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第33話 未遂

 お仕事が終わり、先生が来るまで待つ間、厨房で親父さんとフィルさんが調理するのを眺めていた。

 親父さんの料理は迷いがない、焦げないようにフライパンを片手で振り続けながら、千切りにされた野菜やハーブをもう片方の手で掴むとフライパンに投げ込む。

 フライパンの上では肉や野菜が踊り、片手で皿を用意すると一気に盛りつけ、お玉でフライパンを一回叩くと、カン!と音がして出来上がり。

 さすがは夫婦、フライパンを叩く音で料理を取りに来てお客さんへ運んでいくミミュさん。

 親父さんはチラッとフィルさんを見ると、

 「フィルー、火が強いぞ。カエル肉はしっかり中まで火を通せ」

 「はっはいっ!」

 姉さんのフォローまで、すげぇ~。


 「こんばんはー。遅くなったすまない、佐渡帰るぞー。」 

 先生が迎えに来た、私はカウンターの席からピョコンと飛び降り、ジュースを飲んでたコップを厨房の洗い場に置くと、

 「じゃ、お先失礼しますー」

 と挨拶して帰るのだった。


 「佐渡、お前慣れたなぁ。予想以上の順応性だな」

 「へっへー、お仕事が楽しいのですよ。今のうちにしっかり覚えないと、奥さんが出産の時困りますしっ!」

 「若いのに立派立派! 手がかからなくて良い生徒だな」

 「まっ、日本でも委員長やってましたしー」

 「よっ、委員長!」

 なんか変なテンションで学校に帰り着く。

 「委員長ー、二階に上がったら笹に職員室来るように言ってくれ」

 そう言って、先生と階段前で別れたのだった。

 「あちぃ」

 流石に日本程ではないが建物の中は昼の熱気がまだ溜まってて暑い。

 私は自分の部屋を通り過ぎ、笹の部屋の前まで行ってノックしようとした。

 暑かったのか、ドアは半開きだったのでノックした勢いで勝手に開いていった。

 「え゛っ」

 私はドアの前から部屋の中を見てしまった、笹が自慰行為に勤しむのを。

 しかも、この世界にはあるはずのないブラジャーとパンツをおかずにしていた。

 あれは、1ヶ月以上前に王宮の風呂で無くしたと思っていた私の下着だ。

 私が思考停止して固まっていると、笹は奇声を上げながらこちらに駆け寄ってきた。

 私は悲鳴を上げるより前に顔をぶん殴られた。そして倒れた私に笹は覆いかぶさり私の首根っこを抑えつけた。

 殴られて頭がクラクラしてる所に、首を抑えられて呼吸困難になり、助けを呼ぼうにも声がでない。

 助けて助けて助けて!声がでない。

 助けて助けて助けて!キモチワルイ!

 助けて助けて助けて!タキくん、谷口先生、アルベルトさん、お兄ちゃん!

 助けて助けて助けて!息が苦しいの!

 助けて助けて助けて!キモチワルイ!

 助けて助けて助けて!タキくん、谷口先生、アルベルトさん、お兄ちゃん! 「ぐげぇ」

 カエルの潰れたような声を出して、笹が壁際まで吹き飛んだ。

 いつの間にか宿直室から出て来たアルベルトさんが、笹の横っ腹を蹴り飛ばしていた。

 アルベルトさんはそのままスタスタと笹に歩み寄ると、しゃがみこんでボコボコと殴り始める。

 騒ぎを聞きつけて先生が二階に上がってきた時には、笹はもうぐったりとして意識が無さそうだった。

 私は、笹も無表情で笹を殴るアルベルトさんも、どっちも怖かった。


 その晩、学校から笹の姿が消えた。

 

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