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第15話 悪夢

 さてお昼食べ過ぎたので、夕飯は簡単に済ませ、勉強に励む。

 早くみんなと、通訳無しで会話したいからねっ。

 いい時間になったので、先生には今日から一人で寝ると伝えて部屋に戻り布団につく。

 ちょっとカビ臭かったこの布団にも結構慣れてきたな、と思っているうちに意識が遠くなり眠りについた。


 -----------------------------

 私は、また草原に居た。

 今度も息を殺し、妖魔の群れから隠れていた。

 震える手に震える手を重ね、奥歯がカチカチとなるのを抑えるため歯を食いしばっていた。

 低い草むらに、必死で身を隠すが、お尻や肩がはみ出して、見えていないか気がかりでしょうがない。

 見上げれば、やっぱり草の茂る合間から青い空が見える。

 私は諦めにも似た感情で、この後の展開を予想した。

 「ギャギャッ」

 と妖魔が警戒の声を上げる。

 見つかったかと身を固くするが、寄ってくる気配はない。

 そして戦う音がする、アルベルトが妖魔と戦っている。

 そしてまた、いつの間にか、私の手には包丁が握られていた。

 アルベルトは4匹の妖魔に囲まれ、それでも善戦していた。

 妖魔の浅黒い皮膚を切り裂き、どす黒い血が噴き出る。

 その時、アルベルトの気がつかない真後ろに、一匹の妖魔が武器を構え現れた。

 私は気がついている、助けなければ!

 でも、足は動かない手も動かない、なのに目だけはそれをしっかり追っていた。

 「うしろっ! アルベルト後ろにゴブリンが!」

 しかし、声も虚しく、後ろから腰の辺りを刺されて身を捩るアルベルト。

 他の妖魔も追撃し、アルベルトを解体しにかかる。

 声を上げた私は、草むらから立ち上がっていた。

 回りには妖魔の群れ、私は正面から肩を掴まれ、もう片方の手に握られたぼろぼろに錆びた短剣を胸に突き立てられた。


 ドンドンと扉を叩く音が遠くで聞こえる。

 「佐渡っ、佐渡! おいこっちを見ろ、佐渡!」

 先生の声だ。

 慌てているな。

 私は虚ろでドロンとした目を先生に向ける。

 私は死んだのではなかったっけ? そんな気がしていただけなのか?

 「佐渡、起きろ。大丈夫だから目を覚ませ」

 ほっぺたをペチペチと叩かれ、段々頭がはっきりしてくる。

 ランプに照らされた、先生の顔だ、下から照らされてホラーみたいになってる。

 また、全身汗だらけ、布団蹴飛ばして足元に丸まっている。

 そして汗にしては、お尻の下が重点的に濡れている。

 「うわぁー嘘だ、嘘だと言って!」

 慌てている私をまだ錯乱してると思ってる先生が、

 「大丈夫だ、大丈夫もう怖くない」

 と慰める。

 私としては早めに退出して頂きたいのだけれど、そんな事は言えるはずもなく。

 結局バレた。


 私は着替えて職員室にいた。

 先生は、

 「トッテオキなんだからな、いつも有るとは思うなよ」

 と、前置きしてからココアそっくりの飲み物が入ったカップを、私に手渡した。

 ズズッ

 「おいしい、おいしいです」

 私はどうしてしまったんだろう、夜が怖い、今は寝るのが物凄く怖い。

 お昼はあんなに、みんなと楽しくやっていたのに、今は心が冷えきって鉄の玉になったようだ。

 重く、冷たく、どす黒く。

 頭が狂ってしまったのかもしれない。

 そんな考えを遮るように、

 「佐渡、今のお前はちょっと心に怪我をした状態なんだ。

 だから、それが治ればいつものお前に戻れる。

 ちょっとだけ時間をくれ、必ず直してやる」

 先生がそういうので、私はしばらく我慢して、現状を受け入れることにした。

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