ダークサイド・スーサイド 異世界に来た理由
このお話を読んでくださる皆様へ。
いつもありがとうございます。
51話からこの53話まで、暴行、自殺などの表現があるくらいお話となっております。
苦手な方は54話からお読みいただいても繋がるよう書いてございます。
ご迷惑をおかけいたしますが、どうぞご理解の程、お願い申し上げます。
ありがとうございました。
ねここ
人の悪意は心を殺す。
私に刺されて殺されたあの男はまだマシだ。
死んだんだから。
この世界にとり残された人間は、行き場の無い心を抱えて生きなければならない。
あの男の妻や子供は結局は私と同じように壊れてしまったのかも知れない。
あの青年の、母親や妹はあの日から時計が止まってしまったのかも知れない。
目に映る過ぎゆく日々は一分一秒が人と違う時間軸に変わり、
時々速く、時々遅く、
実際は止まっていた。
私は罪のない青年をこの世に居られなくなるほど傷つけ、心も体も殺してしまった。
そしてその妹、その母親の人生の楽しみ哉幸せを奪ってしまった。
完全に私はダークサイドに堕ちてしまったのだ。
……罪を償わなければ……
それから私は必死に働き、あの親子にお金を送るようになった。
こんな事件ばかり起こした私は仕事につけない。
だからバイトを掛け持ちし、とにかく働いた。
あの青年の大学の費用が全て出せるほどの金額を送り続けた。
毎月、青年が眠る墓地に行き安らかな眠りを祈った。
それでも罪の意識は消えない。
きっと、永遠に消えることはない。
*
ある日、青年の母親が会いに来た。
もう十分してくれたと私の手を握り、自分の人生を歩んで下さいと、言ってくれた。
ああ、こんなに優しい人の息子の命を奪ってしまったんだと、息が止まるほどの後悔が押し寄せた。
ハサミで刺した男には一切感じなかった罪悪感と深い後悔。
……自分の人生を歩んでくださいと、
青年の母親が『死ぬことを許してくれた』と、感じた。
これで楽になれる。
次に生まれ変わるなら誰かの役に立つ人間になりたい。
真っ直ぐに人を愛し、愛される人間になりたい。
損得なく人生を捧げることができる人間になりたい。
*
マリアはあの青年が飛び降りたビルの屋上に立った。
雨が上がり、雨雲の向こうに、美しい夕日が見えた。
ああ、美しい。
夕日が美しいと思ったのは初めてだった。
あの日以来初めて美しいと思えるものに出会えた。
黄色、オレンジ色 コッパー、赤、ピンク、全ての色が鮮やかに見える。
どの色も同じように美しい。
ああ、もしかして、この世界は美しかったのかも知れない。
この美しい時間、美しい夕日と一緒に沈みたい。
この世の全ての人達、ごめんなさい。
生まれてきてごめんなさい。
次の人生を考えてごめんなさい。
あの夕日に溶けて消えたい。
さよなら。
目を瞑りビルの屋上から飛び降りた。
*
その瞬間、空間が歪みマリアは異世界に落ちていった。
これが全ての始まりだった。




