プロローグはとある日、剣と魔法の勇者たち
おはようございます、こんにちわ、こんばんわ、略しておはにちわ!
ベースを残しつつ、大幅な加筆修正をしての数年ぶりの連載再開となりますが、よろしくお願いします。
「ついに……ついに手に入れた」
薄暗い部屋で、一人の少女が静かに体を震わせていた。
その腕に抱かれているのは、やや武骨なデザインの機械。
コンセントとパソコンに繋がれたそれに、少女は恍惚とした表情で頬ずりしている。
――その姿は言うまでもなく、変態くさい。
しかしこの部屋には少女以外には誰もいないようで。
ちょっと女子あるまじき顔で機械を撫でまわしたとしても、誰に咎められることも、引いた目で見られることもない。
ビバザ一人暮らし!この変態め!!
「ふふふ……この『幻想遊機』さえあればVRMMOで遊び放題……もう学校に行かなくてもよくない?ずっと遊んでてよくない?」
独り言が多いのは一人暮らしの特徴ですね。(当社調べ)
あと別に遊び放題ではないです。遊びすぎると近い未来で破滅が待ってます。主に電気代で。
ちなみに。
『幻想遊機』とは、ざっくりいうとゲームの中に入り込んだような感覚で遊べるゲーム機である。
詳しく言うと……幻想遊機を被って、専用のオンラインゲームを遊ぶと、ゲームの中のアバターと視覚、聴覚、嗅覚、触覚の五感を共有することができる。
それによってまるでゲームの中に入っているかのような感覚になるとかなんとか。
アバターの動きは脳の電気信号をデータ化して送られるため、今までのゲーム機よりもより直感的な操作がどうたらこうたら。
……まあとにかく、発売当初から爆発的な人気で品切れを頻発。5年経った今でもVRMMOの爆発的人気を保ち続けるほどの超スゲーヤベーゲーム機だってことだ。
「さーて、今回私が初めて挑むVRMMOはー?どぅるるるるる……じゃんっ!こちら、『剣と魔法の勇者たち』でーす!タイトルがあまりにもダサかったので逆に気になりました!!」
あぁ、ついに見えない観客に対して一人実況まで始めてしまった……。
これは後で絶対黒歴史になるやつですね。
テンションの上がりすぎには気をつけましょう。振りきると未来の自分を傷つけます。
しかしそんなことは、念願であったゲーム機を手に入れ、さらにVRMMO初プレイという現状に興奮しきっている彼女は気づけるはずもなく。
サクサクと初期設定やゲームのダウンロードを終わらせていくと、幻想遊機を装着して、ベットへと寝転がった。
「うぇへへ……オンラインゲームかぁ。どんなPLたちがいるのか、楽しみだね」
眠りに落ちる様に、アバターへと感覚が統合されていく中、少女はそっと呟いた。
――うんうん、私も楽しみだよ。
このこっぱずかしい一連の流れを、私がずっと見ていたことを知ったあなたの反応が、ね。
《アバター名『フウ』、ログインを認証しました。》
~次回予告~
「ここがゲームの中かぁ・・・・」
ゲームの世界へ降り立つ一人の少女と
≪私のことは“天の声”とでも呼んでいただければ≫
とあるプログラムが出会うとき
ここに新たな物語が始まる・・・・。
超ハイスピードバトルコメディー!
「始まりはとある日、自分の意思で」