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不壊の代償

「見てくれ。これこそが『不壊の加護』が宿った究極の全身鎧だ」

重戦士のダグは、全財産を注ぎ込んで手に入れたその装備を撫でて、得意げに鼻を鳴らした。

鏡のように磨き上げられた装甲は、伝説の魔法銀を惜しみなく使用し、ある変屈な鍛冶師が「絶対に壊れないこと」だけを追求して鍛え上げた入魂の一品。その輝きは、いかなる邪悪も跳ね返すかのように見えた。

1. 完璧なる外殻

ダグはこの鎧に全幅の信頼を寄せていた。

が、本当にどこまで頑丈なのか試したくて居ても立っても居られなくなった彼は巨大な木槌を振り回す山嶺の巨人ヒル・ジャイアントの討伐に仲間と共に向かっていた。


「避ける必要はない! この鎧に傷を付けられるものなら付けてみろ!」

ダグは回避を捨て、巨人の一撃を真正面から受け止めるという、もっとも愚かな選択をした。

2. 絶望の「成功」

巨人の放った渾身のフルスイングが、ダグの胸部を直撃した。

カァァァン! という、戦場には不似合いなほど高く澄んだ、美しい金属音が響き渡る。

手を出すな、と言われていた外野が

巨人が去ったのを確認しに砂塵の中を進むと立っていたのは、微動だにしないダグの姿だった。

「……すげえ、本当に防いだ!」

「おいダグ、生きてるか!? 無傷じゃねえか、その鎧!」

仲間たちは歓喜し、ダグの元へ駆け寄った。しかし、近づくにつれて彼らは異変に気づく。鎧は新品同様の輝きを保ったまま、彫像のように固まっていた。

3. 皮肉な構造

「おい、ダグ……?」

仲間の一人が肩を叩いた瞬間、ダグの体が糸の切れた人形のように崩れ落ちた。

よく見ると、完璧に無傷な鎧の継ぎ目という継ぎ目から、ドロリとしたどす黒い液体が溢れ出していた。

鎧の装甲は「壊れない」という一点において完璧すぎた。衝撃を受けた際、装甲は一切変形せず、エネルギーを逃がすこともなかった。その結果、行き場を失った衝撃波はすべて内部で反射・増幅し、ダグの肉体を一瞬で粉砕したのだ。

もし彼が骨を持たない無脊椎動物か、殻に筋肉が張り付いた昆虫であったなら、この「外骨格」は彼を守ったかもしれない。だが、悲しいかな彼は柔らかな肉と芯のある骨を持つ「人間」だった。

ヘルメットの隙間から溢れ出したのは、かつてダグだったものの成れの果て。その「中身」が失われた後も、鎧だけは傲慢なほどに美しく輝き続けていた。

ギルドからの報告と警告

番号ーG1809M

不壊の棺

【概要】

登録者ダグ氏は、物理的破壊耐性のみに特化した特殊鎧を着用。上位魔物の打撃を受けた際、鎧自体は無傷であったものの、衝撃波が内部で反射し、装着者がシェイクしたプリンのようになって死亡した。


事案名: 登録者ダグ、過剰な耐性獲得による救護不能および死亡


【調査結果】

回収された鎧を調査しましたが、微細な傷すら発見できませんでした。装着者のダグ氏は、内骨格生物である自らの身体構造を無視し、無脊椎動物のような防御理論に命を預けるという致命的なカテゴリーエラーを犯していました。鎧の継ぎ目から漏出した「内容物」が、その理論の破綻を証明しています。

【警告】

全ての冒険者の皆様へ

• 防具は「身代わり」であれ: あなたの代わりに凹み、あなたの代わりに壊れる防具こそが、良質な防具です。

• 自分の生物学的限界を知れ: あなたはカブトムシではありません。硬い殻を被っても、中身がただの人間なら、強い衝撃で中身だけが剥離し、潰れることを自覚しなさい。

• 道具は良ければ良いほどいい。ただし、その性能に人が見合うかはわかりません: 道具が無事でも、中の人間が壊れればその道具はガラクタ以下のゴミです。


この鎧は、そのあまりの「無傷っぷり」から、現在はギルドの展示室で「世界一綺麗な遺品」として飾られていますのでよろしければ一度ご覧ください。

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