第12話 授業を受けよう
私は、夢の話を先生に話し終えると、少し楽ななった気がした。
それで、部屋に戻ると、身体を拭いて乾いた服に袖を通した。
朝食用に食堂で作ってもらった、固いパンを噛みちぎり咀嚼すると、水でお腹に流し込んだ。
今日は初日なので、早めに一人用の黒板とチョークを持つと、一階の教室へ行くのだった。
「おはようございます!」
と、私は元気いっぱい挨拶をしたが、
「ん、おはよう」
と、谷口先生しかまだ居なかった。
「あと3人くるから、しばらく待ってろー」
と言われて、適当に席につく。
元騎士団詰め所を改築した学校なので、ここは騎士団の会議室だったのかな?
しばらくすると、アルベルトさんが来たので
「おはようございます」
と言って手を振る。
「ヨロシク」
と返される、多分まだアレしか知らないんだな。
今日は私服だ、鎧姿しか見てなかったので、ちょっと意外だった。
更に少しすると、綺麗な服装の男子が入ってきた、メイド付きで。
男子の方は人の良さそうな感じで、ちょっと印象が薄かった。
と、言うのもメイドさんの方が、インパクトが大きかったからだ。
身長がアルベルトさんとほぼおなじ。
慎ましやかにしているけど、先の広がったフリル付きのスカートや、肩のフリルのせいで、羽を広げた孔雀の用に、視界を占めていた。
大きい・・・でもスタイルはスラリとしていて、若干切れ長なツリ目で妖艶な大人の女性を感じた。
男子は私の隣の席に着くと、
「ウイリアムです。よろしく」
と微笑む。
私も「よろしく」と返すが、座らずに男子の斜め後ろに、立ったまま不動のメイドさんから、若干睨まれた気がした。
ウイリアム君は、
「こちらはメイドのルル、ルルも失礼のないようにね」
と釘を刺されて、
「失礼しました、ウイリアム様のお付きでルルと申します」
と、挨拶されたんだけど、なんだかなぁ、まだ目が厳しい気がする、コワイよー。
そして、ルルは、
「谷口様、笹様は今日もお休みになるそうです」
と、告げると谷口先生は一瞬巌しい顔をしたが、
「よし、授業を始める」
と、つげたのだった。
流石は現代国語の先生、異世界語の授業も分かりやすい。
でも、最初は暗記することが多くて大変だ。
私以外の二人は、異世界語から日本語、なのに対して私は、日本語から異世界語なのでちょっと自習が多くなる。
でも、最初はほぼ単語の丸暗記なので、ひたすら黒板に書いて消して書いて消してをしていた。
昼休みになると、私は中庭に急いで布団を取り込む。
先生も干していたのか、布団を取り込んでいた。
あれは私の寝汗のせいか、すみません先生。
物干し台の影の位置を、地面にチョークで書いて追いかける。
影が一番短くなって、伸び出した頃を見計らって腕時計の12:00に合わせる。
あとで先生の時計も、合わせてあげよう。
教室に行くと誰も居なかったので、食堂に行くと、メイドのルルさんがお昼を用意してくれていた。
固いパンを薄切りにして、チーズと焼いた薄切り肉と野菜のサンドイッチ。
美味しかった、流石はメイドさん。
午後は2時頃まで授業をして終わりだった。
放課後が長いのは、他にやることが一杯あるからだ。
夕飯の買い物、夕飯の準備、洗濯も全て手洗い、掃除は箒で履いて雑巾水拭き。
電気が無い生活は、とにかく不便で時間が掛かる。
家事が大変なので、共働きとかこの世界では無さそうだ。
学校生活一日目は、こうやって穏やかに過ぎていったのだ。
夜は恥ずかしながらまだ怖くて、先生の部屋に布団を持って行って寝てた。




