第4話 処刑
この場合だと、停学になった後でも誰かにヒントを与えることができてしまう。
人間黙っていられる時間は長くない。今の状況を考えると30分といったところ。
12列に並び替えることはできた。ここまでにかかった時間はおよそ10分程度。
タイムリミットは早いやつであと10分もあれば口を開いてしまうだろう。ある程度自分の位置を確定できた。前後との確認が終わり、列に入っていく。
もし停学者の分を詰めなければ大量に位置のズレが生じてしまう。つまり停学者が量産される。そして、僕の右には1つ空間がある。
彼女から後ろは全員場所を間違えていることになる。
小林……
今は話すことができない。こちらに気づいた彼女はニヤリと笑う。ここで君と対峙するとは思ってもみなかった。果たして君は僕の敵なのか……
今から行動する選択肢としては2つ。このまま何もしないか、もしくは……
僕は母親に言われてきたことがある。もし、迷いがあった時には一度上を向けと。
青空の中に1つの機械が蝶のように飛んでいる。音がまったくない?ここまで精密な機械を作れる機関とはな。
あれによって人間の場所、そして並び場所を把握している。
上からの状況判断ってことは並ぶ場所を隠すならこれしかないよな。
僕は学ランを脱ぎ、空き場所に広げておいてみる。
「プログラムのエラーが発生しました。のちにプログラムを修正をおこないます」
この声の正体はあのドローンか。
誰も手を挙げようとしない。このままいけば……。
もちろんのこと小林は手をあげたりはしなかった。停学になる可能性があるからだ。僕も挙げるメリットとデメリットを考えた時にデメリットの方が大きいので手は横である。
「誰か手をあげてくれ」
馬鹿な。ここで話すなら手を挙げるべきだろ。みんなの目線は声の方向に向く。どんな意図が存在する?ここにルールの抜け穴は存在しない。
声を出したやつがこのタイミングで挙手をした。そして、先生に連れて行かれた。手を挙げるのは誰でもよかった。それは停学者だったとしても。
「ミッションコンプリートだ。これにてアイスブレイクを終了させてもらう。報告だが停学者は5人、退学者は1人出た」
放送であっても冷たい声で話し続ける。
「ここでは当たり前。そう思ってくれ。君たちにはそれなりの覚悟を持ってもらう」
周りがざわつき始める。一気に縛りから解放され、喋り出す人もいれば、逆に黙り続ける人もいる。僕はもちろん後者だ。
そして放送が流れ出す。
「今から確認をおこなう。上空写真で位置は把握しているので、動いてもよいぞ。クラス決めは少し時間がかかるので校内見学でもしてると良い。次の放送を聞き逃さないように。以上」
「今からプログラムの修正をおこないます。全校生徒の人数にエラーが発生しています」
ドローンが僕の真上にきたか。何が起こる?なにをされる?
1本の縄が目の前に降りてくる。綺麗な直線で、音もなく。
「この中からランダムで1人を処刑します」
僕の目の前の人を縄が吊り上げる。
膝から力が抜けていく。そして、トラウマが蘇ってきてしまう。心拍数がどんどん増加していく。金縛りにあっているようだ。
僕には嘗て弟がいた。今はもう死んでしまったが。彼の遺体には不自然な点がいくつも残っていると警察からの報告を受けた。
首を吊って死んでいる状態なのだが、自殺か他殺かもわからなかった。結局遺体は警察によって処理され僕らの家族から記憶、そして記録としてもなくなってしまった。名は『天理』だった。
吊られた子は静かに息を引き取っていた。そして、ドローンは死体を持ったままどこかへ飛んでいく。
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