第5話 二日目の朝だよ
コンコンコン、とノックする音で私は目が覚めた。
ここはどこだ?まだ寝起きの頭には、この見たことのない風景が騎士団の医務室だとは解らない。
「お兄ちゃん?」
私の声で起きている確認をしたのか、タキ君が入ってくる。
「おはようございます、コトネさん。よく眠れましたか?」
「あれ?」
昨日の事を思い出してきた、自分の居る場所も。
私は改めて挨拶した、
「おはようございます。今何時ぐらいですか?」
「あー、こっちの時間とちょっと違うみたいですけど、まぁ遅めの朝と言った所です。」
そうか、1日24時間は私の世界の話だもんな。
「足の方はもう大丈夫ですか?」
「うん、もう痛くはないよ」
昨日騎士団の神官戦士の人に、ヒールして貰って外傷は塞がってたから、
痛くなければもう完治だ。
「今日は服を買いましょう。それから、連れて行きたい所があるんです」
「私、お金持ってないんだけど」
「あまり高い服は困りますが、最初の服か僕が出しますよ。
ただし、ちゃんと実用重視の服にする事、しばらくは一張羅になるでしょうから」
「わーい、って一張羅?」
「服は高いですからね」
そうなのか、やはり世界が違うと、物の価値も変わるんだなぁ。
石造りの建物の外に出ると目がくらむ、ガラスが無いから建物の中が昼でも暗いんだ。
目が慣れていると、活気に溢れる町並みが見えてくる。
お店は露天か屋台がほとんどで、お店を構えてる方が少ないかもしれない。
迷子にならないように、タキ君の服の裾を掴み、市場へとやって来る。
服は、半分は中古衣類、半分は新品だけど無地で色が地味。
大体はクリーム色か茶色で、真っ白な服は一枚も無かった。
そんな中で、クリーム色の長袖上着と、濃い緑色に染めたズボンを買ってもらった。
全身クリーム色は嫌だったので、ちょっと高かったけどズボンは染めたの強請っちまったい。
それから、屋台で肉巻きの串を買ってもらい、食べながら話をしていた。
「コトネさんを今から連れていく所は、この国の言葉を教えてくれる学校です。
ご自分の世界に帰るまでとはいえ、喋れないのでは生きていくのも難しいです。
ですから、自活していただくためにも、国が奨学金を出して学んでいただきます」
「うぅ、国語が一教科増えたぁぁ」
「頑張ってください、そこはもう生きるためと割りきって」
と言ってタキ君は笑う。
串を食べ終わって、立ち上がると王城の方へ歩き出した。
すれ違う人たちの言葉は分からないけど、なんとなくポジティブな印象をうける。
そして、漆喰で塗り固められ壁が白い大きな建物に来た。
私達の世界の学校を、小さくしたようにも見える。
私は緊張しながらも、タキ君と共に建物に入っていく。
コンコンコン、とタキ君が部屋の扉をノックすると、
「はい、どうぞ」
日本語だ!
扉を潜り、声の主を探すと、
「先生!」
「佐渡かっ!」
私が通う中学校の担任、谷口先生が居た。