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第34話 尾行

 笹が居なくなって、問題を隠し通す事は出来なかった。

 暴力を振うに至る経緯、また失踪された事は、捜索をするためには開示しなくてはならない情報だったからだ。

 さらに笹は今でも食客扱いであり、それに対し暴行を加えた事は騎士団に取って不祥事だった。

 私と谷口先生の奮闘もむなしく、アルベルトさんは謹慎処分になった。


 こんな時でも、授業とお仕事は平常道理やる、その上で捜索活動もする。

 それが谷口先生の方針だった。

 私は、彼が出て来たとして許せるのだろうか? 正直殺されるかと思ったのだ、この状況をいい気味だとさえ思えてしまっている。

 でも寝る間を惜しんで探す先生や、アルベルトさんや他の人達の事を考えると、出て来てもらわないと困る。

 なんとも複雑な気分だ、モヤモヤとする。

 折角お仕事が楽しく、学校も新しくカリキュラムが増えて楽しくなって来ていたのに、水を指す様なマネしやがって、しかも私の下着盗んでた事の罪はなんかウヤムヤにされてしまった。

 段々と腹が立ってきた、私は被害者でそれを助けてくれたアルベルトさんが謹慎で、奴は悠々逃げている。


 そして、私は仕事に行く途中で見つけてしまう、奴を。

 笹はヨボヨボと歩き、人気の少ない住宅街を歩いていた。

 声を掛けたら笹は逃げると思ったので、私はこっそり後を付けて、何処に隠れてるのか突き止めることにした。

 仕事、無遅刻だったのになぁ、これもまた奴のせいだっ!

 奴は尾行されてるのに全く気づく様子もなく、歩き続けると細い路地に入った。

 私は、路地入り口で奥を警戒したが、奴は振り返りもせず進んでいく。

 あまり離されては見失うかもしれないと路地に入った時、頭の周りにだけ黒っぽい雲が現れ、それに突っ込んだ私は目の前が真っ暗になって意識が薄れていった。

 

 

 目を覚ますと、私は縛られて部屋の中に転がされていた。 

 その部屋は石造りで窓は無く薄暗い、石の隙間から僅かに光が差し込むので、何とか色を認識できる。さらに湿気が多く天井から結露した露がピチャピチャと落ちる。

 目を凝らすと笹ともう一人、上半身が半裸で赤褐色の肌にハゲ頭に短い角、下半身は毛むくじゃらでヤギや羊の様な足をしたモンスターが立っていた。 

 奴は笹を虐めて遊んでいるようだった、少なくとも私にはそう見えた。

 肉体的に精神的に追い詰められた笹は、頭を抱え自分の髪を自分で力いっぱい引っ張る。

 それでもモンスターは爪で笹の身体を切ったり突き刺したりし、更に何かをささやき続ける。

 「スマナカッタスマナカッタスマナカッタアァアア、アアァァウアアァァァー」

 ブチブチと音がして、笹の頭からは髪の毛が抜ける。

 バタリと笹は倒れると動かなくなった。

 そんな光景を見て、私はこのモンスターが悪魔であると確信した。

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