第39話 失踪
あの夜から二週間が経ったが、まだ笹は見つかっていなかった。
王宮では、外からの侵入に警戒していたが、護衛対象みずからが外に出て失踪するとは予想していなかったそうだ。
ジョーカーの詳しい生体などについては、タキくんの師匠が調べに出ているのでその結果待ちと言う事になっている。
ただ、前回の事を踏まえると街の中に潜伏している可能性が高いので、騎士団や自警団の捜索が続けられる、また数が少ない魔術師はめぼしを付けた場所への突入に同行するため騎士団詰め所待機となる。
タキさんもこのシフトに組み込まれている。
アルベルトさんも騎士団の仕事が忙しくなって、休みがちになってる。
今教室には、私と兄とウィリアムくんとルルさんの4人しか居ない。
ウイリアムくんは机に顎を乗せ、退屈そうに話しかけてきた。
「ちょっとさみしくなったねー」
「そうだね、これまで自習なんて無かったのに」
「コトネ、タキに会えなくて寂しいんじゃない?」
「うー」
すると唐突に兄が言う。
「俺は来て二週間くらいなんで、これが普通なのか異常なのかわからんが、タキ先生に会えないと寂しいってのは、どういう事かな?」
あっ、って顔をしてウィリアム君が口を抑える。
「お気になさらず、ウィリアム様の冗談にございます」
ルルさんがすかさずフォローを入れてくれて事なきを得た。のかな?
大体、兄の言語習得速度が異常なのだ。今の会話だって異世界語でされたので通じてるとは思ってなかった。
さすがは努力の天才と言われるだけあるなぁ。
「すまない遅くなった、さぁ授業を始めるぞ」
会合で遅れていた先生が帰ってきて、やっとまともに授業が始まりだす。
授業が終わると、兄と共に子羊亭にお仕事に行く。
流石にまだ言葉が不慣れなので、兄は薪割りなどの雑用をやりながら時間を潰し私が帰るまで店の周りに居る。
私のウエイトレスもだいぶ板についてきた、店長やフィル姉ぇとのコンビネーションもバッチリだ。
まだ出産は先とは言え、私がしっかりしないとミミュさんが安心して入院出来ないからね。
今日も無事に、大きなミスもなく仕事を終えた。
「お疲れ様でしたー、お先失礼します」
「おぅ、おつかれー。気を付けて帰れよー」
「コットネー、また明日ー」
「さぁ、兄貴しっかり護衛してくんな」
「ん、帰るかぁ」
兄と学校へ向かい、話をしながら帰っていると、先生が道の先を歩いていた。
人通りもありちょっと遠かったので、気がついては居たけど大声で呼ぶ程でもないと思っていた。
でも私は、その選択に後々後悔することになる。
この日を境に、谷口博巳先生の行方が、わからなくなってしまったからだ。




