あの日のできこと
深夜、エリゼが部屋に戻るとマリアがマントを羽織ってベットで眠っていた。
その姿を見つめているとこのままマリアを見つめていたい気持ちと、起こしてその瞳に自分を映して欲しいという欲求が浮かぶ。
そんな思いも知らずマリアは幸せそうに眠っている。
エリゼはベットに横になりマリアを抱きしめると、マリアは目を覚ました。
「あ、エリゼ様、ごめんなさい、また眠ってしまって」
「フフ、マリア、そのマント、懐かしいな」
マリアは起き上がり、あの日を思い出しながらエリゼに言った。
「思い出すと恥ずかしいです。あの時、洗濯の手伝いをして、元いた世界の感覚で、そのままお城に戻ってしまって、手足を曝け出すことは全然平気でしたけど、この世界であんな格好をしてる女性はいませんね。皆さん驚いてました」
マリアはクスクスと笑った。
「俺はあの格好で堂々としてるマリアに圧倒された。だが、あの姿を男達には見せたくなくてな。だからマントを渡したんだ」
「え? そうだったんですか? うふふ、嬉しいです。過去の事をこうして答え合わせできることが嬉しいです。でも、その後お礼の品を買うお金がなくて悲惨でした……」
「あ、マリア」
エリゼは徐に胸のボケットに手を入れマリアが渡した同じモチーフのネックレスを取り出した。
「エリゼ様? これは」
「お金持ちの俺からのプレゼントだ」
エリゼはそう言ってニヤリと笑った。
マリアはその言葉を聞き怒り出す。マントのお礼のネックレスを買うためにバイトし全財産を注ぎ込んだ。その後、旅をしながらバイトをし、なんとかここまで来た。
「もー!! エリゼ様って最低! 大変でしたよ! バイト……じゃなくて、し、仕事を三つも掛け持ちして、団長からもらった謝礼金も注ぎ込んで全財産使ったんですよ!!」
「マリア、そんなお前だから俺はお前を愛しているんだ」
エリゼは真剣な眼差しをマリアに向ける。
情熱をはらんだその瞳にマリアは負けた。
「……ずるいです。そんな眼差しで見つめられると、許さないわけにいかないです。それに、これお揃いですね……とても嬉しい」
「フフフ、機嫌を直してくれてよかった」
二人は顔を見合わせて笑った。
*
数日間マリアはエリゼの部屋から出ることはなかった。
マリアが慣れるまでは余計な負担をかけたくないというエリゼの配慮だった。
数日後、マリアがこの生活に慣れ始めたのを見て、エリゼはマリアの手を握り部屋から出た。
城の中で働く使用人達はエリゼと歩くマリアを見て笑顔を浮かべる。
今まで見てきた姫や令嬢とは全く違う、表現のしようのない女性で、髪は短く普通ならありえない髪の長さだが、なぜか強烈な魅力がある不思議な女性だ。
その噂はあっという間に広がり、城に勤務する人達は陰からエリゼとマリアを見ていた。
「エリゼ様、なんだか視線を感じます」
「そうだろうな、俺が突然見知らぬ女性を連れ込んで手を繋ぎ歩いている姿は驚くだろう」
「ご乱心ですね」
「ご乱心か、あながち間違っていないな。俺が半年の間に世界統一、自分でも思っていなかったからな」
「エリゼ様ってそんなタイプだったのかな? って不思議に思っていました」
「俺はマリアに捨てられたから、ご乱心だよ」
「え? 捨ててないです。全然捨ててない。そもそも私のものじゃ無かったじゃないですか……」
「フフフ。そうだな」
「なんですかそれ? よくわからないけれど、エリゼ様って知れば知るほど不思議な方ですね」
「おお!! マリア、皇帝に向かって不思議な人って、お前は相変わらずだなー」
「!?」
突然名前を呼ばれ振り返るとクロードが笑顔を浮かべ両手を広げた。
「あ!! クロード様!!」




