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第31話 ルルの暴走(裏)

 私はウィリアム・ウィリス王子の専属メイドでルルと申します。

 最近王子は貴族の学校を辞めて街の学校に通っております。

 何でも、王から貴族の学校を辞める条件として提示しれた条件だったとか。

 天真爛漫な王子が、堅苦しく血筋や格式ばかりを気にする、貴族学校に馴染めていなかったのは、私も知っておりましたが学校を辞めるまでとは思ってもおりませんでした。

 何はともあれ、好奇心旺盛な王子は異世界の人と過ごすこの暮らしを大層気に入られたのです。

 素朴で飾り気のない、この学校の暮らしで王子が明るく笑うのを見ると、私も無上の喜びを感じます。


 さて、少しだけ時間を遡りますが、私と王子の出会いは6年前、王子が10歳になられた年でございましたる

 私はその頃は女だてらに騎士をしておりまして、王子の護衛として暫らくお仕えすることになったのです。

 私は、その王子のお姿に運命を感じ、騎士団を抜け専属のメイドとしてお仕えする事にしました。

 いささか、急な申し出でしたので、反対も多ございましたが、全ては実力で排除致しました。

 

 そして今、王子はどうも意中のお相手が居るように思われます。

 今まで王子に近づかんとする不貞の輩は全て排除致しましたが、今度ばかりは王子から好いているようなのでございます。

 ここはルルは涙を飲んで、王子の恋を全力てサポートするべきなのでございましょう。

 お相手は、こちらの世界の年齢に直すと16歳の佐渡 琴音様。

 王子もご自分と同じ歳頃の娘が良いのでございましょう。

 今まで、お菓子のお替わりを人にしたりしなかった王子が、自ら催促をしておりました。

 幸い材料がありませんでしたので、私がレシピを聞き出し後でお作り致すことになりましたが、初めての事でしたので私も動揺してしまいました。

 

 思えば、琴音様は誰にでも気軽に話をし、王子の事をウィリアムくんと呼ぶなど、貴族学校には居ないタイプの娘でした。

 そんな彼女に、王子が惹かれても何ら不思議はないのかもしれません。

 私は、そんな彼女のココロウチを探るべく、放課後コトネ様に話しかけたのだ。

 部屋に案内された私は、こう切り出した。

 「コトネ様、ウィリアム王子の事をどのように思われますか?」

 コトネ様は恥ずかしいのか少し首をかしげる、こういった仕草は大変少女らしく可愛らしい。

 「えーと、一緒にいると楽しいよ。良く話しかけてくれるし」

 遠回しに一緒に居ると楽しい、つまりは一緒に居たいと言ってきた。

 両思いか、私は、

 「そうですか」

 と胸が締め付けられ言うのが精一杯だった。

 一呼吸置いて、気を落ち着かせると、

 「それでは、ウィリアム王子とお付き合いされるのもやぶさかではないのですね?」

 と聞いてしまう、私はきっとこの少女に嫉妬し見苦しくもイヤガラセをしているのだ。

 この私にハッキリと言えるものなら言ってみろと。

 「え? それは一体どういう話しの流れから…」

 彼女は話をそらせようとする。

 私は嫉妬の鬼だ、ハッキリと言うまで逃しはしない。

 「ウィリアム王子は、どうやらコトネ様に気があるご様子、その真意を」

 その時、バンと音を立てて扉が開き、振り返ると王子がいらっしゃった。

 私の醜い嫉妬からの詰問を聞かれていた、私はもう王子に嫌われてしまう。

 そう思うと、涙が溢れて止まらなかった。

 「ルル…、何をしてるの」

 王子の普段からは考えられない抑えた声。

 「こっここっこここ、これはですね」

 情けないと思いつつも、もう呂律が回らない。

 「ルル帰るよ」

 そう言って、くるりと踵を返した王子の後を、

 「は、はい。申し訳ありません」

 そう言いながら付いて行くことしか私には出来なかったのでございます。

 

 屋敷に戻ると王子は人払いをして、私と二人だけになりました。

 「ルル、説明をしてくれるんだろうね?」

 私は心臓を鷲掴みにされるような思いでした。

 「申し訳ございません」

 「ルル、今求めているのは謝罪じゃ無い、説明だよ」

 「申し訳ございません」

 私はもうこの場から逃げたい一心で謝りました。

 「ルルはどうして、あんなことを思ったの?」

 あんな事とは、私の嫉妬の事だろうか? それとも嫌がらせをしようと思ったことだろうか?

 「私の不徳の致す所でございます」

 「あー、言葉が足りなかったね。なぜ僕がコトネさんを好きって事になっていたか?って事だよ」

 おや? なんだかおかしなセリフが聞こえる?

 「好きではないのですか?」

 「好きか嫌いかで聞かれれば、好きだ。しかしだからといって、付き合うとか言う話ではないんだよ」

 「しかし、琴音様とは親しくお話をされているようでしたし、女性にお菓子のお替わりを要求するなど初めて見ましたが」

 「コトネさんは親友達の共通の友人でもあり、クラスメイトだ。話す機会は多くなるよね。それにお菓子だって美味しかったから遠慮せずお替わりがあれば欲しいと言っただけだよ」

 あ、あれ?  私は勘違いで大変なことをしたような気がして来た。

 自分でもわかる、今渡しの顔から血の気が引いて青い顔をしているだろう。

 「それで言ったら、一番会話してるのはルルだし、お菓子のお替わりを要求されるのも、わがまま言われるのもルルだろう」

 「そ、そうでごさいます。その通りでございました」

 「だいたいね、コトネさんはタキが好きなのは、誰の目にも明らかでしょうが、ルルは歳の割にその辺り鈍いよね」

 「とっ、歳はあまり関係ない事かと思いますが、流石にそのように言われては私も傷つきます」

 「いいや、今日は言うね! 僕が好きなのはルルなんだよ、僕が成人したら後ろではなく横を歩いて欲しいんだよ」

 「!?」

 言葉に詰まる私に、

 「だから、しっかりしてよね」

 「はっ、かしこまりました」

 きっと私は今、青い顔から一転して真っ赤な顔になっているな、王子の赤い顔を見ながらそう思った。

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