安寧
AIとの共同執筆です。
熟練冒険者のゼクスは冒険の神に愛されていた。
落盤、毒矢、酸の罠…。
どんなに強い敵に囲まれても、彼の仲間が彼以外全員が絶命するような惨劇からも彼は必ず帰還した。
そんなことを繰り返しているうちいつしか彼は「死神」や「不死身」と畏怖されるようになった。
彼にとって「生きる」ことは、迫りくる死の牙を紙一重でかわし続け、刹那の火花を散らし続けることに他ならなかった。
だが、そんな紙一重の幸運が永遠に続くことはなかった。
ある日、彼は大怪我を負った。
大怪我を負いながらもギルドに帰還したゼクスは流石と言うべきか。
しかし、彼が再び冒険者として復帰することは二度となかった。
その後、日常生活をできるほどには回復したゼクス。
幸いにも、それまでの戦利品で十分な蓄えを持っていたので、彼は町外れに小さな家を買った。
そして一人の女性と出会い、その後結婚もした。
朝、鳥のさえずりで目覚め、愛する妻の焼いたパンの香りで一日が始まる。数年後には、自分に似た瞳を持つ子供も授かった。
それは誰もが羨む、小さな幸せがつまった温かな生活だった。
だが、そんな生活は彼を少しづつ、しかし確実に蝕んでいった。
清潔なシーツに包まれるたび、かつて使っていたノミだらけのボロ布を思い出し手のひらが疼く。
妻との穏やかな会話の裏では常に「獲物の足音」を探してしまう。
「あぁ……味がしねぇ…。」
ワインを飲みながら、ゼクスは呟いた。
かつて森で泥にまみれ、ヘビを焼いて食った、あの焦げ臭い野生の味。あれ以上の充実した食事を彼はこの数年一度も味わっていなかった。
ある朝、ゼクスの嫁が目を覚ましたとき、いつもなら横で寝ているゼクスの姿はそこになかった。
ふと、横を見ると、枕元に一枚の手紙があった。
『すまない。俺は、冒険者に戻る。こんな俺を許してくれ…。』
数年ぶりのダンジョン。空気は淀み、カビと腐敗の匂いが鼻を突く。
ゼクスは、体の奥底で眠っていた細胞が歓喜に震えるのを感じた。
だが、現実は残酷だった。
数年間の「幸せ」という名の怠惰は、彼の反射神経を鈍らせ、野生の勘を錆びつかせていた。
かつてなら簡単に解除できた単純な罠を踏み、背後から迫る下級の魔物の爪が、呆気なく彼の背中を切り裂いた。
溢れ出す鮮血。薄れゆく意識の中で、ゼクスはこれまでにないほど深く、汚れた空気を吸い込んだ。
「……これだ。やっぱり、俺の居場所は、ここだった…。」
冷たい汚泥の上で、彼は満面の笑みを浮かべて絶命した。
後日、彼の遺体は家族の元へ運ばれた。
ギルドの職員は彼の最後を家族へ伝えた。
残された妻は、なぜ彼が全てを捨ててまで、そんな薄暗い場所で果てたのか理解できず、ただただ深い悲しみに暮れた。
それは安定という名の「暇」に殺されかけた男が、最後に手に入れたあまりにも残酷で、あまりにも自分勝手な「魂の生存」だった。




