それは未来の猫型ロボットの何でも出てくるポケットなんですか?
それから集落に入ったはいいものの、お金を持っていないため何も出来ないことに気づいた。辺りはもう暗くなっていた。仕方なく、この集落を出ようと考えていたところにこの集落で一番偉そうな人が歩いてきた。
「其方等、旅のものかな?」
優しそうな顔をしたおじいさんで、アリスも気に入っているようだった。アリスは顔を上げた。
「あ、はい!トルディニアに向かっているんですが、泊まるところが無くて、今から出ようかと思っていたところです!」
するとおじいさんはアリスを見た。
「名前は?」
「あ、私は、アリス・メティアといいます!それで隣にいるのは私のパートナーで」
「朝倉澪って言います。」
おじいさんは俺の名前を聞いた途端、俺の方を見て、しばらく考え込んでいた。そして口を開いた。
「朝倉澪⋯かなり前にトルディニアに現れ、モンスターを倒し、突然消えたと言われる⋯朝倉澪か?」
と聞いてきた。俺は自分がそう言われているとは思わなかった。
っていうか、こんな所まで広がってるのかよ⋯
「まぁ、俺が少し前まで、トルディニアにいたっていうのはそうなんですが、トルディニアに知り合いがいるんですか?」
「あぁ、いるさ。名前はダリア・ユナ。あそこのお嬢ちゃんたちにはユナじいと言われていたと聞いておる。お嬢ちゃんたちの名前は⋯」
「マリンとリリア⋯ですよね?」
俺がその2人の名前を口にするとおじいさんは驚いた様子で、目をぱちくりさせていた。
だよなぁ⋯知ってるはずも無いもんなぁ⋯
お爺さんは急に真面目な顔になる。
「澪殿、ユナに伝えて欲しいことがある。頼めるか?」
と言った。この真剣な表情からすると、かなり大事な用事なんだろう。
丁度トルディニアに向かってるし、まぁいっか⋯
「分かりました。何て伝えればいいんですか?」
俺はおじいさんに要件を伝えられたあと、名前も聞き、メモをしようと、紙を探した。それどころかスマホさえも無い。
あぁ⋯!スマホ!忘れてた⋯しょうがないか⋯
「何か、紙って貰えますか?」
それを聞くとおじいさんは持っていた小さな袋から少し大きめの手紙を出した。
何であんなに小さいのからこんなのが出てくるんだ?ペンまで出てきたし。あれは未来の猫型ロボットの何でも出てくるポケットのようなものなのか⋯?
当然そんな事が聞けるはずもなく、ものすごくもやもやしながら要件と名前を書いた。そしてペンを返すと、
「そうだ、泊まるところがなかったのだろう?それならすぐそこにあるこの集落の旅館に泊まるといい。わしの名前をいえば大丈夫だから。」
と言ってそのおじいさんは去っていった。
なんで知ってるんだよ⋯エスパーかなんかなのか?
おじいさんが指を指した方を見ると、かなり大きめの旅館が見えた。横引きの扉を開けるとおばあさんが
「いらっしゃいませ。お2人様ですね?スリッパに履き替えて下さい⋯お部屋は⋯」
とりあえずの説明を受け、案内された部屋に入った。かなり大きな部屋だったが、もちろん、アリスとは別々の部屋だった。おばあさんは
「ごゆっくり⋯」
と言うと部屋を出ていった。部屋に入った瞬間、かなりの疲れが襲う。ため息をついて布団に寝転がるとすぐに意識は遠のいていった。翌朝、早くに布団を片付け、おじいさんに言われた通りにしたら深々と頭を下げられ、何か複雑だった。旅館を出ると気持ちいいほどの日光が降り注いだ。伸びをし、その集落を出発した。
「なぁアリス、あとどれ位でトルディニアにつく?」
歩きながら聞くと、
「んっとー⋯ペースが思ったよりも早かったので、明日の早朝には着くでしょう。疲れも取れましたし!気分は最高です!」
そう言ってアリスは思い切り伸びをした。
俺も、右腕の痛みも消え、かなり体調はよかった。温泉入ったからかな?
少し歩くと見たことある影が見えた。
「⋯!!」
俺は言葉も出ないほどに驚いた。
な、何で⋯?