第7話 学校に住むよ
私の、学校生活が始まる。
でもその前に、普通の生活のための準備が優先だ。
昨日は、騎士団詰め所に泊めてもらったからいいけど、今日からはコップ一個筆記用具1本すらない状態だ。
寝床は、屈強な騎士たちが使っていた凄く臭そうな布団を、使うしか無いらしい。
倉庫に残されていた、比較的カビとシミの少なそうな奴を選んで、引っ張りだして天日干しにする。
この作業中、2度も胃酸が喉元まで上がってきたから、いかに困難な作業だったか、お解り頂けると思う。
手伝ってくれたタキさんも、思わず顔をしかめていた。
そして、おぞましき作業の後、私はタキさんとショッピングに出掛けている。
王国からの入学準備金として貰った金貨1枚、これを使って生活必需品、筆記用具、その他諸々を買うのだ。
しかし、シャーペンやボールペンは無く、紙は非常に高価でメモ帳なんて使い方すればバチが当たる世界なのだ。
ノートの代わりは一人用の黒板、鉛筆はチョーク。
本は基本高価なので、教科書や参考書はなし。
食器類は木製、食べたらすぐ洗って乾かさないとカビが生える。
あと、被服類は布は高価、革製品は安価、下着以外は皮でもいいかも。
冷蔵庫が無いので保存食以外は買ったその日に食べつくす、買いすぎ注意。
肉はブロックが安くて、ミンチは高価、ブロック買ってきて自分で轢くのが当たり前。
塩以外の調味料は非常に高価、無いものと思え。
野菜は毒草も売っている、毒抜きしてから食べるものもあるので注意。
こうして、市場を回っていると、今までの常識が次々と覆っていく。
それはそれで楽しいんだけどね。
夕方に宿舎に帰ってきた。
部屋は、二階の階段を上がってすぐで、ちょうど職員室の真上にした。
部屋は沢山空いてたけど、人と離れるのは怖いしね。
タキさんはここではなく、旅に出た師匠の工房の留守を守りつつ、そこに住んでいるそうだ。
この世界は日が暮れると、本当に真っ暗になる。
まだ日があるうちに夕飯の用意をしよう。
炊事場は共有で一階にある、材料を袋に入れて階段を降りていたら。
先生の怒鳴る声が聞こえてきて、おそらくは職員室から出て来た人とすれ違った。
黒い髪の短髪で、目が細くて鋭く、小太りの男性だった。
彼は、ドアを壊れそうなほど乱暴に開け閉めして、学校を出て行った。
多分、彼も私達の世界の人間。
だって、この世界でメガネ掛けた人なんて、見たことがなかったから。