第4話 街についたよ
あの妖魔は、ゴブリンと言う名前だそうな。
そして、ゴブリン達は集団で生活し、集団で狩りをする。
つまり、3匹の回りにはまだ仲間が居ると言うことで、急ぎここを離れないとイケナイのです。
私は、マントで包まれて、アルベルトさんにお姫様抱っこで運ばれてる。
私は、未だかつて無い視線の高さで、凄いスピードで移動してる。
偶に樹の枝とかピシピシ当たるけど、そんなの気にしてる場合じゃないのは、二人の緊張感からわかる。
ずっと走り通しで、先にタキ君の方が音を上げる、凄いなアルベルトさん。
しばらく休憩して、回りを警戒している。
あの3匹のゴブリンを倒した直後は、回りに相当数のゴブリンが居たそうだ。
だから即効で片付けて、逃げ出したのだけど、見つかっていれば間違いなく追跡されているのだと。
息を整えてからアルベルトさんと話をするタキ君、そして私に、
「追跡はないようですが、日が落ちる前に帰りたいので、ここからも急ぎます」
と言って、さっきよりはゆっくりとしたペースで走り続けた。
しばらく走ると、草原が途切れ開けた街道に出た。
「ここまでくれば、一安心です。足の具合はどうですか?」
と聞くタキ君に、先程までの緊張感はない。
「まだちょっと痛いけど、多分歩けます」
「足を低くするとまた出血の恐れがありますから、このまま街まで行きましょう」
むぅ、緊張感がなくなると、これってちょっと恥ずかしいな。
それにしても、これだけ走れるアルベルトさんが、息を切らして戦ってた悪魔ジョーカーって、きっと強かったんだな。
そして、日が傾き掛けた頃、街の門に到着した。
ここから先に会った人たちの言葉は全部解らなくて、タキ君だけが頼りなのだった。
街の大通りでアルベルトさんと別れ、タキ君の案内で食堂へ行く。
私はお腹が空いているのだ!
そういえば私、夕飯の準備してて、ここに飛ばされてきたんだよなぁ。
向こうは夕方だったけど、こっちに来たら昼だった。
腕時計は03:00の表示、都合15時間近く食べてなかった。
だから、ここに入ってから、鳴りっぱなしで止まない腹の音も仕方ないんだ。
私の作った麻婆、みんな食べてくれてるかなぁ。
私も食べたかった、シスコンでウザいお兄ちゃんも、夜中に帰って早朝に出かける影の薄い両親も、もう会えないのかなぁ。
うつむいて、まだ料理が来ないテーブルを見てたら、不意に視界が歪んで、涙が溢れ出ている事に気づく。
14歳にまでなって、こんなに泣き虫になるなんて、結構弱い人間だったんだな、私は。
木のテーブルにポタポタと水滴が落ち、丸く色が変わる。
肩を震わせうつむく私に、タキ君は
「今は、まだ心がびっくりしているだけですよ。
直ぐに慣れます、帰る方法だって、ちゃんと探してますから大丈夫ですよ」
と慰めてくれた。
顔を上げる私を見て、タキ君は残念そうな顔をした。
テーブルに落ちた水滴の大半は、よだれだったからだ。
ご飯を食べたら元気が出た私は、そのあと街で靴を買ってもらい、今日の寝床へ向かうのであった。
今日は、怪我してる事もあって、騎士団詰め所の医務室でベットを借りて寝ることになった。
足はまだ痛むけれど、寝れない程ではない。
むしろ、1日で色々ありすぎて疲れた・・・
枕に頭を付けると、ベットに沈んでいく様な感覚を覚え、そのまま意識が無くなった。
「明日の朝、迎えに来ますから・・・って、もう寝てますか」