駒の記憶
AIとの共同執筆です。
冷徹な演算
その参謀、イザークの頭脳は、ギルド史上最高傑作と称されていた。
彼が立てる作戦に「敗北」の二文字はない。地形、天候、魔物の習性、そして味方の練度……すべてを数値化し、最短の勝利を導き出す。
だが、その内容は、あまりに人間性を欠いていた。
「私はただ、この世界という不完全な事象を、最も美しい論理で調律したいだけだ」
彼にとって、自分を含めた冒険者たちの命は、難解な数式を解くための「数字」に過ぎなかった。
消耗する命
イザークの指揮下に入ったパーティは、どんな強敵相手でも必ず勝利を収めた。
「ここで三人が盾になり、五分間耐えろ。生存率は約12%だが、それによって勝利の確率は極大化する」
彼は事務的な口調で、死を宣告する。そして、実際に勝利を手繰り寄せる。
仲間の屍が増えても、彼は眉一つ動かさない。
「予定通りの損耗だ。勝利という結果を得るための、不可避なコストだ」
その非情なまでの正当性は、味方の心の中に、魔物への恐怖をも上回る深い憎悪を堆積させていった。
想定外の叛逆
破綻は、ある大規模な討伐作戦の最中に訪れた。
イザークは、かつてないほど完璧な「必勝法」を提示した。それは、数百人の冒険者を戦略的捨て駒として配置し、魔王級の個体を確実に包囲・抹殺するという、冷酷極まる最適解だった。
「これですべてが片付く。数百の犠牲で、一国の安寧を買う。実に合理的な選択だ」
彼は自分で書いた作戦立案を手に、満足げにつぶやいた。
だが、彼の精緻な演算には、致命的な欠陥があった。
彼は、死の淵に立たされた人間の「絶望」と、それが生む「衝動」を、計算式に組み込むことができなかったのだ。
作戦開始の合図を出す寸前。
「…っ!?」
突然彼は血を吹き膝をついた。
彼の胸から短剣が一本突き出ていた。
それは敵の攻撃などではなく、かつて自らの采配で弟を「コスト」として散らせた一人の冒険者の剣だった。
「なぜだ……この一撃は非効率だ。ここで私を殺せば、作戦は崩壊し、君も死ぬことになる……」
溢れる血を抑え、呆然とするイザークに、冒険者は泣きながら叫んだ。
「効率なんてクソ食らえだ! 俺たちは…俺の兄貴はお前の数式を埋めるための数字なんかじゃない!」
イザークの頭脳が最後に導き出したのは、どれほど完璧な理論も、たった一滴の「感情」というノイズで容易に瓦解するという、あまりに無慈悲な解答だった。
彼は最後まで、自分がなぜ殺されなければならないのか、その「論理的な根拠」を脳内で検索し続けながら、誰にも看取られることなく冷たい土を噛んだ。
彼が「駒」と呼んで切り捨てた者たちの記憶。
その積み重なった怨嗟が、最後には最強の理論さえも叩き潰したのだ。
そうして彼の最後の作戦は失敗に終わった。
番号ーG2311V
事案名:軍師級参謀、味方による暗殺及び作戦失敗




