アンダー ザ ダーク 後悔
このお話を読んでくださる皆様へ。
いつもありがとうございます。
この話を含めた、51話から53話まで、暴行、自殺などの表現があるくらいお話となっております。
苦手な方は54話からお読みいただいても繋がるよう書いてございます。
ご迷惑をおかけいたしますが、どうぞご理解の程、お願い申し上げます。
ありがとうございました。
ねここ
その後、その男は死んだ。
そして私は警察に保護された。
未成年、正当防衛、刑務所に入ることはなかったが、こんなもんなんだと、思った。
人生って、こんなもんなんだと。
その男は商社に勤める妻子持ちのエリートだった。
少女に殺された三十代の狂った愛情。
少女は男を誘ったのか?
母と娘と三角関係。
マスコミが面白おかしく騒ぎ立て、インターネットですぐに被害者も加害者も特定された。
どちらが加害者で、
どちらが被害者なのか、
その境界線はいまだに判らない。
加害者であり被害者である私はどこにいても特定される。
好奇な目で見られ、まともに接してくれる人はもうこの世界には居ない。
人生詰んだという言葉がぴったりな現状。未来はもう、見えない。
母とはあの日以来会っていない。生きているのかさえわからない。
それから全てがどうでも良くなった。
どうせ詰んだ人生なんだから。
十八歳で施設を出て母と同じように男を取っ替え引っ替えし、遊んで暮らした。
男なんてみんな同じ。性格? 顔? 楽しければ、お金さえあればどうでもよかった。
私は母と似たような人生を歩みながらも、母と違い、付き合う男達に対し一切の感情が無かった。
私にとって男は、生きる為の道具で手段だった。
道具には心を渡さない。心だけは唯一私だけのもの。
だから、何人もの男と同時に付き合えるほど冷静で、割り切れるほどどうでもいい存在だった。
人生こんなもの。
毎晩飲み歩き、ワインを一気飲みし、朝まで遊ぶ生活をしていた時、一人の青年に出会った。
その青年は生真面目な性格で、友達に連れられクラブに来ていた。
あまりに生真面目だったのでついおかしくて、少し優しく接してあげた。
たったそれだけでその青年は私を好きになった。
友人達は面白がり、彼を完全骨抜きにできるか、そんなバカみたいな賭けを始めた。
その純朴な青年はすぐに私の虜になった。
私はその難しく無い賭けに勝った。
罪悪感など何一つなかった。なぜなら私は誰にも心を許さないからだ。
しかし、その青年は自分が賭けの対象になっていて、
私が遊びで付き合っていたと知った夜、
ビルから飛び降り死んでしまった。
後味の悪い出来事だった。
その日以来罪悪感のような重い気持ちに悩まされるようになった。
何をしても心が晴れなくなり、マンションに篭りがちになった。
それから、ひと月ほど経った頃、一人の女性が現れた。
その女性は青年の妹。兄の死の真相を知った妹は私を探し当て会いに来た。
「父を早くに亡くし母一人、兄妹を懸命に育て大学まで行かせ、これから親孝行が出来ると言った兄はあなたのせいで死にました。死ぬまで恨みます」
その言葉を聞き、気がついた。
人生こんなものにしたのは自分だ。私は母と同じだと。
しかし友人達は死ぬ方が悪いと言って笑った。
死を選んだのは心が弱いからだといったが、
死にたくなるほどの経験をしていない人間に何がわかるのか。
私は初めて後悔という言葉の意味を知った。
妹はマスコミに私のことをリークしていた。その日以来私の存在は再び世間を騒がした。
そして、十三歳の頃の事件が掘り返され部屋から出られなくなった。
*
夕日に照らされた部屋の中、包丁を片手に手首に当てて引く。
行き場のない心を形にすると手首の傷になるのだと知った。
消えたい、
死にたい、
今の気持ちを消したい。
やり場のないこの思いは一本の線に変わる。
何本線を引けば楽になれる?
楽になれないとわかっているのにやめられない。
依存。
この盛り上がった一本の線が増えるたびに生きていると実感が出来る。
線の数だけ自分を律したような、不思議な安心感があった。
生きていてもいいと、天に許されたような気がしていた。




