粘液のむくい
AIとの共同執筆です。
「なあ、これ……意外とイケるんじゃないか?」
新米冒険者のロバートは、焚き火のそばで、先ほど捕獲したばかりの『グリーンスライム』をナイフで突いていた。
その日の探索は空振り。保存食も底をつき、空腹が彼の理性を狂わせていた。
「やめとけロバート。スライムなんて何が混じってるか分かったもんじゃない」
「でもよ、見た目はゼリーだぜ? 魔法使いがポーションの材料にしてるんだ、毒なわけないだろ。ちょっと味見するだけだって」
ロバートは仲間の制止を振り切り、ナイフの先に付着した透き通った粘液を、ペロリと一舐めした。
1. 「消化」の開始
「……ん、味はしねぇな。ちょっとピリッとする……あ」
それが、彼の最後のまともな言葉だった。
スライムの粘液は、ただの液体ではない。「生きた消化酵素」の塊である。
口内の粘膜に触れた瞬間、スライムの細胞はロバートの組織を「餌」と認識した。
舌の表面が白く変色し、熱せられた鉄を押し当てられたような激痛が走る。慌てて吐き出そうとするが、粘液は驚異的な付着力で口腔内に張り付き、喉の奥へと滑り込んでいった。
「カハッ、ア、アガ……ッ!」
ロバートが喉を掻きむしり、地面をのたうち回る。
喉の奥では、スライムの強酸成分が食道の粘膜をドロドロに溶かし始めていた。普通の毒なら吐き出せば済むが、これは「食べている最中の生物」なのだ。
2. 内側から溶ける恐怖
「おい、しっかりしろ! 水だ、水を飲ませろ!」
仲間が慌てて革袋の水を口に流し込む。しかし、それが火に油を注いだ。
水を得たスライムの活性はさらに高まり、希釈されるどころか流動性を増して、一気に肺へと流れ込んでいく。
ロバートの口からは、血の混じったピンク色の泡が溢れ出した。
胃壁は内側から穿たれ、漏れ出した胃液とスライムの粘液が混ざり合い、彼の内臓を「スープ」へと変えていく。
「……助けて……くれ……」
かすれた声すら、もう出ない。声帯が溶け落ちたのだ。
ロバートの腹部は不自然に膨らみ、皮膚越しに「何か」が蠢いているのが見える。スライムは死んでいなかった。宿主の栄養を吸収し、その体内で増殖を始めていたのだ。
3. 処理班の溜息
翌朝、ギルドから派遣された遺体処理班は、ロバートだった「肉の塊」を見て深く溜息をついた。
「またか。スライムを食えると思った馬鹿は、今月で三人目だ」
ロバートの死体は、すでに人型を保っていなかった。
腹部は弾け、そこから這い出したスライムは、昨日よりも一回り大きく、血の色を反射して赤黒く輝いている。
「これ、遺体はどうします?」
「回収不能だ。全体を石灰で焼くしかない。骨まで溶けてるからな」
ギルドに届けられたのは、溶け残った彼の錆びたバックルと、依頼失敗の請求書だけだった。
「英雄」を夢見た若者の命は、最弱モンスターの「昼飯」として処理されたのである。
ギルドからの報告と警告
報告番号: G-0003S
事案名: 登録者ロバート、魔物の誤食による全身損壊死
概要:
新人冒険者ロバート氏は、食料欠乏を理由に、自力で捕獲した野生のスライムを未調理のまま摂取。口腔内および内臓各所の化学的・生物的な融解により死亡しました。
調査結果:
野生のスライムは、強力なタンパク質分解酵素と強酸を有しており、摂食は自殺行為に等しいものです。錬金術で使用されるスライム核やポーション材料は、厳重な中和工程を経て初めて安全に使用可能となります。また、一部の地域で食用とされる「食用スライム」とは種が全く異なります。
警告:
全ての冒険者の皆様へ
• スライムは「飲み物」でも「ゼリー」でもない: あれは「歩く胃袋」です。触れるだけでも皮膚を侵し、体内に入れば内側からあなたを完食します。
• 「見た目」に騙されるな: 透明で美しいからといって、それが安全である証拠にはなりません。自然界において、鮮やかで美しいものは往々にして致命的な毒を持ちます。
• 空腹は最大の敵だが、無知はそれ以上の敵である: 飢えを凌ぐために手を伸ばしたものが、あなたの人生を終わらせる最後の一口になります。
あなたがスライムを「旨そうだ」と思った瞬間、スライムもまた、あなたを「旨そうな苗床」だと認識しています。




