書きだし.me即興小説02
「あなたのこと、好きでした」
同じクラスの佐藤さんが僕にそう言った。
放課後の体育館裏。ついに俺にも春が来たようだ。
佐藤さんは色白、髪は長めのストレート。よく本を読んでいるのを見る。物静かで大和撫子な感じ。
俺のストライクゾーンど真ん中だ。当然断るわけはない。
「あっ……あう」
しかし突然のことに驚いて声がでない。
「どうしたの?」
佐藤さんが尋ねる。
おかしい、選択肢が出ない……。
いままでの経験からすると女の子と話した際には選択肢がでるはず。
三択とか四択とか違いはあるけど、それを選んでストーリーが進むって流れだ。
「アッアノー、センタクシガネ……ヘヘッw」
「せんたくし? わたしじゃダメってことですか?」
「ソッソウジャナクテー……ヘヘッw」
やばい、選択肢早く出てくれ。ヤバい奴だと思われる。汗とかもすごい。
「いっつも鈴木君は物静かで、誰にも媚びない感じがして、かっこいいと思っていたんです」
「オッォレモー、ソウオモウヨ……フヒッw」
「え?」
「イッイヤー、チガクテソノー……」
選択肢が出ないせいでわけのわからないことしか喋れない。
しょうがないから選択肢の出現は諦めて女子と喋ったことを思い出そう。
―――
「アッ、アノー、チーズバーガーとファンタグレープ。Sサイズで」
「はい。こちらでお召し上がりですか? 」
「ヒッ、ヒャイ」
―――
「鈴木君?」
「ヒッ、ヒャイ!」
全く役に立たなかった。
汗とかもめっちゃ出る。目が回って来た。
しかしこんなチャンスはない。
ええいままよ!
俺も好きだと伝えよう
「サッ、佐藤しゃん! 」
「はっ、はい! 」
「僕も佐藤さんの色白黒髪ストレートロング読書好き属性役満でよく昼休みとかよしもとばななよんでるところとか虫とかでるとうひゃぁって言うところとか普段はカチっとしてるのによるコンビニ行くときはへんなアディダスのパチモンのスウェットきてるところとか家庭科の調理実習で具とかめっちゃ大きくて雑に切るところとか大好きです。なんかときめきらりメモリアルの藤田さんに似てるよね。あのしっかりしてるのにちょっと抜けてて。あーあの子の攻略難しかったなぁー。勉強は勿論、体育とルックスのステータスも重要なんだよねー。最初の一年はひたすら勉強してさぁ~……」
それからの記憶は僕にはありません。
佐藤さんとは付き合えませんでした。