第21話 コトネはお怒りのようです
お風呂を借りた後の学校への帰り道、たくさん先生に叱られた。
ルルさんが投げて、先生の頭をカスって飛んでいった洗面桶は、壁に当たると粉々に砕け散って、生きた心地がしなかったそうだ。
正直すまんかった、申し訳ないと思ったのだ。
学校に帰る前に日が暮れたので、今日は食堂で夕飯にした。
帰ってあとは寝るだけって楽でいい。
昔は、そんなのが日常だったのに、私も鍛えられたものだ。
部屋に帰ったら、洗濯物を蔓で編んだカゴに移す。バックに入れっぱなしはカビると思ったからだが、そこで気付いてしまった。
下着がナイ、何処で落とした!
もう人に見られるとかそういった事より、この世界ではもう手に入らないであろう、化学繊維の下着が無くなったことへのショックが大きい。
バックに穴も空いてないのに、チクショウメェー!
ブラが無いから明日から、おっぱいプルンプルンだよ。
チクショウメェー!
本当は揺れるほど無いよ、チクショウメェー!
散々怒鳴り散らして見たものの、無いものは無いので諦める。
胸もほうじゃないぞ、まだそっちは期待してる。
次の日、授業が始まる前に一人の男子生徒が紹介された。
笹 喜多郎。
日本からやって来た転生者で、最も早くこっちに呼ばれた人。
年齢は18歳、やや小太りの丸っこい体型に黒縁のメガネ、正直な印象は地味で不気味。
日本では高校生のはずだが、谷口先生の受け持ったクラスの卒業生で、二人は顔見知りなのだった。
つまりは私にとっても先輩ってことになるのか。
今日から異世界語を習うことになるのだが、日本語から異世界語なのは私と笹さんだけなので、机を並べ私と一緒に学ぶことになる。
最初の方こそ真面目に受けているようだったが、退屈になったのか明らかに手抜きしだす。
折角タキ先生が教えてくれているのに、何様だこの野郎と思わず睨んでしまったが、それを機に私にチョッカイ出してくるようになる。
肘でつついたり、足で椅子を蹴ってきたり、己は小学生かと頭に血がのぼる。
そろそろ手が出そうと思っていたら、タキ先生と谷口先生が交代して授業に当たった。
笹は谷口先生のことは、怖いのか大人しくなった。
折角楽しい学校生活だったのに、コイツが来ただけで調子が狂う、私のイライラは募るばかりだった。