第6話
ああ、今日で休みも最終日か。時間の流れは早いな。
明日からは、俺は本当の高校生だ !
青春 !待ってろよ !
「わあ、いい匂い !」
ダイニングから美味しそうな香りが漂ってきて、お腹がぐーっと鳴った。
結愛と母がキッチンで料理をしている。
(早起きだな……もっと寝ててもいいのに)
休みだというのに、両親は普通に出勤する。でも結愛は学校もないし、昨日あれだけ疲れてるのに、こんなに早く起きるなんて。
さっと洗面を済ませ、キッチンへ向かう。やっぱり朝はコーヒーがないとな。
「おはよ~」
「あっ !おはようございます、清司くん!」
「うっ !おはよう……結愛」
名前で呼ばれるのは、やっぱり慣れないな。心臓の鼓動が早い。
(何で俺、頬が熱いんだよ!家族なんだから!)
「うん~、もう名前で呼び合ってるんだ~。仲良しだな~、あああああ~」
「母さん !親って立場をわきまえてください !」
「別にいいじゃない~。だってこの二人、いつか結婚するんだし~」
「ああああ !もう言わないで !」
コーヒーを淹れている手が震えた。体温が急上昇、多分顔も真っ赤だろう。
「清司~、顔が真っ赤だよ~ ?照れてるの~ ?」
「母さん、さっさと料理に集中してよ。俺、行くから」
コーヒーカップを手にキッチンをあとにする。手の震いがひどくて、コーヒーをこぼしそうになった。
さっきは緊張しすぎて、結愛の反応をしっかり見ていなかった。
多分、彼女も同じ気持ちなんだろう。
結婚なんて、両想いじゃないとダメだ。親は結愛の気持ちを全然考えてない。
結愛にも好きな人がいるかもしれないし、やりたいこと、将来結婚したい相手だっているだろうに。
『ったく、無茶苦茶だ……』
ソファに座ってコーヒーを飲みながら、テレビでは昨日のニュースが流れている。
『明日はいよいよ始業式。各学校では入学式の準備が進められています』
『桜もまた時期を同じくして咲き誇り、生徒たちは新たな学年を迎えます』
明日から学校かと思うと、なんだかやる気が起きないな!なぜ休みはあんなに早く過ぎ去ってしまうんだ ?
「清司、明日から始業式よ !午後は買い物に付き合ってもらうからね」
「母さん、仕事でしょ ?俺一人で行っていい」
「え~、じゃあ結愛ちゃんと一緒に行きなさいよ~。彼女も学用品まだ準備してないし~」
「別にいいけど。結愛は ?一緒に行く ?それとも俺がついでに買ってくる」
結愛は食パン二枚をトースターに入れながら、少し迷っているような表情を浮かべた。
「私……行きます」
「良かったわね結愛~。ついでに清司に近所を案内してもらいなさい~」
母は結愛の頭をそっと二回撫で、目は溺愛そのものだった。
「じゃあ、まずはご飯にしましょう~。食べ終わったらリストを渡すからね」
「はい」
父も起きてきて、ちょうど朝食が完成した。
四人で朝食を囲むのは、これが初めてだ。
「旦那さん、午後は清司と結愛ちゃんが一緒に買い物に行くんですって~」
「なに !もうデートか ?さすが俺の息子だな !」
「父さん !普通は反対するんじゃないの ? !」
「別にいいじゃないか !お前は俺の息子だ、応援するよ !」
「あんた……もうダメだ……」
「でもちょっと心配だわ~。だって結愛ちゃんこんなに可愛いんだから、ナンパされたらどうしよう~」
母は顎に手を当て、じっと俺を見つめる。
「叔父さま、叔母さま!ご心配なく……私、私……清司くんなら頼りになると思います……きっと私を守ってくれます !」
「あら~、結愛ちゃんがそう言うなら問題ないわね。そうでしょ……清司 !」
待て !なんで俺への口調だけがこうなるんだ !差別だって訴えていいのか !
「はは……まあ、多分大丈夫……でしょう」
「多分じゃなくて、絶対よ !わかった、清司 !」
「わかったよ !母さん、安心してて !」
朝食はとても豪勢だったけど、両親にからかわれ続けたせいで、ほとんど味わう余裕がなかった。
ただ、驚いたのは結愛も料理ができることだ。
食事が終わると、両親は仕事に出かけた。
つまり……
今、家には俺と結愛だけが残されたわけか?!
高校生(明日からだが)男女、二人きりだ! ! !




