第4話
午後一時、ようやく俺たちは家に着いた。
俺の家はごく普通の一戸建て。住むには十分な広さはあるけど。
(……彼女の家には及ばないよな。気に入ってくれるかどうか)
父と一緒に彼女の荷物を玄関まで運ぶ間、彼女は母と中に入っていた。
彼女の新しい部屋に着くと、ドアは開け放たれていた。
荷物は全部で五つ。どれも結構な重さだ。
「そうだ !部屋を見てごらん」
母が彼女を連れてやって来た。
彼女は驚いたような表情で、どうやら部屋を気に入ってくれたみたいだ。
「わあっ !こんなに素敵に飾ってあるんですか !本当に……ありがとうございます!」
「気に入ってくれたなら何よりよ」
母は彼女の肩をポンと叩いた。
「そろそろご飯の支度をするわね。二人でゆっくり話してて。何かあったら遠慮なく彼を使っていいから~」
母がそう言って出て行き、部屋には俺たち二人だけになった。
気まずい空気が周りを包み込む。俺はこっそり彼女を見る。
(緊張する ! ! !女の子と二人きりなんて !ギャルゲーかよ ? !)
「えっと……手伝おうか ?」
「うっ !では……お言葉に甘えて……」
彼女も緊張した笑顔を見せ、視線をそらした。
言葉を受けて、俺は適当な箱を一つ開けた。
「わっ !こ、こ、こ、これは…… !」
箱の中身を見た瞬間、思わず声をあげてしまい、慌てて目を閉じ、箱を閉めた。
頬が熱くなるほど赤くなり、心臓が飛び出しそうだ。
「これ……自分でやってくれ……」
彼女に箱を押しやった。
「は、はは……そうですね……」
彼女の表情が一瞬固まり、頬を赤らめた。
他の箱を開けると、どれも普通のものばかりで、ほっと一息ついた。
『さっきの……あれは……下着だよな』
(間違いない !絶対だ !変態だと思われたんじゃないか ?絶対そうだ !)
心の中でそう思い、さっきの光景が頭をよぎると、慌てて首を振った。
初めて会った日にこんなことになるなんて、最悪だ。誤解されたらまずい。
俺の作業はわりとてきぱきしていた。ボランティアでよく手伝ってたからかもしれない。
すぐに三つの箱の片付けを終えた。
日用品や洋服はきちんとクローゼットの中にしまった。
その中で、一つのフォトフレームを見つけた。彼女と家族の写真で、彼女はとても楽しそうに笑っている。
(妹もいるんだ……今日は会えなかったけど)
フォトフレームはベッドサイドのテーブルに飾り、残った空き箱は玄関のところに持っていき、後で捨てることにした。
彼女も残り二つの箱を片付け終え、汗だくでベッドに座り込んでいた。
「ご飯ですよ !」
母の大きな声が聞こえてきた。
「行こうか。ご飯だ」
彼女と一緒にダイニングへ向かう。
今日の料理は豪勢で、お腹がぐうっと鳴りそうになった。
「乾杯 ! ! !新しい家族を迎えて !」
四人でグラスを合わせ、彼女が俺たちの「家族」になったことを祝った。
でも、本当に家族なんだろうか ?
家族って血のつながりがあるものじゃないのか ?
彼女を見ると、ついに笑顔を見せてくれた。写真で見たのではなく、実際に目の前で見る彼女の笑顔だった。
食事の間、両親は彼女に今後の学校のことを話した。
彼女は俺と同じ高校で、しかも同じクラスだ。
「本当に……ありがとうございます !この恩は一生忘れません !」
彼女は茶碗と箸を置き、手を合わせるようにして深々と頭を下げた。
「とんでもない。当然のこと」
「そうだよ~気にしないで、私たちがしてあげたいことなんだから~」
「素直に私たちの好意を受け入れてくれればそれでいい」
「おじさま、おばさまがいなかったら、私どうなっていたか……」
「もう、いいの !それ以上は言わないで!」
母は突然彼女の言葉を遮り、箸の後ろ側で彼女の頭を軽くトンと叩いた。
「過去のことは過去。もう持ち出さない約束だよね ?」
「はい……」
「うん~それでこそ。今日は楽しい日なんだから !」
「はい !そうですね !」
彼女は再び笑顔を見せ、暗紅色の瞳に一筋の光が宿っているようだった。
「え~、一つ提案なんだけど~。二人で結婚したらどう ?」
「ああ、いいと思う!」
「本当だね~。パパもママも応援するよ」
なに?!冗談でしょ?
ご飯を噴き出しそうになった。
「や、やめろよ ! ! !食事中の冗談はやばいだろ、むせるから !」
振り向いて彼女を見ると、彼女は……まさか、壊れてる ?
「あああああああ……そ、そ、それなら……彼が良ければ……私私、私……そ、それでも……いいですああああああ、本当に……」
彼女の顔は熱さで赤くなり、体温の上昇がはっきり感じ取れた。
「もういいよ !冗談なんだから !早く正常に戻って !」
慌てて彼女に注意する。このままじゃまずいことになる !
「あああああ……しまった……」
(やっと正常に戻った。正直……ちょっと可愛かった……)
「はははははは~」
父母は突然笑い出し、二人を見つめた。
「可愛いね~」
「そうだな、君に似ているよ」
「何言ってるの、旦那さん~私の方がずっと可愛いでしょ~」
「ああ、そうだな。君はいつだって私の一番の可愛い子だ!」
「それでこそ~」
もう耐えられない ! ! !食事中だぞ、まだそういうことやってるのか ? !
「でも二人、本当にお似合いだよ~」
「ああ、もしかしたら将来は……」
「ありえない!絶対ありえないから !早く食べよう !」
父母の会話を遮った。
でも、彼女の不満を買ったみたいだ。
「絶対……ないんですか……ううう……」
「なんで君まで便乗するんだよ ! ! !早く食べろよ ! ! !」
彼女まで便乗してくるとは思わなかった、本当に……
「いや !俺が認めない !」
「パパ ?」
「決まった !二人は結婚しなさい !」
「何言ってるんだよ ! ! !」
「ママも賛成~おめでとう~」
「私私私……そ、それでも……いい……かも」
「お前ら、何やってるんだ ! ! !早く飯を食え ! ! !」
決まったって ? !俺の同意は ?俺の気持ちは考えてくれないのかよ……本当に……
今日の食事の味はほとんどわからなかった。
婚約が決まった ?あああアアアぁァぁァ!
(早く食べ終えて、ここから逃げよう。)
「さすが私の息子~。照れてる様子も可愛い~」
「ああ !父親として嬉しいよ !」
「もう……」
(そういえば、彼女の名前、まだ知らないな……食事が終わったら聞いてみよう)
食事を終え、俺は部屋に戻り。
「まだ恋愛もしたことがない……もう縁談が決まるなんて……」
トントン――
またドアが鳴った。




