第20話 命の洗濯
王宮にお風呂を借りに参りましたっ。
しかし、湯が湧いているわけでもないので、時間は決まっている。
そして偉い人が入った後の残り湯をお借りするわけで、場合によっては待たされる。
谷口先生と二人で王宮に行き、風呂を借りに来たとは言えないので、「ウィリアム王子にお呼ばれしてます」と告げて入っていく。
なんか人んちに風呂だけ借りに来るって、やましい訳でもないのになんかそわそわする。
「先生、なんか話題無いんですかぁ、無言だと居心地が悪いというか」
「落ち着け、大体ここでべらべら喋ってて誰か来たら、その時の方がバツが悪い」
応接室に待たされた私たちは、借りてきた猫二匹よろしく、大人しく無言で待つのだった。
「先生ー、コトネー、イラッシャイ」
ウィリアム君とルルさんがやって来て、私らも緊張が少し緩む。
「もう挨拶くらいなら完璧だなぁ」
「ですねぇ、日本語で出迎えられるとは思ってませんでした」
と言うと、かなり気分良さ気なウィリアム君。
「今空いてるからコトネ、ドーゾ」
と言ってルルにも異世界語で、
「コトネの案内ついでに入っておいで」
と言っているみたい。
私はルルさんが着替えを取ってくるのを待って、一緒にお風呂に行った。
流石は王宮の石鹸、香料が入ってて泡立ちも良い。
学校の無添加洗濯石鹸とは違うな。
足を伸ばして湯船に浸かっていると、ルルさんも入ってきたのだが、色々と大きかった。
背が高くて筋肉質、ビーナスではなくワルキューレ系の綺麗さ。
無駄なお肉など胸以外付いてないように思える、そして二の腕!私の太腿くらいある。
お城のメイドって、そんなにハードワークなのか?
実のところルルさんは、しっかりウィリアム君の後ろで授業を聞いていて、日本語もできる。
「ルルさん実は、日本語かなり解ってますよね?」
「!?」
絶句してる。
「いや、ピクニックでお皿何枚出します? って聞いたら即座に5枚ってジェスチャー返してましたし」
「バレてましたか」
「やっぱり、あるじ様に気を使ってですか?」
「イエ!ウィリアム様はそのような器の小さな方ではありません。が、しかし」
私は少しカマをかけてみた。
「じゃ、好きな人に恥はかかせられないとか?」
「キュッ、すす好きなどとは、思って・・い、いー」
当たったらしい、キュッって何だろう。
「お似合いですよ」
と言って風呂を上がった、ルルさんは顔真っ赤でまだ湯船に浸かっていた。
さてと、私は身体を拭いて、洗濯済みの衣服に着替える。
汚れた服はトートバックに纏めて入れて、肩に掛けると応接間に行った。
「お先頂きましたー、いい湯でしたよー」
「おっそうか、じゃ俺も行ってくる。佐渡一人ではまだ帰れないよな?」
「まだ無理ですー、待ってますよ」
すると、ウィリアム君がカードゲーム持ってきて、
「コトネ、コレヤロウ」
「オーケー、ヤロウ」
片言が伝染った。
なんか忘れてる気がするけど、何だろう。
必要になったら思い出すだろうと思って、ウィリアム君からゲームのルールを聞いていたら、先生とルルの悲鳴が遠くで聞こえた。
ヤベェ、まだ入ってるって言うの忘れてた。