第38話 望郷
ここは親の心子羊亭、まずは店長に無断欠勤を謝らないと。
携帯が無いと、こういう時不便だ。
「こんにちは、店長。おとといと昨日はすいませんでした。」
「おおぅ、無事で何より。行方知れずって聞いて、心配したぞ。もう動いてもいいのか?」
「はい、大きな怪我とか無かったんで大丈夫っす」
「コトネー、良かったよぅ」
「心配掛けてごめんねっお姉ちゃん!」
ふざけてフィルさんとガシッと抱き合うと、フフッとどっちからとも無く笑い出す。
奥様のミミュさんは今日は病院かな? 今は居なかった。
そんな時だった、鎧で武装した騎士が店に入ってくると、
「タキ殿は居らっしゃいますか? 学校でこちらに行ったと聞いたのですが、タキ殿はこちらに居らっしゃいますか?」
「あー、はいはいタキです。どうされましたか」
「笹殿が行方知れずとなられたようです、急ぎ騎士団に来ていただきたく」
「そんなまさか、王宮で保護したのにですか!?」
「そこも含め調査をお願いしたいのです」
「わかりました、行きましょう。
コトネさんは迎えが来るまで必ずここにいて下さい。絶対一人で帰ったりしないで下さい」
そう言って、タキさんは騎士と一緒に店を出て行った。
「大丈夫かコトネっ、気分が悪かったら裏で休んでていいぞ」
「コトネ、お迎え呼んで来ようか?」
二人は心配して声を掛ける。
「だ、大丈夫です。ちゃんと働けますよー」
私は強がって答えたけど、声が震えて全然大丈夫そうには聞こえなかったんだろう、フィルさんが学校までダッシュで行ってくれた。
しばらくすると先生とお兄ちゃんが迎えに来て、私は学校に帰る事になった。
帰り道は、重苦しい空気が漂っていた。
先生は何か考え事をしながら歩いていて、ちょっと危なっかしい。
「何処に言ったんでしょうね、笹さん」
「ん? あぁ、あいつ何を考えているんだか」
先生は拳を握りしめ険しい顔をしていた。
学校に帰り着くと、私とお兄ちゃんを残して先生は笹の捜索に出て行った。
「お兄ちゃん、折角これまで通りに戻りかけていたのに…これからどうなっちゃうんだろうね?」
「心配するな、俺が来たからには琴音は必ず守るし、日本へ連れて帰る」
「どうやって? なにか方法あるの?」
「それは今から考えるさ、この世界魔法があるらしいしな」
それが気休めなのはわかってたけど、それでもすがるしかないのが今の私達なのだった。
「じゃ、折角だしここの言葉の勉強でもする?」
「あー、そうだな出来ることからコツコツと、だな」
コツコツと携帯黒板にチョークで単語を書き写していく。
「私ね、もう帰れないかも。でもここでずっと暮らすのも仕方ないかもって思い出してたんだ」
「うん」
「でもさ、お兄ちゃんまで来ちゃって絶対帰らないとって今は思ってるよ。だってそうじゃないと、お父さんとお母さん悲しすぎるじゃない」
「そだな、仕事ばっかでほったらかしなのかと思ってたけど、琴音が居なくなって憔悴しきった母さんや、休日ごとに琴音を探して何足もスニーカー履きつぶす父さん見てると痛ましくて仕方なかったよ」
「うん、だから絶対帰ろうね」
「ああ、絶対に帰ろう」




