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第7話

 午前中は普段通りに過ごそう。


 いつもなら映画を一本観るな。


「今日はどれにしようかな ?」


 突然、あるタイトルが目に留まった。


『花束みたいな恋をした』


 このタイトル、甘い恋愛話って感じだな。青春真っ盛りの俺は恋愛に興味津度だ。


 マウスの左クリック。映画が画面いっぱいに広がり、バッファリングが始まる。



 トントン――


 またしてもドアがノックされた。


 心の中では分かっていた――結愛に違いない。


 だって昨日、聞きたいことがたくさんあるって言ってたからな。


 それに、あの――恋愛の話も。


「どうぞ !」


 ヘッドフォンを外し、スペースキーを押して一時停止する。


 結愛がそっとドアを開け、控えめに中に入ってきた。


「ありがとうございます、清司くん」

「全然。それで、やっぱりベッドに座ってくれて良いよ」

「ええ……」


 言いたいことがありそうな顔なのに、なかなか口を開かない。


 このままじゃ、こっちから――


「そうだ、結愛。昨日、俺に聞きたいことがあるって言ってたけど ?」

「あっ……それは、清司くんと学校についてのちょっとした質問で……は、はは……」


 胸の前で両手を振りながら、慌てふためいている。


 彼女の視線が俺の机の上に落ちる。


「清司くん、今から何かするんですか ?」

「映画を観ようと思ってたところなんだ……」

「あぁっ !本当にすみません、映画の邪魔しちゃって !今すぐ出ていきます !」

「いいから、早く座ってよ」


 映画を観ようとしてたことを知ると、慌てて謝罪し、立ち上がろうとした。


 俺は手を振って、座るよう合図する。


「気にしないなら……一緒に観ない ?」

「え、えっ……いいんですか ?」

「もちろん !結愛が良ければね」

「はい、お邪魔します……」


 ノートパソコンを持ち上げ、ベッドの上に置く。そして俺もベッドにうつ伏せになる。


 ベッドの左側に移動し、右手で右側のスペースをポンポンと軽く叩く。


 結愛は少し戸惑ったようだが、最終的に俺の隣にうつ伏せになった。


 彼女の白い肌はすぐに赤みがかり、耳の付け根まで真っ赤になった。


 俺の表情は平静を装っていたが、心臓はごまかせない。もう飛び出しそうな鼓動だ!


「その……結愛、観たい映画ある ?どれでも良いよ」

「うん……映画とかあんまり詳しくなくて……清司くんの観たいので大丈夫です……」


 彼女と初めて会った時、聴きたい音楽を聞いた時もそうだった。彼女は俺の好みに合わせようとしている。


(これから、ゆっくり彼女のことを知っていかないとな。)


「じゃあ、これで良い ?」

 パソコンの画面を指さす。

「『花束みたいな恋をした』、名前がロマンチックだね !」

「私もそう思います !それでお願いします!」

「はい、はい !」


 彼女のテンションは少し高めで、昨日とは全く違う。


 多分、この方がいいんだ……「家族」として。


 スペースキーを押そうと手を伸ばすが、何か柔らかな感触が手の甲に伝わる。俺は素早く手を引っ込めた。


「あ !ごめん !触っちゃった !わざとじゃないんだ !」

「大丈夫です !清司くん !私の方こそ……近づきすぎました……」

「すまん……次から気をつける……」


 もう一度左に体を寄せた。あまり良い視点じゃないけど……これで結愛を嫌な気持ちにさせることは避けられる。


「清司くん ?」

 結愛が突然俺の名前を呼んだ。

「ん ?どうした ?」

「それじゃあ、映画見えていますか ?」

「はは……見えてるよ……」


 苦笑いを浮かべるが、仕方ない。


「ダメです !こっちに来てください !早く!」

「あ……わかった……」


 彼女の態度が突然強気になった。こんなに真剣な彼女を見るのは初めてだ。


 断るわけにもいかず、さっきの位置に戻る。


(うわぁ……威圧感がすごい…… !!!怖い !)


「私に触れても平気です !だって私が映画の邪魔をしたんですから……」

「それは青春真っ盛りの男の子に簡単に言うセリフじゃないんだよ……」


 本当に心配になる。そんなこと簡単に口に出しちゃだめだよ……


「清司くんだからそう言うんです !私は軽い女の子じゃないんです !」

「あ……ごめん……そんなつもりじゃ !」


 決して結愛が軽い子だなんて思ってないよ!


 彼女の表情は怒っているようには見えず、むしろ口元がほころんでさえいた。


「もちろん分かってます。冗談ですよ~」

「良かった……でもそう言われるとちょっと嬉しいな……」


 彼女が怒っていなければそれでいい。同い年の女の子にそんな風に言われるのは初めてで、ちょっと嬉しかった。


(調子に乗っちゃだめだ !彼女と知り合ってまだ二日目だぞ !)


 楽しく話していると、パソコンから鉛筆で書く音が聞こえてきた。


「2020」の文字が目に飛び込んでくる。


 映画が始まった。

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