第22話 期待と不安
お昼の時間になり、みんなとお昼ごはんを食べていると、午前のイライラもだいぶ和らぐのだった。
お昼をモグモグと食べ口が動いていても、心を占めている事が私にはあった。
悩みの種と言ってもいい、私は今日それに決着を付ける心づもりするのだった。
そんな私の気持ちも知らず、
「コトネが難しい顔をしてご飯食べてるよ?」
「コトネさん、何か苦手なものが入ってましたか?」
「好き嫌いはイカンぞー、佐渡」
みんな好き勝手言うのだった。
午後の授業が終わり、皆が席を立つ。
ここからが私の戦場だ、
「タキ先生、もう少し勉強したいので教えてもらえますか」
「いいですよ、何処ですか?」
よっし、掛かった。
何時もなら谷口先生あたりが「じゃ俺が教えるからタキ先生は・・」とか言いそうだが、今日は笹の方に気が向いているのだ。
しばらく、他の生徒の気配が無くなるまで粘ると、私は話を切り出す、
「タキさん、少しお話を聞いてもらっていいですか?」
「ん? 何でしょう、相談ですか?」
私は懇親の勇気を振り絞ってポツリポツリと話し始めた。
「タキさん、いつも優しくしてくれてありがとう」
心臓の鼓動が早くなる、まだだ、まだ落ち着け、
「はじめてあった時も、その…助けてくれてありがとう、今生きてられるのは二人のおかげだし、その」
あ、グダった。もう少し考えて喋ろう自分!
「私はそんな貴方が好きになってしまいました」
もう、前の文と繋がってないな、我ながら酷い。
「こ、コトネさん?」
「私と、お付き合いしてください」
と告白した、私はずっと心に秘めるとか無理なタイプなのだ。
二人の間には沈黙流れる、伝わったかな? もう一回言ったほうがいいかな?
しばらく、真っ赤な顔でうつむいていたタキさんだったが、
「ごめんなさい、コトネさんのその気持はおそらく本物じゃないんです。
僕が夢に介入して、記憶を上書きしたから、僕が助けた事にしちゃったから、そう勘違いしちゃっただけなんです。
僕は本当は別な結末に改変するべきだった、そう出来なかったのは僕の未熟さと、僕のエゴのせいなんです、ごめんなさい。
だから僕がコトネさんと付き合う何て事は、ム・・・・」
タキさんの言葉はそこで途切れたが、私が望まない結末だと言うことは解った。
私は椅子から立ち上がることも出来ず、握りこぶしを太腿に押し付け、下を向いて泣くのを我慢していた。
タキさんは席を立ち、廊下に出る扉に向かって歩いて行く。
机の上には、今度はよだれじゃなく本当の涙の雫が落ちて、丸いシミを作っていた。
最後にもう一度だけ、ごめんなさいと言ってタキさんは教室を出て行った。