予定・嘘・薬
ぽちゃんっ・・
浮きが水の中に一回沈んで、また浮き上がる。
「大物釣れるか〜?」
陽気な声がした。
月が綺麗な夜。
ランは帰っていった。
翌朝。
ちちちっ、と小鳥の鳴き声が聞こえる。
むくっ、とランは起き上がり、大きなあくびをする。
「ふあぁぁぁぁ・・・今何時?」
問いかけるが、返事は返ってこない。
「・・・・・・あっ、そうか。えっと・・時計・って無いんだった。じゃあ〜・・」
ランはそう言って、鉛筆と紙を取り出した。
「今日の予定。必要最低限のものを揃える!村の人たちに挨拶をしに行く!」
ランは予定を立てると、すぐさまベッドの上から降り、髪を結ぶ。
そして、洗面所にいく・・・・・・・が。
「あ・・・あれぇ?」
どこをどうしても、洗面所が見つからない。
水道管はあるのだが。
「・・・・・まっ、いっか。川に行こ!」
ランは、タオルを持って外へ出た。
さらさらさらさらさら・・と川は流れている。
「わあっ・・」
ランはしばらく見とれていたが、地面に膝を着いて顔を洗った。
洗い終わったところで、タオルで顔を拭く。
「ふうっ!気持ちよかった・・あっ、もうこんな時間!」
ランは日が昇ってきたので、急いで家に帰り着替えなどを済ませた。
食事は、生っている梨を食べた。
甘くて、シャリシャリとてもとてもおいしい。
昨日作ってもらった、服を着る。
さっきは軽く縛っていた、髪をしっかり結ぶ。
すべての準備が出来、外へ出ようとしたところ。
トントンッ、とドアがノックされた。
「は〜い?」
「・・あの・・レインです。朝早くすみません」
「?レインさん?」
ランは、家のドアを開ける。
そこには、綺麗な服に身を包まれた、レインがいた。
「どうしたの?レインさん?」
「あっ・・「さん」付けはしないでください。では無く、「お友達」になってくださりませんか?嫌であれば別にかまいませんけど」
「いえ、別に大丈夫ですけど?」
「それはよかった。そうです、その証にコレ・・「洗面台」をどうぞ。わざわざ、川まで行くのは大変でしょう?」
レインはそう言って、ウインクをした。
・・・見た?ていうか、見られちゃった・・。
ランは恥ずかしく思いながらも、受け取った。
「後、キイルともお友達になってくださいね。この村、子供が3人で大人が5人しかいない小さな村ですから・・友達が少ないんです・・」
「・・そうなんだ・・分かった。いいよ!それより、付き合ってよ!」
「・・・?どこにです?」
「村の人に挨拶!」
ランは、可愛らしい笑みを浮かべた。
「ここが、ケイセツさんの家です。ケイセツさんは、釣り名人なんですよ。で、こちらがレスガさんの家です。レスガさんは、一流のガラス職人なんですよ!」
レインは、ランにいろいろなことを教えてくれた。
この村は、いろんな特技を持っている人がいること。
村長さんは、車のコレクターどということや。
いろいろ教えてくれた。
最後に、キイルの家へ来た。
「キイル?います?キイル〜?」
レインが、ドアをノックする。
返事は無い。
「・・可笑しい・・・。何でいないのかしら?」
「どこかいってるんじゃない?」
「ううん。そんなはずは・・」
「何してんだ?んなところで」
不意に後ろから声がした。
「「えっ?」」
二人は同時に声を上げた。
なんと後ろには、キイルがいた。
キイルは、生意気そうな顔をしてみている。
「よかったわ。キイル、ラン・・が挨拶に来ているの」
「あっ、どうも」
ランは後ろを向く。
「・・・・どうも。えっと・・ラン?」
「うん」
ランはそう言うと、軽く会釈をした。
「オマエ・・前、大木のこと覚えてるか?」
キイルが、突然言い出した。
「大木?・・・・・・あぁ、アレのこと?配達の時の」
「そうそう。アレどうやったんだ?」
キイルは真顔で言う。
「・・・・やりたい?」
ランは薄く笑いながら聞く。
「もちろん」
キイルも負けずと、薄く笑う。
しばらくコレが続いたあと、突然ランが笑い出した。
「アハハッ!ホントにやりたいんだね!いいよ、教えてあげる!ただし、かなりつらいよ」
「おうっ!平気だ。んなぐらい!」
「OK!じゃ、まずあの木からね!レイン!レインも・・ありゃ?」
レインがさっきまでいた場所には、もうレインはいなかった。
「・・・・・・・・?レイン・・・?」
「アイツ、なんか最近変なんだよな〜・・。この前だって、「引っ越してくるやつが「女」なんだ。どんなやつかな」とか何とかかんとか言ってたら、急にいなくなってたし」
「ふ〜ん・・どうしたのかな?」
いやいや、気づけよ。
木陰から、お姉さんがツッコンでいた。
それは、「恋」ってヤツでしょ。
「まあっ、いっか。やるぞ―――――――――――!!」
キイルが声を上げた。
「いいのか分からないけど、オ―――――――――!」
良いのか――――――――――――!!?
ということで、ランとキイルの修行は始まった。
村の奥の公園の、ブランコの上。
キィ――・・・キィ――・・とブランコがなる。
「ひっく・・・ひっく・・う・・」
レインが泣いていた。
ひとり、寂しさの中で。
また・・わたしの信じれる人が消える・・・。お母さんもお父さんも・・皆いなくなる。
ひとりは嫌だよぉ・・
ヒトリハイヤ。
サビシイノハイヤ。
ミンナトイッショガイイ。
ダカラ・・ヒトリニシナイデ。
ヒトリハイヤ・・。
コツンッ・・・。
後ろから足音がした。
「・・・・・どう・・しました?」
男の声だ。まだ若い男の声。
「・・・ヒトリハイヤ」
レインは、小さな声で言う。
「そうですか・・・では、何が嫌なんですか?」
「皆がいなくなること。キイルはランに夢中。キイルは運動が好きだから・・。運動ができるほうが、キイルは一緒にいたいと思う」
「では、その運動のできる子が嫌なんですか?」
「いいえ、ランは大好きよ。まだ、ぜんぜん話したことは無いけど・・優しい感じがするの・・」
「では、キイル君の気持ちを操る薬を上げましょうか?」
「えっ?」
レインは、顔をあげる。
気持ちを操る薬?
「これで、ランって子の興味を消してしまえばいいんですよ。話はしますが、ずっと一緒にいないでしょう。・・使いたくなければ、使わないで良いです。使いたければ、付いている紙にサインをしてください。ただ・・あなたがどうなろうと、わたしには関係ありませんがね。それではさようなら!」
男は、マントをひるがえし、さっさと歩いていってしまった。
レインの手には、男から貰った薬が握られていた。
――気持ちを操る?
レインの心の中に、この言葉がエコーでよぎる。
「・・これをつかえば・・」
レインは、薬を強く握った。
「キイルは・・・」
レインは、薬を見つめた。
その時ほんの微かだが、薬が赤く光った。
――あなたの体はわたしがいただきます。
どこからか、さっきの男の声がしたが、レインには聞こえなかった。
こんばんは。
サイキアスカです。
ちょっと、怪しい人物が出てきましたね。