episode#1
新学期も終わり、鮮やかなピンク色をした桜も、その役目を終えた。
きっと来年も変わらずに咲くであろうその花は、僕の頬をかすめて流れていった。
散った花びらは四方八方へ舞う。1つ1つが同じ場所に行くことはなく、鳥のように自由に空へ。
結良町---。
そう、僕がずっと生まれたときから住んでいる町だ。いま高校1年生だから、15年くらい経っている。
そんなわけだから、当前かもしれないけど、ここ結良はとても心地が良い。慣れ親しむ友達のほとんどが僕と同じように結良町に住んでいる。
高層ビルもあり、交通の便も良い。そして自然と調和のとれた町並みは他県から移住者が来るくらいだ。
都会、田舎。そのどちらでもなく丁度足して2で割ったというのが一番似合う気がする。夜になれば6等星の星も
はっきりと見える。そのくらい澄み切った空で、町の明かりで決して星の光が失われるということはない。
家から学校までの道のりは徒歩15分程度であり、この時間が僕は好きだ。友達と話しながら歩く時もあれば音楽を聴きながら登校する時もある。今日は、幼馴染の高井雄太(ゆうた)と家がお隣さんの鈴木佐奈(さな)と一緒だ。
短髪な雄太は、自分よりも目の高さが1つくらい上で、中学生までは一緒だった背が、高校に入学して1ヶ月くらいで抜かされてしまった。佐奈は小さいころから、姉のような存在で困ったときは色々助けてもらって今では実姉のように親しんでいる。
「それで、昨日夜遅くまで明かりが点いてたみたいだけど? 悠希」
「今のあくびは、なしだよ」
「へ~、まーたお前は例のやつでもしてたのか?」
「れ、例のやつって、変な言い方するなよ雄太」
雄太は意地悪そうな顔をして、軽く肘をぶつけてきた。
佐奈の言う台詞はすでに朝に聞かれる常套句になりつつある。
「例のやつって何なの?」
佐奈の顔が近づいてきて、おもわず目を逸らしてしまう。
迂闊にも、動揺してしまった。
「今ので何となく分かったからいいよ、もう」
「今ので分かったのか鈴木、すごいな。俺はわかんなかったぜ」
つまらなそうに道に転がる石を軽く蹴って、先を歩いていってしまう佐奈。
僕はどうしたのものかと思い、雄太のほうに顔を向けると、雄太はこめ髪を掻きながら、やってしまったかといった感じで気まずそうだった。
佐奈の行動の意味がわかったかのような雄太を置いて、僕は1人だけ取り残されてしまったようで、学校に着くまでの道のりは一言も発さなかった。
どんどん書いていきます。