第１９代 原敬内閣
更新遅れました。ゆっくりですが、１話１話更新していきます。今後もよろしくお願いします。
第１９代 原敬内閣
在任期間１９１８年９月２９日～１９２１年１１月４日（１１３３日）
国務大臣
内閣総理大臣 ⑲ 原敬
内閣総理大臣臨時兼任 内田康哉（１９２１年１１月４日～１３日）
外務大臣 33 内田康哉
内務大臣 33 床次竹二郎
大蔵大臣 24 高橋是清
陸軍大臣 26 田中義一
27 山梨半造
海軍大臣 22 加藤友三郎（前海軍大臣）再任
司法大臣 26 原敬（兼任）
27 大木遠吉
文部大臣 33 中橋徳五郎
農商務大臣 31 山本達雄
逓信大臣 29 野田卯太郎
鉄道大臣 ① 元田肇（１９２０年５月１５日鉄道省設置）
内閣書記官長 21 高橋光威
◇参考
ウィキペディア『原内閣』https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8E%9F%E5%86%85%E9%96%A3
首相官邸ＨＰ『原内閣』http://www.kantei.go.jp/jp/rekidai/kakuryo/19.html
歴代内閣に関するデータベース『原内閣』http://www.geocities.jp/since7903/Taisyou-naikaku/19-Hara-Seiyukai.htm
主な出来事
１９１８年 ９月 ・原内閣成立
１０月 ・森永ミルクチョコレート発売
１１月 ・土方久元元農商務大臣死去
１２月 ・大学令公布
・第４１議会招集
１９１９年 １月 ・パリ講和会議
２月 ・
３月 ・朝鮮半島で三・一独立運動
・日本の大審院で信玄公旗掛松事件の判決が言い渡され、原告の勝訴が確定
・シベリア出兵: イワノフカ事件おこる。
４月 ・日本で関東軍司令部条例公布（関東軍設置）
・堺利彦・山川均らが「社会主義研究」創刊
・パリ講和会議で中国山東省のドイツ利権に関する日本の要求が承認
５月 ・中華民国で五・四運動
・パリ講和会議で赤道以北の旧ドイツ領を日本が委任統治することに決定
・日本で衆議院議員選挙法改正（3円以上の納税者に選挙権）
・カウツキー「資本論解説」日本語訳
・ 渡辺国武元大蔵大臣死去
６月 ・
７月 ・カルピス販売開始
・寛城子事件で日支両軍衝突
・板垣退助元内務大臣死去
８月 ・田辺元が西田幾多郎に招聘され、京都帝国大学文学部助教授に就任
９月 ・
１０月 ・
１１月 ・食品工業株式会社（現在のキユーピー）設立
・ 寺内正毅前内閣総理大臣死去
１２月 ・第４２議会召集
・福建省恵安県漁民である郭合順ら３１人が嵐に遭って遭難し、日本帝国沖縄県八重 山郡尖閣諸島に漂着
１９２０年 １月 ・国際連盟成立
・ヴェルサイユ条約発効
・森戸辰男東京帝大助教授が筆禍により起訴され休職（森戸事件）。
・大日本帝国、国際連盟へ正式加入
・東洋工業（後のマツダ）設立
２月 ・日立製作所設立
・東京で普通選挙大示威行進が行われる。
・第１回東京箱根間往復大学駅伝競走（箱根駅伝）開催
３月 ・ニコライエフスク（尼港）でソビエト連邦のパルチザンと大日本帝国陸軍が交戦。
・日本で株価が大暴落し、戦後恐慌が起こる。
・鈴木式織機（後の鈴木自動車工業→スズキ）設立
・平塚らいてう・市川房枝らが新婦人協会を結成
４月 ・王世子李垠と方子女王が結婚。
５月 ・東京の上野公園で日本最初のメーデー開催
・第１４回衆議院議員総選挙
・労働諸団体が労働組合同盟会を結成
・ニコラエフスクの共産パルチザンが、大日本帝国陸軍守備隊（第１４師団歩兵第２ 連隊第３大隊）及び日本人居留民と反革命派ロシア人を全員虐殺する（尼港事 件）。
６月 ・第４３特別議会召集
・柳宗悦、論文「朝鮮の友に贈る書」（「改造」）。朝鮮総督府の政治の不正を謝 罪。
７月 ・阪神急行電鉄により、神戸本線・伊丹線開業。
・八八艦隊計画案が議会を通過
８月 ・
９月 ・日本海軍の巡洋戦艦「榛名」の１番砲塔内で榴弾破裂事故が発生し、１５名の死傷 者を出す。
１０月 ・日本最初の国勢調査実施
・末松謙澄元内務大臣死去
１１月 ・ジュネーヴで国際連盟の第1回総会開催
・八八艦隊計画の第一号艦「長門」竣工
・京都赤旗事件
１２月 ・日本社会主義同盟結成（大杉栄・堺利彦ら）
・第４４議会召集
１９２１年 １月 ・
２月 ・
３月 ・日本の皇太子裕仁親王（後の昭和天皇）がヨーロッパ歴訪に出発。
４月 ・国有財産法・借地法・借家法公布。
・日本でメートル法公布
・赤瀾会結成（日本初の女性による社会主義団体）
５月 ・旧区制廃止、旧区に該当していた県庁所在自治体などが市制施行。
６月 ・東京市電運転手連続殺傷事件が起こる。
・臨時国語調査会制発布（会長森鷗外，委員上田萬年ら）
７月 ・ラッセル来日（ 改造社の招聘）
８月 ・
９月 ・大塚製薬工場（大塚グループの源流会社）設立
・大日本蹴球協会（後の日本サッカー協会）創立
・軍備縮小同志会結成（ 尾崎行雄・吉野作造ら）
１０月 ・ 天藤製薬株式会社（当初の社名:天藤薬化学研究所）を会社設立。
１１月 ・原敬首相が東京駅で暗殺される（原敬暗殺事件）。
・原内閣総辞職。
◇参考
概要
さて、今回の歴代内閣考察は原内閣です。この内閣は近代史において重要な内閣となっています。何といっても史上初の本格的政党内閣だからです。前に第１次大隈内閣の時にそのあたりの説明をしました。原内閣は、外務大臣、陸軍海軍両軍部大臣以外の閣僚が立憲政友会の党員によって組織されています。大正時代という民主主義の時代をまさに象徴すべき内閣です。
では、この史上初の原内閣は大衆の期待を背負ってどのようなことをしたのでしょうか。見ていきたいと思います。
まずは、高等教育の拡充です。それは、１９１８年に公布、翌年に施行した大学令を見ればわかります。これまで私立の大学は認められていませんでした。しかし、原は旧帝国大学ぐらいであった大学を増やして高等教育に多くの人が受けられるようにするために私立大学を解禁します。これが、大学令です。これ以前は私立大学はいわゆる専門学校扱いでしたが、大学に昇格します。
以下が、http://www.geocities.jp/nakanolib/rei/rt07-388.htmより抜粋した大学令の内容です。
大学令(大正7年勅令第388号)
第一条 大学ハ国家ニ須要ナル学術ノ理論及応用ヲ教授シ並其ノ蘊奥ヲ攻究スルヲ以テ目的トシ兼テ人格ノ陶冶及国家思想ノ涵養ニ留意スヘキモノトス
第六条 私立大学ハ財団法人タルコトヲ要ス但シ特別ノ必要ニ因リ学校経営ノミヲ目的トスル財団法人カ其ノ事業トシテ之ヲ設立スル場合ハ此ノ限ニ在ラス
第七条 前条ノ財団法人ハ大学ニ必要ナル設備又ハ之ニ要スル資金及少クトモ大学ヲ維持スルニ足ルヘキ収入ヲ生スル基本財産ヲ有スルコトヲ要ス
2 基本財産中前項ニ該当スルモノハ現金又ハ国債証券其ノ他文部大臣ノ定ムル有価証券トシ之ヲ供託スヘシ
第八条 公立及私立ノ大学ノ設立廃止ハ文部大臣ノ認可ヲ受クヘシ学部ノ設置廃止亦同シ
2 前項ノ認可ハ文部大臣ニ於テ勅裁ヲ請フヘシ
第九条 学部ニ入学スルコトヲ得ル者ハ当該大学予科ヲ修了シタル者、高等学校高等科ヲ卒リタル者又ハ文部大臣ノ定ムル所ニ依リ之ト同等以上ノ学力アリト認メラレタル者トス
2 入学ノ順位ニ関スル規程ハ文部大臣之ヲ定ム
第十七条 公立及私立ノ大学ニハ相当員数ノ専任教員ヲ置クヘシ
第十八条 私立大学ノ教員ノ採用ハ文部大臣ノ認可ヲ受クヘシ公立大学ノ教員ニシテ官吏ノ待遇ヲ受ケサル者ニ付亦同シ
第十九条 公立及私立ノ大学ハ文部大臣ノ監督ニ属ス
第二十条 文部大臣ハ公立及私立ノ大学ニ対シ報告ヲ徴シ検閲ヲ行ヒ其ノ他監督上必要ナル命令ヲ為スコトヲ得
大学に卒業年数や、設置することができる学科、教員について、財産について、大学の意義などが書かれている法律です。
この大学令により大学に昇格した私立大学は、１９２０年に慶応義塾大学・早稲田大学、続いて、法政大学・明治大学・中央大学・日本大学・國学院大学・同志社大学です。その後、さらに多くの私立大学が認められていきます。
産業の発展。立憲政友会は積極財政を進めます。そのため、鉄道の敷設をかなり進めます。鉄道省という専門の組織を作ったのもその政策を進めるためです。ただ、鉄道にしても公共事業というものは汚職を起こす原因となります。立憲政友会では汚職がかなり深刻となりこれが、原の運命をかなり狂ったものとしてしまいます。
また、この時期には国際連盟が出来上がりました。その国際連盟の常任理事国に日本がなるのもこの時期です。名実ともに世界を引っ張る列強の一員となりました。
そんな原内閣ですが、民衆の期待を裏切ることがありました。それが普通選挙法の制定でした。原は子爵や男爵と言った爵位を持つことのない平民でした。それで民衆は初の平民出身の首相として平民首相として原を慕いました。そして、この時期大正デモクラシーにより民主主義がすっかり日本に定着していました。吉野作造の『民本主義』はとりわけ有名ですね。民本主義を吉野作造が唱えたのは１９１４年頃ですが、どういったものかというと、法学的問題である「主権の所在」を問わず、人民多数のための政治を強調する主義のこと。だそうです。これは、民主主義とは若干異なります。理由として日本に天皇制があったためそれを否定することができなかったからです。
さて、話を元に戻します。原は、普通選挙については否定的でした。結局彼は選挙の制限を１０円以上直接税金を納めている２５歳以上の男子から直接国税３円以上納めている２５歳以上の男子にします。これによって多くに人がまた選挙に参加できるようになったのは事実です。しかし、それでもすべての人が選挙に参加することができませんでした。この結果に、人々は失望します。
また、原の積極的財政政策が思わぬ問題を起こします。それは、公共事業を通じた汚職問題です。当時、政友会で汚職が多発していたのです。これもまた原の任期を下げる理由となりました。
そして、原は１９２１年１１月４日に東京駅で国鉄大塚駅転轍手であった中岡艮一により殺害されほぼ即死します。享年６６でした。日本の現職内閣総理大臣の暗殺は史上初のことでした。（引退した総理は伊藤博文の暗殺がある）原を中岡が殺した理由は複数あります。１つは、中岡が右翼関係者であったというもの。そして、もう１つは上司の愚痴が原因というものがあります。後者の方は、以下の通りです。
犯行の1カ月前、中岡と上司・橋本栄五郎との政治談義の中で原政治の批判になり、橋本が「今の日本には武士道精神が失われた。（政治家は悪いことをした時に、責任を取るという意味で）腹を切ると言うが、実際に腹を切った例はない」というような主旨のことを言ったのに対し、中岡が「腹」と「原」を誤解し、「私が原を斬ってみせます」と言明したという。このため、橋本のその言葉が事件の直接的なきっかけとなったとして、橋本も殺人教唆の疑いで逮捕されたが、判決は無罪であった（求刑は懲役12年）。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8E%9F%E6%95%AC%E6%9A%97%E6%AE%BA%E4%BA%8B%E4%BB%B6より。
つまりは、言葉の読み取りが謝ったせいで原は殺されたということです。あんまりですね。
原が暗殺されたことは政界に大きな余波を残します。まず、山縣は原が死んで以外にも残念がります。あんなに政党を嫌っていた山縣ですが、原のことは一目置いていたようです。また、原は政党政治家として素晴らしい人でした。彼のカリスマが失われた政友会は内部対立が表に出てきます。
原はこの時代において重要な政治家だったのです。
原が暗殺され、内田外務大臣がしばらく臨時総理をし次の総理には政友会の次の総裁となった高橋是清が就任することになります。
次回は高橋内閣です。
◇参考
ウィキペディア『原内閣』https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8E%9F%E5%86%85%E9%96%A3
ウィキペディア『大学令』https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%A7%E5%AD%A6%E4%BB%A4
中野文庫『大学令』http://www.geocities.jp/nakanolib/rei/rt07-388.htm
『旧制私立大学の系譜』http://tohyama.cool.coocan.jp/daigaku_shidai.html
ウィキペディア『吉野作造』https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%90%89%E9%87%8E%E4%BD%9C%E9%80%A0
ウィキペディア『民本主義』https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B0%91%E6%9C%AC%E4%B8%BB%E7%BE%A9
ウィキペディア『立憲政友会』https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%AB%8B%E6%86%B2%E6%94%BF%E5%8F%8B%E4%BC%9A
ウィキペディア『中岡艮一』https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%AD%E5%B2%A1%E8%89%AE%E4%B8%80
ウィキペディア『原敬暗殺事件』https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8E%9F%E6%95%AC%E6%9A%97%E6%AE%BA%E4%BA%8B%E4%BB%B6
