第1章 入学式 第1話 入学の日
人間はトラウマを思い出した時に、弱点がむき出しになる。人間は弱点を知られれば従う他なくなってしまう。それは物語に当てられたスポットライトを受ける人なら尚更。
僕の名前は氷室 賢理。人から好かれる性格ではなく、友達も多くはない。今までの人生は適当に過ごしてきた。生きることに目標もなく。ただ勉強は人よりできたし、よく取り組んでいた。理由はわからない。
今日は厚生双立高校の入学式の日だ。実は、この高校は自分が志望したわけではない。
母親がここに絶対に行かせたいと言ったので、受験したってわけで別に他に行きたい高校があったわけでもないし、後悔はしていない。他の人は努力してきたんだろうが僕は違う。
一つ、母親から伝言を預かった。
「 」
この学校で必ずや皆勤賞を取ってやる。そういえば、ここへの移動方法が独特だった。非常に興味深いし、なぜそうしたか理由を知りたい。正直この高校に入れてよかったと思った。普通の公立や私立よりよっぽどおもしろい生活が送れそうだ。
今朝――
2階から窓の外を見ているとランドセルを持った子どもが親と一緒に歩いてる。そうか、もう入学のシーズンか。小学生は楽しそうでいいなと思いつつ現実をみる。
すると、タクシーが一台家の前で停車する。階段を駆け上がるインターホンの音が耳に到達する前に僕は動き出す。なぜかこの部屋とは一生の別れが待っているように感じた。全くもって根拠はない。
作りかけのプラモデルが机には置かれている。だが他はまるで故人の部屋がそのまま残っているようだ。
「けんりちゃん、迎えがきてるから早く降りてきなさい。」
それと同時に階段を降りた。
「お母さんは後で行くからね。いってらっしゃい。」
そう言った割には化粧もしていないし、まだ寝起きぽく準備が全くできていないように感じる。そしてなんといっても時間がない割に動きがゆっくりにみえる。僕は扉の前で振り返り一つお辞儀をする。
手を振って別れを告げたいがここでもし振ってしまったら一生会えないような気がした。
外に出るとタクシー運転手が僕にアイマスクみたいなものを渡してきた。僕はそれをアイマスクと名付けた。タクシー運転手の顔は例に挙げれるほど一般的だった。しかし、目に淀みはないがなにか虚ろなものが混ざっているように感じる。
「つけろ」
命令形かよ。こんな言い方するのもそう感じる所以だ。
僕はタクシーの中に入るや否やすぐにアイマスクを身につける。完全に固定されてしまい、一瞬にして闇が氷室という存在を覆い隠す。
もう外せないことを悟った僕は、暗闇の中で目を閉じる。
次に光を感じた時にはもう、グラウンドにいた。
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