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愛されてはいけない理由  作者: ねここ


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神はマリアを許さない

 「ニーナさん!!」


 マリアはその女性を知っていた。

 

 花柄のワンピースを着て倒れているのは、あの青年の妹。

 

 マリアは気を失っているニーナの体を抱き上げ声をかけ続けた。


 

 そこにマリーザが戻ってきた。


「マリア様?? この方は!?」


「説明は後で、誰かを呼んできてください!!」


 マリアはマリーザに指示する。マリーザは走って城に戻り使用人を呼んできた。

 倒れているニーナを城の中に連れ空いている部屋にニーナを寝かす。


 マリアはニーナの手を握り声をかけ続けた。



「マリア様、エリゼ様がお戻りです」


 ニーナの手を握り続けるマリアに、マリーザが声をかける。

 マリアは我にかえりマリーザに事情を話した。


「マリーザ、この人は私と同じ異世界からきた人で私の知り合いです。マリーザ、お願いです。ここにいてニーナさんを見ていて欲しいです。ニーナさんが気がついたらすぐに知らせて下さい。突然のことで本人も動揺するかと思いますので……」


「はい、マリア様、お任せください」

 

 マリアはニーナをマリーザに託し、エリゼの待つ部屋に向かう。


 だが、足取りは重い。逃げられない過去、忘れたい過去がマリアを追いかけここまでやってきた。


 部屋に戻る途中、足を止める。

 

(私が幸せになることは、許されない)


 動揺し震え始める。


(異世界に来て全てをリセットし生き始めた私を、神は許さない)


 幸せだった気持ちが恐怖に変わる。

 本当のマリアを知ったらエリゼはどう思うのだろうか? 不安に喉が押しつぶされる。

 

 知られたくない。隠せるなら隠し通したい。

 卑怯だと言われても、愛する人に知られたくない。


 マリアは唇を結び、歩き出す。 


 あっという間にドアの前に到着した。


 ここを開けたらエリゼがいる。

 気持ちを整え何事もなかったかのようにドアをノックした。


「マリアです」


「マリア!」


 エリゼがドアを開け嬉しそうにマリアを出迎える。その笑顔が刃となり胸につき刺さる。


「エリゼ様、お疲れ様でした。今日はごめんなさい」


 マリアは心とは裏腹に精一杯の笑顔を浮かべ言った。

 

「……マリア? どうかしたのか? 元気がないように見える」

 

 エリゼはマリアの頬をそっと撫でながらマリアをみつめる。


 その美しい瞳を見たマリアに罪悪感が襲いかかる。まともにエリゼの顔が見られない。

 マリアは視線を逸らし、手元を見つめる。


(ああ、どういえば良いのだろう)


 心が闇に囚われるような感覚に陥り、マリアはそれを振り払うように顔をあげ笑顔を作り、エリゼに話しかける。

 

 

「エリゼ様、今日はごめんなさい、あ、そうだ、ドレス! 本当にありがとうございました、とても綺麗で……」


 そう言いながらエリゼから離れドレスのフレアーを両手で広げた。


 

「あ、」

 


 裾部分に土がついている。ニーナを助けた時に汚れたのだ。


「マリア、それはどうした? 何かあったのか?」


 エリゼは汚れを見て笑顔の消えたマリアの手を掴み聞いてきた。


(やっぱり、隠せない)


「……実は、異世界から女性があらわれました。た、たまたまその現場に遭遇して」


 マリア言葉に詰まりながら話し出す。

 エリゼを真っ直ぐに見れない。


「なんだって? 異世界から? どうしてわかる?」


 エリゼは目を逸らすマリアを見つめる。


(嘘はつけない……)


 マリアは目を瞑り、覚悟を決め目を開けた。

 エリゼは真剣な表情でマリアを見ている。マリアもエリゼから視線を逸らさず重い口を開けた。


 

「その人、知っている、人だからです」


「まさか? マリアの友達?」


(友達だったらどれだけ良かった。やっぱり、言いたくない、エリゼ様には、言いたくない)

 

 マリアは答えられない。


(でも、いずれわかる事、過去に何をしてしまったのか)

 


「あ、えっと、」


(情けないほど怖い。エリゼ様が真実を知ったら、軽蔑される!)



 

「マリア、言わなくて良い。大丈夫。心配するな」


 エリゼは口籠るマリアを引き寄せ抱きしめた。


(ごめんなさい、あなたに言う勇気がないほど、あなたを愛してしまいました。こんなにずるくてどうしようもない私。折角この世界に来たのに、変わろうと思って生きてきたのに、何も変わっていない。私は変われない)


  *


 エリゼはマリアの変化を感じていた。マリアは明らかに動揺している。


(その理由はきっと俺に知って欲しくない過去の事だ)

 

「マリア、着替えておいで」


 エリゼはマリアの頬にキスをし、メイドを呼んだ。


 マリアはメイドに連れられ部屋から出ていった。


  *


 異世界からマリアの知り合いが現れた。


 恐らくマリアはその人物と俺を合わせたくないと思っている。

 なぜならその人はマリアの過去を知っているからだ。


 すぐにその人間を別の場所に連れて行こう。


 マリアがあれほど動揺するなど、それほどの人物。マリアにとって招かれざる客だ。


 早々に対処しなければ。


  *


 コンコン


 ドアがノックされた。


「なんだ?」


「マリーザでございます。異世界の方が起きたとマリア様にご報告に参りました」


 エリゼはその言葉を聞きドアを開けマリーザに言う。

 

「わかった。マリアに伝えておく。マリーザ気になることがある。その人間がどんな人物か見極めてくれ」


「かしこまりました」


 マリーザはエリゼに頭を下げ、ニーナの元に戻る。


 エリゼはドアを閉めため息を吐いた。

 

(嫌な予感がする)

 

 マリアが見えない力でどこかに引っ張られていってしまうような、そんな不安を感じた。

 


「エリゼ様、お待たせいたしました」


 マリアが着替えて戻ってきた。エリゼはマリアを抱き上げソファーに座った。


 マリアは驚いた顔をしエリゼに微笑む。だが、その瞳の中に暗い影がみえた。


「マリア、今マリーザが来てマリアの知り合いが目覚めたそうだ。マリアはどうしたい?」


 エリゼは胸の中のマリアを見つめ聞いた。


「行かなきゃ、ニーナさんが目を覚ましたなら不安がるから行って大丈夫だと言わないと!」


 マリアは起きあがろうとした。が、エリゼはマリアを離さない。


「エリゼ様?」


 難い表情を浮かべるエリゼを見てマリアはエリゼが何かを感じたのだと悟った。


 (過去が知られてしまう)

 

 急激な不安に襲われ体が緊張で強張り始める。


 

「マリア、ここはマリアがいた世界では無い。ここにはここの生き方がある。お前は関わらなくてもいいのだ」


 マリアの変化を瞬時に感じたエリゼは言った。


 エリゼのその言葉に緊張が解ける。関わらなくていい、エリゼのその言葉はマリアを安心させる。


「エリゼ様、ありがとうございます。でも、知らない人じゃないから放っておけません。だから」


「わかった。マリアの好きにすればいい。だけどマリア、俺はマリアが一番大切だ。それは何があっても変わらない。それだけは忘れるな」


 エリゼはマリアの額にキスをした。

 

 その言葉にエリゼの気持ちを知る。エリゼは何があっても味方だといってくれている。本当のことを言う勇気はまだない、だが、向き合う気持ちが生まれ、マリアは心を立て直した。


「心に留めておきます」


 マリアはそう言って部屋を出ていった。



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