第27話 ウエイトレスはじめます
結局二人をなだめてたら、昼休みは終わってしまった。
午後の授業も終わり、私はこれから初の仕事に向かうのであった。
初日と言うこともあって、谷口先生が付いてくる。
「そういえば、面接とかしてないですけど大丈夫なんですか?」
「あそこはよく行く顔見知りだからだな、それにコッチの世界は履歴書なんて無いからな、紹介状かツテで就職がほとんどだろうよ。いままで食事に行ってたのが面接みたいなもんだ、ちゃんと残さず食べてくれてたし、ちょっと騒がしいけど元気なお嬢さんだウエイトレスには丁度いい、って言われてたぞ」
「これを見越して、お残しをさせなかったのなら、先生は軍師か何かになれますよ」
「残念ながら、普通に主義だ。でもそんなことも含め、色々と経験出来るんじゃないかな?」
お店につくと、これから働くための指導をうける。
店長兼コックのスミスさん、奥様のミミュさん、調理見習いのフィルさんの3人で、テーブル3っつとカウンターのお店を回している。
そしてこのたび、奥様のミミュさんがご懐妊されて、人手が必要になったわけなのだ。
私の役目は、注文を取るのと料理の配膳、あと会計だ。
調理見習いのフィルさんは両方の忙しい方を手伝いってくれるそうで、とりあえずは受注と配膳をメインで頑張るのだ。
飲み物の種類、注文の取り方、料理の種類に料理の値段、会計の計算方法など覚えるものは沢山あった。
変動相場はやっぱり不便だが、銅貨と銀貨だけ覚えておけば大丈夫そう、金貨で支払いは断っていいとまで言われてる。
初日は、仕事をしてるのを見て流れを感じてもらえればいい、と言われて先生と 二人カウンターの隅で飲み物を飲みながら、店内の様子を見ていた。
はじめはのんびりと雑談を交え仕事の話をしていたが、夕飯時になると急にお客さんが多くなり、みんなテキパキと動き無駄なく料理を提供していく様を見て、私は真似できるかちょっと不安に思ったりもしたのだ。
幸い、慣れるまではミミュさんもお仕事を続けると言われてるのが救いだ。
「明日からよろしくお願いします」
そう言って、店を出る頃には辺りは真っ暗になっていた。
「そういえば、いま少し物騒な事が起こってるらしいな。佐渡帰りは必ず迎えを寄越すから、一人で返ろうとはするなよ」
「はい、お店で誰か来るまで待ってます」
これから毎日、夕方から夕飯の混雑が終わる宵闇の頃まではお仕事の時間となったのだ。