第5話 校長
一気に緊張が解けるとともに吐き気や眩暈が襲ってくる。それはみんなも同じ。学校を探検する余裕なんてない。
だけど、生徒はお手洗いを目指して校舎へと向かっていった。
誰もいないグラウンドで過呼吸になっている僕に話しかけてくる少女がいた。
「なぜあなたはみなと一緒に行動しないのですか。この高校にご興味ないのですか」
なぜこんなにも平静を保てているんだ?今の僕も正気ではないだろう。だからこそ話してないと心臓が破裂しそうだ。
「僕は氷室。3年間よろしく。君の名前はなんていうんだい。」
「確かに挨拶をしていなかったですね。私の名前は小早川。3年間よろしく。てなわけで質問に答えてくれる?」
彼女の眼差しはすごく重い圧がある。僕はできるだけ答えないように仕向けようとするが、答えるまで終わらなさそうと感じ仕方なく、
「君はこんな学校の校内を見て興味が湧くのかい?僕はこの街の方がよっぽど気になるかな」
これだから低脳はという意味も込めて毒入りの言葉をかける。だけど、素直な自分の考えだ。正直まだ吐き気とか諸々残っている。早いとこ話を済ませたい。
話終わった後、彼女を見るとグラウンドから見える街を眺めていた。ここに氷室なんていないように……
話しかけても無視をされた。
少し経ったあと、また話を始めようとする彼女を遮るように放送が流れる。
「たった今クラスが決められた。直ちにグラウンドに集合し先ほどの列に並び直すように」
放送の終わりの音を聞くとすぐに彼女が先ほどの話を続けてくる。
「正直に言うと恐怖してます。ここでの生活がどのようなものになるかもまだ聞いてないですし。不安がいっぱいだけど氷室くんがいたら安心する。氷室くん、君が私の最初の友達です」
勝手に友達認定されたが僕はまだしていない。君と小林との関係があるかわかるまでは動けない。そんなわけで、
「一回お互い元の位置に戻ろう。遅くなったら迷惑だしね」
これで一旦距離を取ることにする。きっとこれだけの人数がいれば同じクラスになることなんてそうそうないだろう。
全員が集合したのを確認したのち、また放送が流れ出す。
「今から個別にクラスと出席番号を発表する。方法は支給される腕時計にメールが届く。そしてそれを確認したのち、地図も配られているのでそれを見てそれぞれの教室に行くように」
なるほど、今の腕時計はここまで進化しているのかと、感心もするが、どうせつけたらさっきのアイマスクみたいに外せなくなるんじゃないか。
でもまぁ受け入れる以外ないしどうでもいいや。そして一人ずつ丁寧に説明をして腕時計を先生がつけていく。一つの列に一人ずつ先生がついているので、案外すぐに作業が進む。
「クラスに上とか下はありますか?あるなら教えて欲しい」
僕の番になったらすぐに質問を投げかけた。少し戸惑いつつも、
「『上のクラスは首席である小林のような人を、下のクラスは停学したような人を受け入れるだろう。成績がすべてだ』と校長はおっしゃっていた」
クラスは関係なく、個人で最後の青春を送ったのが上のクラスと認定されるのだと。元々つけてた腕時計を外す。成績が全てか。
母親との約束を叶えるために一つの選択もこれからは間違えない。
「ただ、私の見解は違う。君は核という存在を知っているかい?その真理に辿り着け。さすれば自ずと答えに導かれる」
こいつは校長のモルモットとはまた別の存在なのか?ここは校長の掌の上ではなかったのか。僕の思う彼と小林の思う彼は別人なのかもしれないな。いけないいけない、取り乱してしまった。
一旦、自分のクラスと教室の位置を地図でを把握する。
「Aクラス、出席番号は31番」
各列の最後の生徒はみな校舎の方へと歩き出していた。そして、僕も歩み出した
一方そのころ――
校長室では停学の手続きが始まっていた。
「君は一週間の停学とさせてもらう。首席、小林 優香。理由はもちろん停学者を大量に出させようとしただろ?」
彼の言葉は自信に満ち溢れていた。
「この私を一週間も自由にさせていいとお思いで?きっと後悔することになりますよ。それより氷室は停学じゃないんですね」
余裕のある顔を両肩ともしている。そして、どちらもそう思っている。
「彼を停学にする理由が見つからない。彼は彼なりの行動をとった。それだけです。もしかしたら君が、……。いやしかし、君を上回る生徒がこの学校にはきている。首席を取った君よりも遥かに優れている人物が」
この言葉を聞いた小林は思考を巡らせる。1つの可能性として校長と氷室はグルである。これだけは考え続けて行動しなければいけないわね。
環境大臣から聞いたが派遣高校生が数名この中に組み込まれているようだ。彼女は冷静なままで、眉ひとつ動かさない。
「現在、彼に襲いかかる試練は2つも存在する。彼への信頼度が高すぎではありませんか?」
自信がありげな様子をみせる。
「こちらは君を退学させることだってできる。万が一、人が消えようもんなら君を容疑者として捕まえさせてもらおうじゃないか」
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