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第43話 死闘

 「先生…嘘…」

 私は恐る恐る先生に近寄っていく。目を閉じて仰向けに倒れている先生の、すぐ脇まで来ると崩れるように座り込んだ。

 肩から酷い出血をしては居たものの、それ以外の外傷は無い。

 「コトネさん、あの魔法はパラライズと言って非殺傷魔法です。大丈夫、谷口先生は生きてます」

 「よかった。ウィリアムくんとルルさんは大丈夫?」

 「僕は大丈夫だけど…、ルルは投げられる前に折られたよね」

 「申し訳ありません、油断致しました」

 ルルは右肩を左手で抑えながら俯いた。

 「いや、よくぞ無傷で捕らえてくれた。ありがとう」

 「もったいない、お言葉」

 タキくんは、

 「これ以上の追跡は難しいかもしれませんが、僕は奴を追ってみます。皆さんはここで谷口先生を見てて下さい」

 と言って走りだすので、私も後を追った。

 たとえ強くなくったって、好きな人を守れるチャンスは近くに居ないと来ないのだから。

 

 階段を降りて地下に入ると、剣撃の音が鳴り響いている。

 ジョーカーは地下室を抜けて、崖下の裏口から外に出るつもりだったが、その前に1班のアルベルトたちが突入し地下室で鉢合わせしたのだった。

 ジョーカーの取り憑いているレッサーデーモンは空を飛べる、地下室で補足出来たのは幸いだったる

 しかし、笹を人質に取られたままである、アルベルトと亮介は剣を抜き放つと逃げられない様に囲むのだった。

 レッサーデーモンは魔法抵抗が非常に高く、非殺傷魔法では効果を上げられない。しかし、強力な攻撃魔法を放っては笹を殺しかねなかった。

 ナブォは呪文二人の物理防御と魔法に対するシールドを張って、前衛二人のサポートに回る。

 ジョーカーは呪文とともに大剣を召喚すると、右手で大剣を掴み左手で魔法を放った。

 左手の魔法陣からはこぶし大の光球が吐き出され、二人に向かって飛んで行くが、その身体に触れる前にかき消されていく。

 ジョーカーが右手の大剣を振るっても、二人の技量は高く受け流し躱しながら反撃をした。

 タキさんと私は、その場に到着する。

 私達は、ジョーカーを完全に包囲したのだ。

 逃げ場を失ったジョーカーは、笹の手を振り回しアルベルトに投げつける。

 アルベルトが受け止めれば、二人まとめて叩き切るつもりだっただろうが、それを体ごとアルベルトは躱す。

 人質を失ったジョーカーは攻撃魔法の的になる、誰もがそう思っていた。

 

 実際タキさんも、攻撃魔法の詠唱に入っていた。

 「グフッ、ぐぉっ」

 くぐもった声で呻いたのは、ナブォだった。

 投げつけられたと思っていた笹は、隠し持っていたダガーでナブォを刺していた。

 「そんな!? 師匠が…」

 前のめりに倒れるナブォは、口と腹から血を流していた。

 タキは咄嗟に呪文を詠唱しなおす、笹は頭上に現れた黄色い光球からの稲光に撃たれると、ビクリと身体を震わせばったりと倒れる。

 スタンの魔法だった。

 私とタキさんでナブォさんを引きずり部屋の端に連れて行く。

 出血は激しく、タキさんの指示で私は両手を真っ赤にしながら傷口を圧迫止血をする。

 「お願い、止まって。死なないで…」

 私は誰にも死んでほしくない、それが仲間となった人なら尚更のこと。

 呪文も使えず医療の技術も無い私には、止血して時間を稼ぐのが精一杯だった。


 そして今やり合っているのは、アルベルトと亮介それに対するジョーカーだった。

 ジョーカーは大振りの剣を右手で振り回し、左手で魔法の行使をしていた。

 アルベルトと亮介の服は何箇所も焦げ、穴が空き、腕や足には血が滲んでいる。

 タキさんは魔法で防御の呪文を唱え、二人に直撃する魔法は無くなった。

 しかし、前衛の二人は既にボロボロになっている。

 ジョーカーに剣の心得は無いようだったが、その筋力は高く力ずくで振り回すだけの剣ではあったが受けるに厳しく、避けるのをミスすれば致命傷になること必至だ。

 二人は魔法によってダメージを受けなくなると、このジョーカーの攻撃が意外と単純な事に気が付き始めた。

 剣は重いが谷口程ではない、アルベルトは十分受けきれると判断した。

 「亮介!受けるのは任せて、攻撃に転じろ」

 「オーケーだ、ミスるなよアルやん」

 二人は知らない間に仲良くなってたみたいで、コンビネーションでジョーカーを圧倒しだす。

 アルベルトが受けて、亮介が斬りつける。

 しばらくすると、ジョーカーは身体の至る所から血を流し肩で息をしていた。

 「二人共頑張って! 後はソイツだけ!」

 その私の言葉を聞いて一番反応したのは、意外にもジョーカーだった。

 二人に剣を叩きつけると、一目散に笹に跳びかかり、あっという間にその頭を潰した。

 そしてそのジョーカーも、二人の剣が自分の身体に深々と食い込んでいるのを見ると、その場に力無く崩れ落ちた。

 ジョーカーは最後に、笑った様に私には見えた。

 笹は頭をトマトの様に潰され、息絶えていた。

 

 「師匠ー、師匠ー!」

 「あぁ、タキか。血が足りなくなりそうだから早めに治療してくれる?」

 師匠のナブォさんは生きていた、そうとうに重症だったけど。

 こうして、犠牲を出しつつもジョーカーの討伐は終わった。

 笹さんは死亡し、ルルさんは右腕骨折、ナブォさんは腹部を刺され重症だった。

 

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