二つの影
嘘⋯だろ⋯?何であの2人がここにいるんだ?あの2人はここにいるはずがないのに。
とても見覚えのある影。嫌なほど見てきた。
「ねぇ、澪くん、あの2人なんか変です。生きてないっていうか、心が感じられないっていうか⋯なんだろう⋯あの影」
アリスはそう言うと弓を構えた。軽く弓を射る。影はもうそこには無かった。
そうだ⋯いるはずがない⋯平気だ⋯!
まだいるはずだ。俺とアリスが辺りを見回すと背後にその影が立っていた。俺は後ろに飛び、ナイフを構えた。その影には実態がない。だが、影の中心部に微かな光がある。そこが影の核だろう。ナイフを握り直し、核を見つめる。
確かに⋯マリンじゃないなら大丈夫だ!流石にちょっとあれだが
「ごめん、マリン⋯!」
俺は影の核にナイフを刺した。影は細かい霧のようになって消滅した。
やっぱ謝っとかないとなぁ⋯
「きゃあ!」
⋯はっ?あ、そうか、もう一人いたわ⋯
アリスの方を見るともう一人の影に襲われていた。俺は影からアリスを引き離した。するとその影はどこかへ消え去ってしまった。アリスは何が何だかわからないみたいな顔している。
とりあえず⋯トルディニアについてから話せばいいか。
「あの、トルディニアってあんなのいませんよね⋯?」
アリスにもいたら帰りますみたいな感じで聞いてくる。
「いない。トルディニアは平和な王国だから⋯」
俺が来るまでは⋯
「そうですか⋯!良かったです!」
アリスはよろよろと立ち上がり、俺がさっき倒した影のいた場所まで行く。そこには綺麗な水色の宝石が落ちていた。いつ拾ったのかわからないナイフでていねいに割り、一つをハートの形に、一つを星の形にして、星の形の方を俺に渡した。
うっわぁ⋯うま⋯!
「これ!案内人がパートナーとなった時に渡すんですけど、無くしちゃったみたいで⋯今作りました!不格好ですみません⋯」
と言ってその手を少し下にさげるが、その宝石は丁寧に削られていて、良く店とかで売ってそうな形だ。
「サンキュ。不格好なんかじゃないから気にしなくてもいいと思う。俺は。それじゃ、パートナーとして宜しくな!アリス!」
俺が受け取るとアリスは顔を伏せながら立ち上がる。
何でなんだ?なんか付いてるのか?
「あ、ありがとうございますっ澪くんは優しいんですね⋯!」
と、顔を伏せながら言った。
だから何でこんな顔を伏せてるんだ?
俺がしゃがんで下から顔を覗くと、アリスは俺と目が合った途端に顔を背けてしまった。
「えっ何で?」
追いかけながら聞くと
「し、知りません⋯!」
と言って珍しく不機嫌なようだった。
俺、なんかしたか⋯?顔には何もついていなかったが⋯?