第11話 真夜中の夢
私は用を済ませると、トイレから出た。
先生は、暗闇の中でコックリコックリと船を漕いでいた。
「先生、起きて下さいー。戻りますよー」
「ふぁ! ああ、すまん寝てた」
こんな所でも寝れる、心臓の強さが羨ましいよ、まったく。
「見れば解ります、戻りますよっ」
「分かった、分かった」
先生はまだ眠そうに、ランプを持った私の後ろノロノロと付いてくる。
部屋の前に着くと、
「やっぱり、先生の布団借ります!」
と宣言して、部屋に入ると先生の寝床を奪って寝る事にした。
うん、自分の部屋まで帰る勇気無かったからね。
先生は、やれやれと言った表情で椅子に座って、机に突っ伏すとそのまま寝てしまった。
私は、ランプの火を消すと柔らかい布団で眠りについた。
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私は、まだ草原に居た。
息を殺し、妖魔の群れから隠れていた。
震える手に震える手を重ね、奥歯がカチカチとなるのを抑えるため歯を食いしばっていた。
低い草むらに、必死で身を隠すが、お尻や肩がはみ出して、見えていないか気がかりでしょうがない。
見上げれば、草の茂る合間から青い空が見える。
もっと濃ゆく茂って私を隠してくれればいいのに、と苛立つ。
「ギャギャッ」
と妖魔が警戒の声を上げる。
見つかったかと身を固くするが、寄ってくる気配はない。
そして戦う音がする、アルベルトが妖魔と戦っている。
いつの間にか、私の手には包丁が握られていた。
アルベルトは4匹の妖魔に囲まれ、それでも善戦していた。
妖魔の浅黒い皮膚を切り裂き、どす黒い血が噴き出る。
その時、アルベルトの気がつかない真後ろに、一匹の妖魔が武器を構え現れた。
私は気がついている、助けなければ!
でも、足は動かない手も動かない、なのに目だけはそれをしっかり追っていた。
後ろから腰の辺りを刺されて身を捩るアルベルト。
他の妖魔も追撃し、アルベルトを解体しにかかる。
その時、私は肩を引っ張られて・・・
「佐渡っ、佐渡っ!」
目が覚めた。
先生の声だった。
放心している私に、先生は、
「いきなり叫んで、痙攣しだしたから起こしたぞ。大丈夫か?」
「あー、はい、怖い夢を見ました」
気が付くと、私は汗びっしょりで布団も蹴ったくったのか、丸まって足元に飛んでいっていた。
「そんな心配そうな目をするな、大丈夫だ。
話してみろ、どんな夢だったって?」
私の頭に手をおいて、先生は話を聞いてくれたのだった。




