おいおい⋯予備なんて聞いてねぇよ⋯流石に眠いな⋯
⋯一発だけ手にしてくれよ⋯
少女が引き金を引く。ほとんど同時に俺の右腕が熱くなる。
くっそー痛ってぇなぁ⋯やっぱそこそこに威力はあるよなぁ⋯
それからもう一発撃とうとしていたが出なかった。俺の腕からは血が滴っている。貧血か、クラクラとするがすぐに治まった。
俺は一気に近づき、少女の背後に回る。少女も慣れているようで、すぐに向きを変える。が、俺は肩を掴み、首の後ろあたりを少し強めにナイフの柄で殴る。少女は一瞬ビクッとしたが、すぐに倒れた。
おっとぉ⋯顔面から倒れたら痛いでしょ⋯
腕で受け止める。その際に右腕がズキッといたんだが、体制は崩さずにすんだ。洞窟内に運んで寝かせる。少女が持っていたベレッタは落とした。他に高周波ナイフも隠し持ってた。
どんだけ物騒なもの持ってんだよ⋯
俺も横になった。意識が薄れてくる頃にはもうすっかり暗かった。