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愛されてはいけない理由  作者: ねここ


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 マリアは部屋に運ばれ、まるでゴミを捨てるようにベッドに放り投げられたが、すぐに起き上がり兵士を追いかける。

(ここから逃げなきゃ)

 だが兵士はバタン、と勢いよくドアを閉め施錠をし去っていった。

 それでもマリアは諦めずドアを叩く。

「開けて!開けて下さい!」

 マリアは再び閉じ込められてしまった現実を受け入れられない。偽物だとわかってもらい、釈放されると信じていたのだ。

 ドアを叩く手に力が入る。ドンドン、と何度も叩くがその音だけが虚しく廊下に鳴り響くだけだ。


(なぜこんなことになってしまったの?)


 マリアはソフィの顔を知らない。似ているのか似ていないのか、髪の色、目の色も本当はわからない。ウィッグの色は金色だったが本当に金色なのかわからない。

(人違いだと言ったけど信じてもらえない。どうしよう、どうしよう……)


 今朝感じた余裕はつゆと消え、今目の前にあるのはこの先の不安だけだ。叫んだからなのか、口の中はカラカラに乾き、胸が押しつぶされそうになる程苦しい。

 モヤモヤした気持ちと先の見えない恐怖が入り混じりいても立ってもいられなくなる。

 

ヒールを脱ぎ裸足で右往左往し、これからどうすればいいのか考える。

(エリゼ、あの人が私がソフィじゃないと認めてくれたらどうにかなるかもしれない。王様が違うといえば偽物だとわかってもらえる!!とにかくエリゼと話したい)


 マリアは再びドアを叩き大きな声で話し始めた。

「すみません、どなたかいませんか?王様この近くにいませんか?エリゼ様!!お話しがしたいの!すみません!!ここ開けていただけません?」

「エリゼ様!!お話が……したいです!!」

 

 マリアはドアを叩きながら叫んだ。だが何の反応もなく廊下は物音一つしない。誰もいないのか、それともいても狂人だと思われているのか全く反応がない。

(どうする?一刻も早く誤解を解かなければ最悪処刑されてしまうかもしれない。それだけはいやだ!!)


 マリアはドアを激しく叩き足で蹴り始めた。


「誰か、誰かいませんか?絶対いるでしょ?こんな所に無罪の人間を閉じ込めて!王様の命令か何か知らないけど、これはね、パワハラっていうのよ!!私の世界ではこれは罪よ!!!」

 先ほどまでは絶望を感じていたマリアの心は次第に怒りに変わる。不当な扱いを受けているこの現実を受け入れることはできない。

 「いいですか?!これはパワハラに監禁罪よ!!これは歴とした犯罪ですよ!!王様あなたもこの間の王様と同じではありませんか?」

 マリアはドアを叩き、それから足で何度も蹴った。

 

 ギギッ

 

 ドアから不穏な音が聞こえた。それでもドアを蹴る。だがとうとうドアが外れマリアはドアと共に部屋の外に転がっていった。

「キャー!!」

 ゴロンゴロンと何回転もし、マリアはそのまま対面の壁にぶつかり仰向けに倒れた。その衝撃の痛みを感じる間も無く周りに兵士と使用人たちが驚きの表情を浮かべ倒れたマリアを取り囲んだ。

(ど、どうしよう、大変なことをしてしまった……)

 マリアはすぐ様状況を飲みこみ何事もなかったかのように立ち上がった。汚れたスカートの裾を両手でパンパン、と払い笑顔を浮かべ言った。


「あ、お騒がせしてすみません。逃げません、私は、逃げませんけど、あの、王様はどちらでしょう?ドア、壊しちゃってすみません、この立て付け、悪いみたいですね、アハハハ」

 

 そう言いながらドアを定位置に戻そうと、倒れたドアのドアノブを引っ張り上げようとした。しかし勢いよく倒れたドアはその衝撃でドアノブが壊れ、引っ張り上げた瞬間にドアから外れた。引き上げようとした勢いが行き場を無くしマリアはそのまま後ろに転がって行った。


「きゃー」


 今度は後方にニ回転し、うつ伏せに倒れた。

(何しているんだろう)

 何をやっても思い通りいかない現実にマリアの視界は滲んだ。こんなことで泣きたくはない。けれど、泣く以外に気持ちを発散する方法が無いのだ。


「うぅっ……なんで、なんでこんな目に……人を騙すなんて、私が何をしたの?こんなわけわからない世界にきちゃって、こんなことに巻き込まれて。か、帰りたい……」


 体を起こし、溢れる感情を堪えられず泣きはじめた。堰を切ったように悲しみが涙と共に溢れ出る。ポロポロと溢れる涙は廊下の絨毯の上に幾重にも重ねられた花びらのような模様を描く。マリアは俯きその様子を見ながら唇を結んだ。 


「ソフィ、大暴れだな」


 エリゼが現れマリアを覗き込ながら話しかけた。マリアは顔をあげエリゼを見る。だが次から次へと溢れ出す涙でエリゼの顔が滲み見返すことができない。けれどこれだけは言いたいとマリアは嗚咽を堪えながらエリゼに言った。

「ソ、ソフィじゃありません」

 マリアはそれだけ言って顔を隠すようにうずくまり泣き続けた。


「もうこの部屋は無理だな。移動しよう」


 エリゼはそう言って使用人にシーツを持ってくるように言い、そのシーツをマリアにかけ、それから泣き続けるマリアを抱き上げ歩き出した。 

 

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