第3話 アイスブレイク
君と同じと言われてもみんな同じだと思う。何が違うのか全くわからない。それよりも気になるのは彼の存在だ。
「志望理由はまだ話せないかな。でも"察しのいい"君ならわかるんじゃない?」
僕の情報が筒抜けになっているかもしれないと思うと、個人情報保護法なんてないんじゃないかと思う。ここでは法律は意味をなさないのかも。全てが暗闇の中に消えゆく予感がした。
そして今になって今日のプログラムを確認する。
目次
校長挨拶 9時-9時10分
休憩 9時10分-9時50分
生徒代表挨拶 9時50分-10時
クラス発表 10時-
昼食支給あり
休憩が長いことにすごく違和感を覚えた。だがそれ以外は普通だ。本来なら隣から聞こえてくるはずの、
『休憩ながすぎじゃんか』
という母親のツッコミが聞こえてこない。本当にこの場に来ていない。なぜ嘘をついたんだ?それよりも問題は昼飯があることだ。早く帰りたいのに午後が確定しただけで憂鬱だな。
少し周りが挨拶などでざわついてきたとき、
「黙りなさい。これではいつまで経っても始まらないわ」
まるで猿にでも話しかけるように感情のこもってない声で生徒に呼びかける。生徒はその圧に負けて静かになった。
「今から厚生双立高等学校第一期生の入学式を始める」
なるほど。先ほどの先生が進行を務めるのか。
「まずは、校長による挨拶」
なぜか見覚えのある顔の人が前に出ていく。どこで見た覚えがあるのかがわからない。思い出せないだけなのか、思い出したくないのかすらも。
腕時計を確認すると、今は9時ちょうど。目次を見ると校長の挨拶が始まる時間だった。10分間、意外と話は短いのか。
そして、僕はまた深い眠りにつく。次に目が覚めると、
「うわっ。眩しい」
つい声を出してしまうがみんな寝ているようで、誰も反応しない。別に聞こえても問題はなかったが少し安心した。
それにしても、校長の話が長すぎる。もう話し始めてから30分ほど経っているのを、自分の腕時計をみて確認する。
『長すぎでしょー。私許せなーい』
これも聞こえない。僕はもう一度目次に目を通した。いまは休憩時間で合っているのか?校長の話に耳を傾けないでいいのか?心の中にある不安が渦を巻く。
そして喉元まで迫ってきている。でも、これだけ寝てしまっていたら関係ないかと吹っ切れることができた。起きてから少し話は聞いているが意味のないこと永遠と詠唱している。
9時40分になるとようやく校長の話が結末を迎える。
「一同、礼。それでは今から10分の休憩とする。2分前には着席しておくように」
よっぽどムカついているのか、マイクがミシミシと音を立てていた。
初めて先生が感情を出したように思えたが、声色は変わっていないし、表情も変わらない。
腕を見ると毛が逆立っている。いわゆる鳥肌ってやつだ。
僕の体は正直というわけか。
『あの先生こわーい。絶対担任にはなりたくないわね。懇談の時、地獄じゃん』
脳内再生するがもう今は無視できる。
重い空気の中、時間だけはいつもどおり進んでいく。寝ている人も大半で誰も動こうとはしない。
隣を見ると小林はじっと手に紙をもってそれを見つめている。まとっている空気感が少し変わったように感じた。さっきのとは別の正のオーラ的なのがまとわりついている。
そしてまた周りに合わせて眠りにつこうとする。最近はずっと家で勉強してたので寝不足だ。だが、それを邪魔された。
「45分となったが、今誰も席をあけていないので進行する。生徒代表の言葉」
司会を睨みつけ威嚇するが、心の奥までは届かない。これだけで僕の神経は死ぬほど削られてしまった。正直気絶してもおかしくはなかった。
そして、隣の小林が立ち上がる。こいつが首席なのか、僕は隣の通路へ彼女を出すために足を引く。
心の中で応援もするが、流石に早く終わって欲しい気持ちの方が大きい。
背筋が伸び、顔を上げ歩いていく。その姿は周りにまでも緊張をもたらす。そして、壇上に上がった彼女はさっきまでとはまったく雰囲気が異なる。これが本当の彼女だと圧巻されている間に話が終わってしまう。
「さいごに一言。人には感情が必要である」
そう言い残して席に戻ってきた。
周りは唖然としている。僕も何を言っているか理解ができなかった。
そして、目次を見ると今からクラス発表が始まる。できれば平和なクラスで一年を過ごしたい。だがこの数時間でそんな望みを僕は捨てていたのかもしれない。
「これからグラウンドに出て、クラス発表をおこなう。まずは親御さんから退出してくれ」
一斉に親が立ちだした。そして、綺麗な列を組んで体育館から退出していく。様子を見ながら指示が出される。
「まずは後ろの半分の人はグラウンドへ出てください。そのほかの生徒は待っているように」
すると後ろの席の生徒が一斉に立ち、誰も押し合うことなく体育館の外へと出ていく。
次は僕らが外に出る番だ。指示のあとみんな同時に動きだすと、椅子が少しずれたりする音がノイズとして耳に入ってくる。
先生たちだけが残った体育館は椅子だけが残っている。
この空間を片付けるのが生徒でないことを僕は祈って、体育館から退出する。
1人の先生が生徒全員がグラウンドに出たことを確認してどこかに合図を送った。そして、校内放送がグラウンド中にも響き渡る。
「今からアイスブレイクをおこなう。理由はわかるだろ?クラスを決めるためだ。何も喋らずに誕生日順になって並んでもらう。先頭は1月1日で一列30人で並んでもらう。もし喋ることがあれば即停学とする。制限時間は設けない。完了次第、誰か1人が手を挙げてくれ。完了したかは機械が判断する。それではスタートしてくれ」
一番前と一番後ろから並び出してくれる。自分が思っているように生徒は列を組む。僕は誕生月が9月と微妙な位置だから傍観する。
制限時間は設けられていないのでゆっくりいこう。みんなスマホを取り出し連絡先を交換しあう。これだからスマホ脳は、と思いつつその発想を思いついたのは賞賛に値する。
そこで放送が流れる。
「このゲームにルールは基本的に存在しない。だから別にスマホを使ってもらっても構わない。だが、もうすでに成績がつけられていることを忘れるな」
ここでスマホを使わせないことにしたか。もちろん他のコミュニケーションツールは使えない。身振り手振りで並ぶしかない。
なんとか手を駆使して並んでいると、3人組がコソコソ話し始める。人間の心理を考えると、バレないと思ってしまうのが一般的だ。これにより場の空気が緊張に包まれる。
すると、すぐに先生が駆けつけて連行されていく。最初の停学者は3人。もしかしたら想像以上に厳しいことになりそうだ。
周りのみなは手で月を表している。まずは、月ごとに並び始めるようだ。
ここで誰かが手を挙げる。並び終わったら1人が手を挙げるというルールが存在するから、ゲームを終了することを選択したようだ。
「チッ。これではゲームは終わらないのか」
ゲームを放棄したということはリタイア。つまり停学か。
「ただいま初の退学者が現れました。これ以上犠牲を増やさないようにルールは守ってならびましょう」
読んでいただきありがとうございます!
面白いと思ったらブックマーク・評価してもらえると嬉しいです。
次回もよろしくお願いします!




