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聖域

AIとの共同執筆です。

「……少し、疲れたな……。」

冒険者のデルフはひどく疲れていた。

ここ数ヶ月、彼は死地を巡りすぎていた。硫酸の雨をかいくぐり、仲間の悲鳴を背にモンスターの喉笛を掻き切る日々。心も体も装備品の耐久値までもが限界だった。

だからしばらくは「普通」な生活に戻るつもりだった。


穏やかな目覚め。獣臭のしない風。カビていない柔らかで焼きたてのパン。そして温かいスープ。

最初の三日は、それら全てが天国だった。だが、一週間を過ぎる頃から、奇妙な「疼き」が体に回りはじめる。

刺激のない毎日は、薄めた硫酸が肌を焼くようにじわじわと彼の精神を蝕んでいった。

「……ひまだな」

その夜、彼は街の少し高い酒場へと繰り出し隅で一人エールのジョッキを傾けていた。

そんなとき、彼の前に現れたのは、かつて夢を共にした友人たちだった。

今は皆、小綺麗な格好に身を包み、街で安全に暮らしているらしかった。

久しぶりの再会を祝し、各々近況報告も終わった頃、それは到達に始まった。

「聞いたか?東の街の公爵令嬢が、隣国の騎士と結婚するらしいぜ。政略結婚だのなんだのって、社交界は大騒ぎさ。」

「そういえば今街で流行りの吟遊詩人の話を聴いたか?『聖騎士の純白なる遠征』。あれこそが真の冒険譚だよな。真っ白なマントを翻して、一撃で巨竜を倒す……あんな生き方に憧れるぜ。」

また、別の友人は、隣の席の着飾った女の腰を抱きながら、中身のない自慢話に笑い声をあげた。

女は、自分の指先に塗った高そうな香料自慢と、他人の家の不祥事を嘲笑うことに熱中していた。

「あそこの料理屋、味は並だけど値段だけは一流よね。あんな店に行く人の気が知れないわ。」

「全くだ。あんな店に行くのは無能な政治家くらいなもんさ。媚びを売ってる連中も同類さ。」

冒険者はその雑音を聞きながら、自分の爪の間に残る「戦場の泥」を見つめた。

かつての友人達が語る貴族のゴシップも、吟遊詩人が歌う「理想的な冒険者」という名の虚像も、他人を貶めて悦に浸る言葉も。

それらはすべて、彼が現場で見てきた「本物の死」や「剥き出しの生」に比べれば、あまりに軽薄で、空虚な音の羅列に過ぎなかった。

かつてはあんなに楽しく話せたはずなのに…。

今、目の前を飛び交う言葉はどれも、温室の中で育てられた、根のない造花のように感じてしまった。

「……そうか」

彼は、疼く古傷をそっと撫でた。

硫酸に焼かれ、泥水を啜り、明日をも知れぬ闇を歩く日々。

オレはずっとあれを地獄だと思っていた。けれど、あの日々こそが、自分に「真実」に突きつけてくれていたのだ!

「オレ、そろそろ行くわ。」

そう一言言い残しデルフはテーブルに代金を置き酒場を後にした。


(なんやかやいろいろ大変だったし、一歩間違えれば死ぬかもしれなかった毎日。けれど、その全てが真実だったんだな。やっぱり冒険者って…楽しいや!)


デルフの心のモヤは完全に晴れていた。


もう、彼らに会うことはないだろう。


(よし、また明日から死地へと戻ろう!)


そう一人新たな決心をし、デルフは安宿へと帰っていった。

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