座標の到達者
AIとの共同執筆です。
ギルドの受付カウンターに広げられた大陸全土図は、もはや芸術品の域に達していた。
国家予算の数パーセントに匹敵する多額の資金を注ぎ込み、測量と魔法の粋を極めたギルド直轄の専門集団「マッピングマスターズ」が、数十年をかけて作り上げた人類の執着の結晶。一筋の川の湾曲から、名もなき村の裏路地まで、そこには世界のすべてが刻まれているはずだった。
だが、その完璧な地図の右下、座標[X-000/Y-000]。
最初からそこだけが「世界のバグ」であるかのような、不気味な空白が居座っている。
「あの、すみません、ここ、この白い部分は、何かの間違いですよね? 汚れたから消しちゃった、とかですかね?」
私がそこを指差すと、受付嬢は書類を整理する手を止めることなく、窓の外の天気を気にするような気軽さで言った。
「あー、それね。そこは、よくわからないのよ」
「……よくわからない?」
「そう。かつてマッピングマスターズっていう天才測量集団がいてね、そこを調査しに行って帰ってきたときにギルドマスターが『この空白地点はなんだい?』問い詰めたんだって。そしたら、彼ら、なんて言ったと思う? 『いや、あそこは……』とか、『ああ、えと……はい、その……』とか。まるで言葉を忘れた子供みたいに要領を得なかった。で、一週間後には全員、煙みたいに失踪。」
「失踪…!?」
彼女は「ええ。」と言いつつそこで初めて顔を上げ、少しだけ困ったように眉を下げた。
「でもね、ギルドもメンツってもんがあるじゃない?だから威信 にかけて、最高ランクの冒険者パーティーを何度も派遣したわ。ドラゴンスレイヤーに、空間魔法の権威、果ては伝説の隠密……。でもね、誰一人として辿り着けすらしなかった。方位磁石が壊れるわけでも、魔物に襲われるわけでもない。ただ、気がつくと元の道に戻ってるんですって。まるで世界がそこを拒絶しているみたいにね。」
私は唾を飲み込んだ。完璧な地図を管理するギルドが、公式に「敗北」を認めている地点。
「ただ、十年前かな。一組だけ、奇跡的に『辿り着いた』っていうパーティーが帰ってきたことがあったわ。彼ら、歴戦の猛者で、どんな地獄からも笑って帰ってくるような連中だったんだけど……」
彼女はふっと視線を遠くに飛ばした。
「ギルドの記録にはこう残ってる。リーダーは震える声で、『あれは……語ってはいけない。あそこは……ダメなんだ』と言葉を残しそれ以上は語らなかった。翌日、彼らも装備を残したまま、忽然と姿を消したわ。それ以来よ。ギルドがそこを『捜査対象外地域』として封印したのは。まあ、今でもたまに勘違いした英雄気取りが挑むけど、少なくとも私はその後ニ度と顔を見たことはないわね。」
彼女は再び、無機質な事務作業へと戻っていく。
「だから、あなたもあそこだけは見ないふりをしておきなさい。それが、この世界で長生きするコツよ。」
フラットに語られたそのやばすぎる事実は、地図の空白よりも、私の心に深く、冷たい「空洞」を穿っていった。
番号ーG2311V
事案名:座標[X-000/Y-000]における連続失踪および認識障害
発生地点:ギルド地図内、唯一の記述不能領域
概要:国家級プロジェクト「マッピングマスターズ」の崩壊、および精鋭冒険者による到達失敗の記録。到達者の証言は一様に支離滅裂であり、その直後に例外なく失踪。




