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第30話 ルルの暴走(表)

 私は食堂で教わった、手軽で簡単でも超絶美味しいナミロの実のパイを作ってお昼ごはんのあと、みんなに配って回った。

 ナミロの実はイチヂクの様な果物で、生だと水っぽいけど火を通すと甘みが増すのでパイに最適で、しかも栄養価も高いのだ。

 「おー、うまいうまい。食堂に働きに出した甲斐があったな」

 「先生、それひどくないですかぁ」

 「でも、本当に美味しいですよコトネさん」

 「タキさんになら、またいつでも作りますよ」

 タキさんの胃袋を掴む作戦はひとまず成功なのだ。

 ウィリアムくんは大層気に入った様で、てこてこと駆け寄ってきた。

 「コトネー、これまだある?」

 「ごめーん、今日はこれだけしか」

 「そっかー。ルル~これ作れる?」

 「はい、後ほどレシピを聞いて置きます」

 後でルルさんに簡単レシピだって事は口止めしておこう。

 

 午後の授業が終わり、部屋に戻ろうとしていると、珍しくルルさんだけが私に話があると言ってきた。

 私は部屋に案内してお話を聞くことにした。

 「コトネ様、ウィリアム王子の事をどのように思われますか?」

 唐突な問いに質問の意図が理解できなかったが、

 「えーと、一緒にいると楽しいよ。良く話しかけてくれるし」

 「そうですか」

 なんかルルさんの息が荒く、汗も凄い気がする。

 なにか地雷を踏んだのだろうか?

 「それでは、ウィリアム王子とお付き合いされるのもやぶさかではないのですね?」

 「え? それは一体どういう話しの流れから…」

 「ウィリアム王子は、どうやらコトネ様に気があるご様子、その真意を」

 バーンと扉が開くと、そこにはウィリアムくんが居た。

 「ルル…、何をしてるの」

 真っ青な顔をしているルルさん、

 「こっここっこここ、これはですね」

 「ルル帰るよ」

 珍しく抑揚のない抑えた声でウィリアムくんが言う。

 「は、はい。申し訳ありません」

 とルルさんは半べそかきながら部屋を出て行った。

 残された私は、一体何か何やら…

 あ、仕事の時間が! とりあえずお仕事に出かける私だった。

 

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