☆解放
前回投稿日 2015/3/8
前回のお話 リリアン視点
干物を売りだしてから二か月ほど経った。
資産はとんでもないことになっている。
今の人数であればおそらく俺は死ぬまで食うに困らないだろう。
そして今の生活を続ければ例え塩と干物の需要が無くなることがあってもそれまでにユーリ達が死ぬまで食うに困らないだろう金銭が残ると思う。
そんな俺は特にすることが無いためユーリ達のような保護奴隷の全てを引き取り少しでも楽な生活をさせてあげようと考えたがそれには大きな問題があった。
これ以上奴隷が増えても夜の相手が出来ないのだ。
今の人数に増やすときには積極的に賛成したユーリも今の資産から引き取れる奴隷の数を考えると賛成することが出来ないようだ。
資産の許す限りの奴隷を引き取った場合、夜の相手を一人につき一年に一度程度しか行えなくと思われる。
そんな訳でユーリも心の中で葛藤してるようだ。
それから数日後サーシャさんの所に向かった。
そして色々話を聞き一つの案が生まれた。
一言でいうと解放してあげる事だが、ユーリ達が嫌がることから通常では難しいのだろう。
今考えてる方法はユーリ達には使えないが新しく引き取る子には使える方法だと思う。
サーシャさんに確認したところ可能だと言うので解放されても良いと考えてる子を連れてきてもらうことにした。
人数は三人でテストケースとしては良い人数だと思う。
この三人とは契約後解放するのではなく、保護から抜けてもらって従業員として雇うつもりだ。
保護された後保護から抜ける人が居なかったのは単純に金が無いからだった。
保護を抜ける場合は単純に保護されてた期間の生活費を支払うことになるが生活できなかった者が支払えるわけが無いのだ。
奴隷として引き取れば基本無料で奴隷を手に入れることができる。
寄付という形で費用を支払うことにはなるが料金は決まっていないのだ。
だが、保護を抜けさせてから雇うとなると掛かった生活費を肩代わりしさらに仕事を与え給与も支払うことになるので主側には全くのメリットがない。
そんな訳で今までこのような手順を取る者など出てこなかったのだ。
そんなメリットの無い手順だが保護されたもにはメリットがある。
一番は保護回数に含まれなくなるということだ。
保護と解放を繰り返すような甘えた生き方が出来ないように保護は一生で一度だけと決められている。
保護後解放されてしまった場合は、再度の保護を受けられず無条件で金銭奴隷等になるしか無くなるのが保護奴隷の解放を望まない大きな理由である。
その回数がリセットされるということは、今回の場合は俺の提案にのり与えられた仕事をこなすことで生活できれば良いことであるが、仮に何か問題が起きて働けなくなってももう一度保護してもらうことができるのだ。
俺としては資産も余ってる状況で、俺が引き取ることで幸せになるとユーリ達に言われると手の届く範囲の人を助けてあげたいと思うのだ。
もちろん善意だけからではなく事業として成り立つであろうことを考えてるからということもある。
奴隷として引き取ることに比べるとリスクはかなり高いが、それは日本で会社経営をするのと同程度のリスクである。
この世界の会社経営者のリスクが低すぎるだけだと思う。
そのリスクといっても、雇った子が辞めてしまうというだけのことであり、俺のところで働き続けた方が得だと思わせれば問題ないのだ。
そんな訳で社会貢献にもなり、俺にもデメリットだけではなく、保護されてるものに手を差し伸べることでユーリ達も喜ぶということで良い事尽くしになるはずだった。
そして今後の展開だが引き取った子三人を拠点の食堂で働かせ、ある程度の技能が付いた時点で町に食堂を開こうと考えている。
朝拠点で捕った魚を水槽を作り生きたまま町へ運び食堂で提供しようと思っているのだ。
塩作りや干物作りにつける訳ではなく、製法を盗まれる心配もないし料理等を教え込んだ三人が同時に退職するということが無ければ俺の方はそう困らない。
一度良いケースができれば次からも同様の条件で来てくれる子も出るだろうと思う。
ただ俺も聖職者ではないので、自己の都合でやめた子が再度保護された場合は引き取ることが無いと宣言しておいた。
サーシャさんにもその旨伝えるとそれで問題ないとのことだった。
逆に引き取るようなことがあればその子に甘えが生まれるので、そちらの方が問題だという事だった。
もしどうしても引き取る場合は性条件等をつけ引き取った子の意思を完全に無視した使役を行って欲しいということだった。
理屈では解るが福祉を目的としてる教会の発言とは思えないような怖い意見だった。
こうして居住付きで働いてもらい給与を支払うことにしたのだが、最初はあまり高額にしないようにとサーシャさんに注意された。
住み込みで雇うなら世間よりも少なめで雇うようにして欲しいとのことだ。
あまり優遇されすぎると何かの理由により店をやめることになったときに生活できなくなってしまうとのことだ。
俺としては結婚退職なども視野に入れていたが結婚することで生活の質が落ちてしまうなら結婚する子が居なくなってしまうだろうとも考えた。
事業主としては結婚退職されないほうが良いのだが、社会貢献としては結婚を推奨したいところだ。
俺とユーリ達の間には子供が出来ることがなので、せめて従業員には子を産んでもらい人類の繁栄に役立って欲しいと思う。
なんだか壮大な話になってしまったが、これも異世界に来た日本人には何か使命があると無意識にでも思っている為なんだろうか。




