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どれでも良いと思います

 今回は好き嫌いが分かれる話かと思います。TS要素が入っている小説らしいのかなとおもうのですが。


 白いロングドレスの裾が動く度にふわりと広がる。それが心もとなくて、愁は溜息をつく。

 煉夜の頼みを引き受けてから、愁の周りはにわかに活気づいている。国王主催の夜会に参加するとなると、準備しなければならないことは山のようにあるらしく侍女たちが生き生きと動きまわっているからだ。愁自身も普段からの礼儀作法や勉強の時間が増えたのに加え、ダンスを覚えたり髪や爪を磨かれたりと忙しい。ストレスの溜まる日々が続いている。

 今身に着けているのは、シャツ風のワンピースドレスで比較的露出が少ないデザインの服だ。本番にだけ裾のやたら長いドレスを身につけ、ハイヒールで歩く自信はない。そのためダンスの練習や、礼儀作法の稽古日だけでもドレスを着ることになったのだが動きづらい事この上ない。それも結局ほぼ毎日この格好だ。

 「お疲れになりましたか」

 案じるように問われて顔をあげる。

 「いえ、着慣れないので違和感があって」

 居心地が悪い。

 ふわりと彼女がわらう。

 「とてもよくお似合いですよ。愁さまの髪に映えて」

 漆黒の髪は珍しいときく。そのためだろうが髪のことはよく言及された。

 愁はこの姿を褒められてもうれしいとは思えないので彼女にむけて苦笑するにとどめた。莉黎もそういった反応には慣れたのか、それ以上は口をつぐんでお茶を淹れながら話をかえるように問いかけた。

 「当日身につけるドレスはどういったものが良いですか」

 莉黎の問いに首を傾ぐ。

 「肌の露出が少ない、あまり派手でないものなら何でも」

 ドレスにも髪型にも興味がない。

 「そんな、殿下とご一緒なのですから」

 困ったように言われて、思い至る。

 「煉夜のパートナーとして問題ない範囲内での希望です。色やデザインは正直よくわからないのでお任せします」

 引き受けた以上は腹をくくるしかないので諦めた。

 自分が着るドレスのデザインに興味はわかない。中身が男だ、虚しすぎる。

 「よろしいのですか」

 困ったように聞かれて「お任せします」とやる気なく答える。

 莉黎はもちろん世話してくれている彼女たちも、愁などよりずっとセンスが良い。愁は男でいた頃から、あまり凝った服装はしたことが無い。パンツやジーンズにシャツといった格好が日常的だった。髪もワックスを使って軽く整えることはあっても、染めたことはなかったし地味な方だった。

 自分で選ぶより彼女たちに選んでもらった方が双方にとって良い結果になるだろう。そう考えたのだがそうでもなかったらしい。別の日にずらっと並べられたドレスに気付いた。

 「夜会用のドレスだと聞いていたけど」

 どうしてこんなにドレスが並べられているのか、教えてほしい。

 「はい。夜会用の3着は、直しが無いか見るためと当日着るものを決めるために試着してください。他の2着は殿下の指示で、外出用のを設えさせて頂きました」

 「そうですか。」

 意図がわからない。夜会が終わったらドレスなど付ける気はないのを分かっているはずだ。外出用ということは、誰かに招かれて出向く必要性があるかもしれないのだろうか。だとすれば憂鬱な話だ。それに、夜会用のドレスも三着も用意しなくていいと思うのだが違うのだろうか。それとも連れのせいか。

 とりあえず生き生きとしだした女性たちに押され、着替える。

 濃い緑色のAラインドレスは、肩を大胆に出したデザインだ。身につけると思った以上に背中が出るらしい。肩甲骨は隠していないし、後ろのカットされた部分は編上げのリボンになっていてウエストを絞り身体の線を強調している。腰から下は流れるように広がっている。

 「よくお似合いです」

 「有難う」

 女装しているようで褒められても素直に喜べない。いや、いつもか……。

 「背中が結構開いていますけど、平気ですか」

 あまりきれいとも言えないと思うのだけれど出して良いのだろうか。

 「問題ありません」

 驚いたように目を見開いて次いで微笑んだ彼女に言われる。

 ……化粧とかでどうにかするのだろう。

 一通り穴が開くほど観察され、ドレスの丈やラインなどを四方から近づいたり、遠ざかったりしてチェックされる。

 その後も、目の粗い布を重ねふわりと裾にボリュームを出した深紅のドレスと、極淡いセピア色を薄めたような色合いのドレスを試着する。その度に一度目と同様の確認が行われる。

 真剣な顔つきで相談し合ったり、感嘆したり、目を輝かせたりと彼女らは忙しい。

 他人の着るドレスになぜそこまで興奮出来るのか分からないが、ひどく楽しそうなのはわかった。着せ替え人形のつもりで降参し、最後まで彼女らに大人しく従う。

 結局どれにするかを覚えていないぐらいには疲れた。

 こういった経験はこれっきりにしたいと切実に思った。



 読んでくれて有難うございました。

 次は夜会当日の話です。

 それで質問なのですが、次回の話やや長いです。いつもの倍以上です。分けた方が親切ですか。切りよく区切れないんです。

 何か反応があればどうにか変えたいと思います。

 お気に入り登録してくれている方有難うございます。

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