冒険をする者
AIとの共同執筆です。
ここまであらゆる不条理を見てきた「私」は、数多の理不尽な最期を記録してきた。
誇りを汚され、泥を啜り、人知れず消えていった命の数々。
これほど凄惨な「死の歴史」の積み重ねの上でなぜ人はなおも、この呪われた道を目指すのだろうか。
その答えの一端を、「私」はこのページに見た気がする。
呪いの精算
その青年、エドモン・ド・オルドリンデの身のこなしには隠しきれない気品があった。彼は歴史ある名門貴族「オルドリンデ家」の嫡男として生まれ、呼吸することさえ家名のため、政略のためという、感情を殺した青春を強いられてきた。
「お前の人生は、我が家の栄華を繋ぐための鎖に過ぎない」
その言葉に心が折れた夜、彼は家宝の剣一本だけを持ち出し、誰にも見送られずにあてのない旅へと飛び込んだ。
彼には一つ夢があった。それは「冒険者になる」ことであった。彼はある時「名もなき青年が冒険者になり名を上げドラゴンを討伐する」という英雄譚を読み、それまで無感動だった自分の人生に初めて血が通った気がした。それ以来、彼は家のためでも血のためでもない、ただ、今日を自分の意志で生き、明日を自分の足で踏みしめる。そんな生き様に心底憧れたのだった。
魂の自由
そうして彼は長い旅路の末、自分のことを誰も知らない街へとたどり着いた。早速ギルドへ行き、冒険者として登録はしたのだが、冒険者の生活は、想像以上に過酷だった。元貴族という肩書きは冒険者をする上でなんの役にも立たず、自分より明らかに身分が低いものに罵られる、そんな普通の貴族であれば筆舌に尽くしがたい屈辱を受けつつ、だが、エドモンは笑っていた。貴族という肩書き(呪い)を脱ぎ捨て、ただの一人のエドモンとして扱われる。実力だけが全てのこの世界で、彼は初めて「生きている」実感を得た。彼は誰より真剣であった。
彼は自分の出自を隠し、元貴族とは思えないほど汚れ仕事を買って出て街の人の信頼を得て、背中を預けられる戦友ができ、そして何より、出自など関係なく自分という人間を愛してくれる女性と出会った。
「これだ! これこそが、俺の求めていた生きる道だ!」
彼は、親に与えられた冷たい銀食器よりも、仲間と囲む焚き火の煙たいパンの方が、ずっと豊かであることを心底肌で実感していた。
運命の終止符
しかし、運命は唐突に、そして平等に幕を引く。未踏の遺跡を探索中、仲間の危機を察知したエドモンは、反射的に身体を投げ出した。足元の床が崩れ、彼が落ちた先には、古代の処刑用トラップが口を開けていた。
それは、目を背けたくなるほど壮絶な死だった。鉄杭が彼の四肢を貫き、内臓を無惨に抉った。駆け寄った仲間たちが絶叫する。愛した女性が狂ったように彼の名を呼ぶ。だが、噴き出す血の泡を吐き出しながら、エドモンの瞳は驚くほど澄んでいた。
事切れたエドモンの顔には、かつての貴族時代には決して浮かぶことのなかった、満足げな、清々しいほどの微笑みが刻まれていた。金で雇われた召使ではなく、死地を共にした本物の仲間に看取られて最期を遂げた彼に、不満などあるはずもなかった。
名声の逆説
彼の壮絶な最期は、生き残った仲間たちによって涙ながらに語り継がれた。そしてその過程でギルドの調査により、彼が実は名門貴族の嫡男であったことが判明する。
皮肉なものだ。彼は家名を捨て、貴族には全く相応しくない泥まみれの死に方をした。しかし、人々は「これこそが真に高潔な魂の持ち主だ」と彼を称え、その名と物語は皮肉にも彼が捨てた家名を後世まで広く語り継ぐものとしてしまったのだ。
家を捨てた男が、結果として家名を不滅のものにしたのだ。
自分の意思で自分の生き方を決める。
過酷で残酷だがこれこそ人々が冒険者に憧れる理由のひとつなのかもしれない……。
しかし、忘れてはならない。
彼の最期は「壮絶な死」であったことを。
彼の生き様からは学ぶべきことがたくさんあるが、彼の死に様は避けられるのであれば避けるべきものであったのだ。
残された者たちのためにも…。
番号ーG1124H
事案名:元貴族籍冒険者、遺跡内罠による身代わり死亡




